【良い占い師】とは、必ずしも良く占いの当る占い師のことを指すとは限らない。
クライアント編の第五章でも述べたように、クライアントにとっての悪い結果を、そのまま当たるに任せてしまう占い師は、どんなに的中率が高くとも【悪い占い師】と言う事になってしまうだろう。
【良い占い師】とは、この場合、クライアントが安心して相談できる占い師のことを指す。
クライアントの話に真剣に耳を傾け、親身になって問題の解決法を一緒に探ってくれる占い師。それが理想的である。
まず占い師は『クライアントの未来を握っている』等と奢ってはならないし、問題を解決する手法として、 自分の方法論を一方的に押しつけてもいけない。
クライアントの人生はあくまでもクライアントのものであるし、その問題を直接解決するのは、他でも無いクライアント自身なのである。
クライアントと対話する事で、クライアント自身の方法論に試行錯誤の改良を加え、時には第三者としてのアドバイスも交え、クライアント自身が、自らの問題を乗り越える武器を手に入れられるよう促すのが【良い占い師】なのだ。
これはクライアントも占い師自身も認識しておくべき事だが、クライアントの問題を占い師が代わりに背負うことは決して出来ない。
【悪い占い師】とは、クライアントの意志を無視して、一方的に占いを進めてしまう占い師である。
その占い師の腕がどんなに良くとも、どんなに自信が有ったとしても、それではクライアントの不安は拭われない。
占いの結果を自分だけの言葉で伝え、クライアントが分かっていないのに占いを終了させてしまうのも【悪い占い師】と言える。
我々占い師は、決して【自分の為】【自分の自己主張の為】に、クライアントへの占いをしてはならない。
クライアント第一。
それが占い師の基本的なスタンスで有るべきなのだ。
占い屋には、相談者として様々な人が足を運ぶ。
私が扱ったケースでも、画家、小説家、漫画家、個人事業主、証券会社の支店長、ライブハウスの経営者など、全く様々な業種の人々が来るのだ。
それら多様な相談者を鑑定する占い師は、実に幅広い知識が必要となる。
芸術家を鑑定するなら芸術を解する心。
株式などを扱う人を鑑定するなら、経済学の基礎に最近の経済や株価の動向。
小さくともお店や会社を経営する人を鑑定するなら経営学。
勿論そればかりではない。
恋愛の相談を受けるのなら情緒の機微に通じ、金銭に関する相談を受けるのなら節制術を知る。健康運の相談なら、基本的な生理学などを知っておいた方が良いし、何より人間の営み全般の相談を受けるのだから、心理学などは重要になる。
占い師は日常から様々な情報を収集しておいた方が良いのだ。
新聞を読み、書籍を読み。時にはテレビのドキュメンタリーや、演劇などを鑑賞する。
様々な知識・経験が、クライアントの相談を受ける段になって役立っていくのだ。
また、偏った見識を持つのも占い師としては問題である。
一方的な判断を下してしまい、問題解決の幅を狭くしてしまう。
望ましくは、一つの知識を複数の目線で分析することである。
占い師の立場は常にニュートラル。
それは何に置いても大切な事だと覚えておきたい。
占い師は、どのような相談であっても、受け付ける事が出来るような備えをすべきである。
とは言え、世の中の情報は無尽蔵であり、全てをカバー出来る訳では無い。
日々、極力多くの情報を集め、経験を重ね、出来るだけ受け入れの幅を広げるべきなのだが、それでも自分の力量で太刀打ち出来ない内容と言うのも存在する。
そう言った時には、素直に身を退く潔さも必要だ。
【餅は餅屋】と言う。
【生兵法は怪我の元】とも言う。
中途半端な力量で、クライアントの重大事に当たった時、それは役に立たない所か、占い師・クライアント共に大きな被害を生んでしまうかも知れない。
そんな時には、適切な専門家を勧める事を心掛けるべきである。
占い師として、最大限に注意を払うべきは、クライアントのプライバシーである。
これは占い師各々にとって、その倫理観や責任が問われる問題で有る。
クライアントも自らの悩みを相談するのであれば、プライバシーの保護を保証してくれる占い師に相談したいと言うのが当然の要求だろう。
これについては、クライアントには判断のし難い問題でもある。
考えられる方法としては、その占い屋や占い師の評判を前もって調べる事と、占い師に対面した時の雰囲気で判断する他無い。
何はともあれ、前もって占い師に『プライバシーの保護を最大限に尊重してください』と確約を取るのは安全な策であろう。
また占い師は、クライアントが安心して相談出来るように、守秘義務があることを認識し、前もってクライアントに『プライバシーは最大限に守られますので安心してください』と言うくらいの心配りが大切である。
このような前提があり、占い師が信頼されてはじめてクライアントは自分の本当の悩みを相談できる。
そう言った信用の無い占い師は、もはや実力以前の問題である。
私の知っている有料の範囲で、最安値が500円、最高値が50万円である。
例えば、易学などで有名な占い師に占ってもらうと、50万円位はする事がある。
こう言った占い師に相談するのは、主に、政治家や会社の経営者、その他物好きな金持ち達だ。
形の無いモノに、それだけの大枚を支払うと言うのは、庶民感覚としてなかなか理解し難い所では有るが、しかし、国の政治や会社の経営が、その占いで上手く行くと言うのであれば、50万は安い値段と考える事も出来るのだろう。
逆に修業中の占い師が、実占修業の為に路上に占い屋を出す時、安ければ500円位の鑑定料になる。
各言う私も、実占修業に辻占いを行い、500円の鑑定料を取っていた時代があった。
さて、どの位の鑑定料が妥当なのだろうか?
