実践コラム

実践コラム 第一回

2008年5月1日。
トキワが、専業占い師に戻って一ヶ月が経ちますね。
営業活動等で、ここの所連日の徹夜でしたが、やっと一段落が着きました。

サイトの方でも、何とか大アルカナ22枚の基礎解説が終わり、次は何に手を付けようかと迷っている所です。
いざ解説を進めるとなると、念の為に、調べの作業が伴う為、かなり気合を入れなければなりません。
今しばらく、気合を充填するとして・・・

少しボリュームがあり、且つ、ある程度身になるモノ。
そして、解説系の休刊話題になるモノは無いかと思い、【実践】に焦点を当てたコラムを始めようと考え至りました。

【実践】と言っても、タロットに拘る必要はありません。
【占い師】としての、実践的部分と言う意味で、色々な視野から、適宜テーマを選ぶ事にしようかと思います。


今回は、【理論】と【実践】について書き繋ぎましょう。

トキワに限らず、世界中に存在する【占い師】は、使用する【占術】の体系に帰属し、その理論と技術を学びます。
書物から学ぶか、師匠から学ぶかは個人の差として、【理論】と【技術】そのモノを学ぶ上では、具体的なクライアントが存在しないのが当然。
使用する体系によって、多少なり差は存在しますが、【理論】【技術】には、それなりの整合性があり、考え方についても、ある種の形式(フォーム)がある訳です。

まずは、それを徹底的に学び、自家薬籠中の物とします。

これが達成されると、初めて他者を相手に、占いを行う訳ですね。

勿論の事、実践を行っていても、同時進行で鍛錬は続きます。

さて問題となるのは・・・

帰属する占術体系を学び、習得したとして、本当に生身の人間の相談すべてに対応して行く事が出来るのか? と言う点です。

タロットで言えば、各カードに配置された意味を全て覚えた所で、クライアントの全ての悩みに答えを出す事が出来るかと言う点ですね。


結論から言います。現実的に考えて、それは【無理】です。

と言うよりは、【無駄・無効に終わる】と言った方が正しいでしょうか。

そもそも、各占術体系は、その体系内でのみ整合性が保障されるモノであり、その枠を外れれば、自然と不整合な部分が生じるモノなのです。

原理主義的な思想で主張すれば、【全ての問に、答えが出せる】と言いたい所でしょうが、それは【占い師側】の主張であり、結局は、【クライアント】の満足度に反映される訳ではありません。

各占術体系を学び、その理論と技術をマスターすると言うのは、占い師にとっては、基礎を学んだに過ぎず、占い師としては、スタート地点に立ったに過ぎません。

実践の中で、様々なケースを体感し、それに応じた柔軟な調整が、必ずと言って良い程必要になって来ます。

逆に、小さな世界観の中で凝り固まった【理論・技術】だけを振りかざすと、大きな間違いを犯しかねません。

ユングの流れを汲む【臨床心理学】の世界でも、上記のような考え方がされています。
心理的な問題とは、人によって千差万別であり、理論化された知識や技術だけで応じる事が出来るモノでは無い。
場合によっては、これまで学んだ全ての知識・技術が、役に立たない事すら有る。

占い師の世界でも、そんなモノです。
と言うより、殆ど全てのケースが、未知の案件であり、単純に過去に学んだ知識や技術では対応し切れないのが現実です。

では、我々が学んだ事は、一体何の役に立つのか。

これは、あくまでも【ホームポジション】として捉えるのが良いでしょう。

この【ホーム】には、これから遭遇する様々な問題の【答え】が用意されている訳ではありませんが、そう言った新しい案件に対応する為に有用な、ヒントや素材が用意されています。

体系の【理論】や【技術】を持つか持たないかは、実践の上では、やはり大きな差となって現れてきます。
直接的な解決にならないにしろ、【ホームポジション】に戻る事が出来れば、何らかの対応策が見つかる可能性が高い。
しかし、この【ホームポジション】が無い場合、未知の案件に望むのは、難しく、時に危険な事すらある。

【理論】と【実践】は、【技術者】の世界において、必ず【両輪】として存在すべきモノです。どちらかに偏れば、導き出す答えも偏るのが必然。

修行者の段階について、【守・破・離】と言う言葉があります。

【守】とは、師の教えを一文字も違える事無く守るべき段階。これが【理論・技術】の修練に相当します。
【破】とは、師の教えを破る段階。師に守られた【理論・技術の壁】を破り、外界に触れ、より拡大させる為の過程。これは、【実践】の時期に相当します。
【離】とは、師の下を離れ、自分で立ち歩く時期を意味します。
【理論・技術】と【実践】の両輪を得て、初めて自分の道を進む段階です。


