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十勝の自然  
  十勝の自然 / 鳥 類 / 植 物 / チョウ / 小動物 

 十勝には、高山帯から海岸までさまざまな自然環境があります。展示室のジオラマ(左写真)では、開拓期以前の自然のようすを紹介しています。
 上段の写真は高山帯〜山地の針広混交林、下段は山麓の広葉樹林〜平野部のカシワ林と湿性林、海岸の湿原・湖沼を再現しています。
■高山帯
 
十勝は日高山脈と大雪山という大きな山地に囲まれています。これらの高山帯には氷期に成立した特徴的な地形があり、エゾナキウサギやウスバキチョウなど、その時期に大陸から北海道へ移動したと考えられる生物の生息地となっています。
■針広混交林
 
日高・大雪山系や阿寒・白糠丘陵の標高700〜300mの地帯には、トドマツなどの針葉樹と、ウダイカンバなどの広葉樹が混在する森林があります。この針広混交林は北海道の代表的な森林で、ヒグマやクマゲラの生息地となっています。エゾリスはこの森林が本来の生息地であり、平地林では現在見られるほど多くはなかったと考えられます。
■山麓の広葉樹林
 
この森林はカツラやミズナラの広葉樹が中心で、多様な林床植生をもっています。丘陵広葉樹林とも呼ばれ、針広混交林と平地林の中間的な位置に成立し、双方の生物が行き交います。かつてこの森林に生息していたエゾオオカミは、害獣駆除や二度の大雪によるエゾシカの減少から1896(明治29)年ころには絶滅したと考えられています。
■平地林
 
平野の火山灰台地に成立した乾性林(カシワ林)と、湿地に成立したヤチダモなどによる湿性林をまとめて平地林と呼びます。
 キタキツネやエゾユキウサギは山地から海岸近くまで広く生息しています。エゾシマリスはカシワやミズナラのドングリを主要なエサとするため、かつては多く生息していましたが、現在では見かけることは少なくなりました。
 ここにはシマフクロウも生息していました。しかし、魚類の豊富な河川と、営巣できる大木のある森林が減ったために、現在の平地林では見られなくなりました。
■海岸の湖沼地帯
 
海岸には、湧洞沼、長節湖などの海跡湖や湿原が残っています。ここはタンチョウが営巣し、アオサギ、カモ類や草原性鳥類など、多数の渡り鳥の繁殖・中継地です。
 海岸線に沿って帯状に分布する原生花園では、アヤメ、ハマナスなど湿地性・海浜性植物と、コケモモなどの高山植物が同時に生育しています。大津海岸トイトッキ浜と長節湖畔野生植物群落は1963(昭和38)年、北海道の天然記念物に指定されています。
 
コラム 「帯広の森」のエゾリス

 「帯広の森」は平地林の再生を目標とした、およそ400haの都市公園です。帯広市では植樹した森の自然の回復度合いを知るために、エゾリスを10年以上にわたって市民とともに調査しています。
 調査は毎年4回行い、最少1頭、最大27頭のエゾリスが観察されました。生息数は季節ごとに一定の幅で増減を繰り返す傾向がありました。
 調査で1q歩くごとに、1〜2頭のリスに出会える程度の生息密度であることもわかりました。そして、針葉樹の植樹林と自然林が隣接している環境がもっとも生息に適していると考えられました。
 
 鳥 類
鳥類の展示

アオジ

   エゾフクロウ 
 日本で見られる鳥類633種のうち、北海道では471種、十勝では330種以上が確認されています。高山帯から沿岸まで、さまざまな環境を含む十勝は、多様な鳥類の生息に適しているようです。
 ここでは、十勝の鳥類を、観察しやすい環境ごとに紹介します。
■耕作地周辺の鳥

 チゴハヤブサやトビなどの猛禽類は、畑のまわりの林で営巣します。カラマツの防風林では、林の外縁を好むアオジがさえずり、河川や排水路ではアオサギが魚類を採餌します。カラスは農畜産物、廃棄物などをエサとします。

庭や公園で見られる鳥
 シジュウカラ、ゴジュウカラ、シメは木が多い緑地や公園でよく見かけます。カワラヒワは街路樹にも営巣し、芝生のような場所や車道の路肩で植物の種を食べています。冬になるとレンジャク類やツグミ類がユーラシア大陸から渡ってきて、街路樹の果実に群れます。アカゲラは木の幹に巣穴を掘りますが、その古巣はほかの鳥類やモモンガなどが利用します。