まず、占い師が自らの鑑定料を定める時には、やはり自分の力量をしっかりと把握しておかねばならない。
その上で、需要供給の割合、相談内容の重さ等を考慮し、鑑定料を決める。
そして確りと明示する事が大切である。
即ち、一回の鑑定に幾らか。又は時間制なら時間割幾らか。
商売として成り立っている占い屋の中では、占い師とクライアントの関係は、サービスの提供者と購入者である。
そこには商法が働き、商契約が結ばれることを忘れては行けない。
値段の分かり易い明示は、占い師の義務である。
さて、勿論クライアントも前もって値段の把握はしておいた方が良い。
占ってもらいたい事柄とその値段とを比べ合わせ、それに見合うかどうかを判断しなければならない。
クライアントが一般的な相談をするのなら、一回の鑑定に1000円から5000円位が相場だと言える。
修業中の辻占いなどであれば、1000円を切る事もある。
また、テレビに出演した等、占い師業界でそこそこ売れていたり、有名であったりすると、希にだが一万円を超えることもある。
ともあれ、値段も質もピンキリだ。
クライアントは、割に合わない鑑定料を支払わないように、占い師は割に合わない鑑定料を要求しないように注意しよう。
クライアント編第二章において、占い師は『未来を知る能力を持つもの』では無く、『未来を予測する技術を持つもの』と述べた。
占い師がクライアントに告げる事は【絶対的な未来】では無く、現時点で最も可能性のある【事態の展開】なのである。
占い師は、クライアントの要望に応え、その人物の未来を予測する。
これが第一の仕事である。
しかし、占い師に望まれる仕事はそればかりではない。
即ち第二の仕事として、障害となる未来を予測した場合、その障害の解決法をも導き出さなければいけないのだ。
第一の仕事と第二の仕事は、常にセットである。
さて、占い師にはこの第一と第二の仕事以外に、更なる仕事が要求される場合がある。
それはクライアントの話を『聞くこと』。
問題を抱えて訪れるクライアントの中には、問題を抱え込むあまりに混乱し、自分の心を整理できず、精神的に苦しんでいる人物もいる。
この様なケースでは、占いを行い、未来を予測し、アドバイスなどを告げたとしても問題の解決に至らないケースがある。
何故なら、問題を実際に解決するクライアント自身が、問題に向かい合う気力を得ていないからだ。
こんな場合に占い師は、クライアントが心の中で抱えている事を、一度全て言葉にして話してもらうよう促す姿勢が必要になる。
そうすることで、先ずクライアント自身の重みが幾らか軽くなり、混乱していたものが言葉にしたことで整理できる。
また、クライアント自身が自分で気付かなかったことに、改めて気付くことが出来る。
占い師はクライアントの話を聞き、そこに隠された問題のキーワードを探らなければならない。
問題に対面した時にまず必要なことは、占い師もクライアントも問題の整理である。
整理して来たクライアントは兎も角、整理の侭ならない状態で相談に来たクライアントが居る場合、その問題の整理(その手伝い)も占い師の重要な仕事と言えよう。
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