畏れ多くも、他者の人生を覗き見、あまつさえ指図のような事までする【占い師】。
この大それた仕事をするからには、【技術者】としての自覚を持ち、【理論】と【実践】を積み重ねる必要があると考えています。

心ならずも・・・生半可な姿勢で【占い師】と名乗っている人も少なくはありません。

【実践家】として進むならば、やはり心に留め置くべき事では無いかと思っています。


実践コラム 第二回
2008年9月1日

 専業の占い師に戻り・・・五ヶ月が経過しました。
 時間の流れとは、実に早いモノです。

 ここ五ヶ月の間、他に仕事として意識を傾けるモノも無く、ただひたすらに、占術に打ち込んでいる訳ですが、そんな中、時間さえ余れば、【タロット】或いは【占い】と言うモノについて、一人黙々と考え込んだりしています。

 【占い】を始めた当初は、やはり【占術】そのモノに興味が集中し、知識的・技術的な事ばかりを考えていました。
 ある程度、自分のスタイルが定まり、占い師として出来上がって来た頃になって、始めて【占いとは?】【占い師とは?】と言う問いに立ち止まったモノです。

 その問いは、占い師として活動を初め、15年を過ぎた今でも、根強く残っています。

 今回は、実践の【時】にも影響を与えるであろう、そんな部分について、書いて行きたいと思います。

 この【問い】の要点は、つまり【占いは、人間の人生に対して、どのようなポジションを担っているか?】或いは、【占いが、人の人生に対して、どのような影響を与えて行く事が出来るか?】と言う部分です。

 【占い】の事を、【未来を当てるモノ】と位置付けた時、大きなジレンマにぶつかります。
 【占いの結果が当たったとして、だから何だと言うのか?】

 【未来の事を知って、予め心の準備をする】と言う回答をした占い師さんが居ました。

 なるほど。
 それは一理在るでしょう。

 これから起こる事を知っていれば、それに対して、動揺無く受け入れる事が出来るかも知れません。それは、人生を歩む上で、とても大切な事だと言えるかも知れません。

 しかし、私の実践経験で言えば、【未来を知って、心の準備をする事が出来る人は、それ程多く無い】と言うのが結論です。
 また、占い師が語る【未来の事】を知って、明らかに、その影響から行動してしまっている人物も見受けます。

 結局、その答え通りだとすれば、占い師とは、然程に役にも立たない存在です。

 もう少し、役立つ事は出来ないのか。

 恐らく、この問題にぶつかった時、始めて【運命学】に真剣に取り組み始めたのだと思います。

 トキワの【運命論】は、このサイトや、或いはブログ等で度々書いている為、大きく省略させて頂きますが、簡潔に言うと・・・

 【運命とは、未来の出来事を決めているモノでは無く、その時と場に、影響を与える存在である。その影響を受ける個人・集団の在り方によって、未来の出来事は、幾分にも変化する】

 その【運命論】を前提として、今では【未来の事(運命)を予測し、目的に応じて、対策を考える】と言うのが、トキワの占い師としてのスタイルとなっています。

 この時期から、受ける依頼に対して、【依頼者が、何を目的としているのか?】を重要視するようになりました。

 未来に【何が起こるのか?】と言うのは、占いである以上、とても重要ですが、それ以上に、【目的に向かって、どのように動いて行くのが適切なのか?】を考えるようになった訳です。

 未来を窺い、依頼者にとって不都合な出来事が予測された時、それを回避する為の方策を考えます。
それは、占術の理論に見られる【解決の鍵】を参考にする事もあれば、私の個人的な経験を参考にする場合もあります。
 いずれにせよ、これを実践する時、まず【的中率】が下がります。
 予測したモノは、不都合な出来事です。
 ですが、それが実現しないように、行動を促し、それが成功した場合、その【予測】は外れます。

 当初は、これで一息吐きました。
 【悪い予測であれば、外れて良い】と考えていたからです。
 そして、【その事について、責めは甘んじて受けるべき】と考えていたからです。
 今でも、その部分は変わっていませんが、重要な事を見落としている事に、後から気が付きました。

 ある時、依頼者が、事後報告しに来てくれました。
 【トキワさんの言うとおり、○○に注意して行動したら、巻き込まれそうになった問題から、逃げる事が出来ました。良く当たりましたね。】