森林の鳥
 この鳥たちは、耕作地や公園の鳥と違い、人間が改変した環境では生息が難しい種類です。
 エゾフクロウは大きな樹洞に巣を作るので、大木が必要です。また、エサのノネズミ類を確保するためには、森が大きいことも条件になります。
 エゾライチョウは草本類の種子、ヤマゲラは巣やエサを採るための枯れ木、アオバトは木の果実などが、それぞれ十分に確保できる大きさの森林が必要です。
  
コラム  コアカゲラ

 十勝には、コアカゲラという全国的に希少な小型キツツキが生息します(右写真)。とくに帯広市周辺は、ほかの地域よりも多く観察されます。
 コアカゲラは湿性林や河畔林によく営巣します。これらの林には、朽ちてやわらかくなった木が多く、コアカゲラが営巣しやすいといわれています。湿性林などが点在する、十勝の自然を代表する鳥類といえるでしょう。
 
 植 物(乾性林と湿性林) 
植物コーナーのパネル

カシワ
ヤチダモ 
 十勝には高山から海岸まで、さまざまな植生が見られますが、そのうち平地林の植物を紹介します。

乾性林(カシワ林)
 平地林には、乾燥した地面にカシワが生育する乾性林と、湿潤な地面にハンノキ、ヤチダモ、ハルニレが生育する湿性林があります。これらは普通、段丘をはさんで隣り合わせになっていますが、現在では土地利用が進み、乾性林から湿性林まで連続した平地林は少なくなりました。
 乾性林のカシワ以外の大木は、少数のミズナラ、ハリギリ、エゾヤマハギなどです。林床は高さ50pほどのミヤコザサで被われ、スズラン、サクラスミレなどが開花します。
 代表的なカシワ林として、帯広市大正町の若齢林(北海道指定天然記念物)や、帯広農業高校構内の成熟した林(同環境緑地保護地区)、また幕別町では新田牧場の林(同自然景観保護地区)が知られています。


湿性林
 湿性林は、河岸段丘の下部などの湿地に成立する林です。おもな樹種のうち、ハンノキはもっとも湿潤地に生育し、ハルニレはやや乾燥地に多く、ヤチダモはその中間的な環境に生育します。
 林床にはオオバナノエンレイソウの大きな群落を伴うことが多く、これは十勝の森林景観の特徴となっています。
 このほか、ザゼンソウ、エゾエンゴサク、オオウバユリ、エゾトリカブトなどが季節ごとに開花し、林床を華やかに彩ります。
 
コラム  十勝のカシワ林
 日本のカシワ林は普通は海岸で見られ、十勝のような内陸の林は珍しいといわれています。千歳など数カ所でも見られますが、十勝のカシワ林はとくに規模が大きく、平野部の大半を占めています。
 また、高木層がほぼカシワだけで占められた「純林」である点も特徴的です。普通の林は植生が変化し別樹種に置き換わりますが、十勝のカシワ林は、樹種が変わらないまま維持されてきたことが知られています。これには、十勝の気候や火山灰土壌と関連があると考えられています。学術的にも十勝の原風景を後世に伝える意味でも、大変貴重な森林です。
 
 チョウ
キアゲハ

エゾヒメシロチョウ 

クジャクチョウ

コキマダラセセリ
 チョウとガはチョウ目という分類に含まれます。このなかで、アゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクモドキ上科(国内未分布)をチョウと呼びます。日本に定着・繁殖するものはおよそ220種とされ、そのうち北海道で124種、十勝では104種が分布します。。

十勝のチョウ
 
 チョウは種類ごとに、幼虫の餌植物「食草」があります(一部昆虫食)。種類ごとの食草や観察のしやすさは展示で紹介しています。
アゲハチョウ科 国内21種 道内9種 十勝9種
 大型で南方系のアゲハチョウ亜科は黒や黄色の複雑な模様、小型で北方系のウスバアゲハ亜科は白色系の薄い色をしています。
シロチョウ科 国内26種 道内11種 十勝9種
 白または黄色の中型のチョウです。エゾシロチョウは、エゾノコリンゴを食草とするため、この木が多い十勝地方では、6月頃ひんぱんに見かけます。オオモンシロチョウは大陸から飛来した外来種で、十勝では1998年から確認されています。
シジミチョウ科 国内70種 道内37種 十勝32種
 小型種で翅の模様はさまざまです。ミドリシジミ類はカシワ、ドロノキなど十勝に多く分布する植物を食べる種類が多く、十勝を代表するチョウといえるでしょう。
タテハチョウ科 国内86種 道内52種 十勝43種
 オレンジ色や黒などのはっきりした色で、複雑な模様をしたグループと、ベージュ色に目玉模様があり日陰を好むグループの大きく二つに分けられます。成虫で越冬するものが多く、3月末から飛び始めます。
セセリチョウ科 国内37種 道内15種 十勝11種
 小型で胴が太く直線的に飛ぶことが多いチョウです。カラフトタカネキマダラセセリは北海道東部がおもな生息地です。成虫は花だけでなく、動物のふんにも群がります。
コラム 森の掃除屋さん

 私たちはトイレで用を足します。犬や猫などのペットのふんは飼い主が片付けます。では、野生動物のふんは誰が掃除をするのでしょうか?
 ここで活躍するのが「ふん虫」と呼ばれるコガネムシの仲間です。『ファーブル昆虫記』に登場するタマオシコガネもこの仲間。十勝にもセンチコガネやマグソコガネ、エンマコガネが生息しています。
 動物がふんをすると、ふん虫が嗅ぎつけて集まってきます。そして、これを食べたり、卵を生んだり、トンネルを掘って地中に運び込み、きれいに掃除をしてくれます。このように、ふん虫は「掃除屋さん」として地上のふんを分解し、養分として土へかえすという大切な役割を担っています。
 彼らがいなかったら、世界はふんだらけになってしまうかもしれません。目立たないところで「掃除屋さん」として活躍している虫たちに注目です。
 
センチコガネ
 小動物
ニホンザリガニ

ニホンアマガエル

エゾサンショウウオと卵
 ニホンカナヘビ
人為的な環境変化に影響を受けやすい、地表や水辺の生物のうち、は虫類、両生類、ニホンザリガニについて紹介します。

シマヘビ
 
 日本列島固有種で、十勝では低標高(400m以下)に生息し、市街地周辺でも観察されます。体色は個体差が多く、縞のあるものから黒色(通称カラスヘビ)までさまざまです。展示ケースの抜け殻は飼育個体のもの、はく製は若い小型のヘビです。
 十勝にはこのほかアオダイショウ、ジムグリ、ニホンマムシが生息しています。

ニホンザリガニ
 ニホンザリガニは日本列島固有種で北海道と東北地方の一部に生息しています。わき水のある広葉樹林に生息し、絶滅危惧U類に登録されています。最近は外来種ウチダザリガニの分布拡大によって生息地が減少しています。
 雄は5対の脚のほか、交接肢という脚のようなものをもっているので、雌と見分けられます。

両生類
 国内では62種、移入種・外来種をのぞき北海道では4種、十勝では3種が生息しています。
 もっともよく見かけるのは、土色をしたエゾアカガエルです。緑色のニホンアマガエルも広く分布しますが、生息環境は限られています。
 エゾサンショウウオは、わき水の豊富な広葉樹林に生息し、十勝の両生類の中では自然環境がもっとも良好なところに生息します。
 ジオラマでは、エゾサンショウウオの産卵環境を再現しました。

■は虫類
 日本国内では89種が生息し、北海道には8種(移入種をのぞく)、そのうち十勝地方にはヘビ類4種を含む6種が生息します。ニホントカゲは鹿追町菅野温泉で見ることができます。ニホンカナヘビは十勝全域に生息すると考えられます。
コラム 緑ヶ丘公園のカエルは何頭か?

 帯広百年記念館では、博物館で学ぶ連続講座「カエルはみんなの先生だ」を2006年から開催。この講座で、帯広市緑ヶ丘公園(約40ha)に生息するカエルの頭数を推計しました。
 参加者とともに、卵やカエルのカウントや捕獲調査を続けた結果、成体のカエルのオスとメスの比率が2:1であることがわかりました。平成24年の公園全体の産卵数が702個だったため、公園全体のエゾアカガエル成体は2,174頭と推計できました。