 この際の好結果が、私の実力によるモノなのか、それとも依頼者の実力によるモノなのか、或いは偶然か。それは解りません。
 しかし、この時ハッと気が付いた事があります。

 【的中度】の低下は、未来の悪い予測を回避した結果だけでは無く、アドバイスが適切で無かった事の反映も含まれているのでは無いか。
 つまり・・・
 アドバイスも含めて、有効に作用すれば、【的中度】の評価は、それ程に下がるはずは無いのでは無いか。

 その後、事態に併せたアドバイスを、より効果的に捻り出す方法を探し、鍛錬しました。

 この部分は、今でも、まだまだ未熟でしょうが、それなりに成果が出つつあると思っています。

 今となり。
 トキワが【占い師】として、【占い】に取り組む姿勢は、【当たる占い師】と言うよりも、【役に立つ占い師】を目指してのモノです。

 ここに至るのに、約15年。

 本当に、時間の流れとは、早いモノです。


 もう少し、筆を進めて見ましょう。

 今となり。
 トキワは、依頼者に要求するモノが出て来ました。

 本来であれば、依頼者の望む通りに鑑定すれば、【占い師】としての職務は完結し、それで良いのでしょう。
 多くの依頼者が、それを求めていると思います。

 しかし、最近になり、条件付きで、依頼をお断りする場面も出て来ています。
 初めからお断りする事は、殆どありません。
 大抵の場合は、何度かご相談を受けた後です。

 まず、複数の選択肢を目の前にして、何かを選ばなければならない場合。
 【どれを選べば良いのか?】と言う依頼の時です。
 依頼者の目的。目指す所が明確な場合は、それぞれの選択肢の吉凶等を占い、判断の材料として、鑑定結果をお返しします。
 しかし、目的、目指す所が明確では無い場合、お断りする場合があります。
 特に、占い師の鑑定する通りに、選択肢を決めそうな人の場合は、略確実にお断りします。

 勿論、理由はあります。
 【依頼者の人生について、占い師は責任を負う事が出来ない。】と言うのが最大の理由。
 人生とは、常に自分でしか責任を負う事は出来ません。
 そして、人生における【決断】も、その責任は本人が負います。
 依頼者は、その【決断】を、占い師に預けようとしてはいけません。
 占い師も、その【決断】を預かってはいけません。
 それは、【人生】と言う尊厳あるモノに対して、双方とも、余りにも無責任です。

 なので、その様な依頼を受けた場合は、【ご自身は、どのような目的を持ち、どのようにして行きたいですか? それを伺った上で、鑑定させて頂きます。】と伝え、その時の鑑定はお断りしています。
 本人の、明確な目的と、それに向けた意志があれば、占い師は、それに添った吉凶分析と、具体的な助言をする事が出来ます。そのように、僅かながらでも、ご協力する事が出来ます。
 しかし、明確な目的と、意志が無いのであれば、占い師の言は、意図せずとも【指示:命令】として影響を与えてしまう恐れがあるのです。
 後で、【あの時、占い師さんが、ああ言ったから、こうしたんだ。】と言われても、占い師には、もはや何も出来ません。責任を取る手段等【無い】のです。
 そして、占い師の言う通り行動してしまった人も、その責任を【占い師】に求める事は出来ません。
 そもそも、ご自身の人生です。自分でしか責任を負えませんし、それを他者のせいにする事は、【責任を逃げる】事になります。・・・と言っても、結果を受け取るのは、その人自身ですし、結局は【責任転嫁】も功を成しません。

 もう一つ、お断りするケースがあります。
 恋愛の鑑定の際に、相手の気持ちを何度も占う場合です。
 これをお断りする理由も、先程と同様。
 【相手の気持ちを占う】と言う事は、概ね、相手の出方を伺っていると言う事でしょう。
 そして、相手の出方に応じて、自分も行動すると言う事だと思います。
 確かに、相手の出方を見て、自分の立ち位置や行動を決めるのは、賢明な事です。
 しかし、時に度を越して・・・
 【相手がこう考えているから、自分はこうした】
 ・・・具体的には・・・
 【相手が、私に対して興味が無さそうだから、この恋愛は諦めた】
 と言った具体になる場合があります。

 これは、自分の決断・行動に対して、【相手の出方】に責任を求めると言う、やはり【責任転嫁】の一つです。
 本当に相手の事が好きで、実現を求める意志があるならば、相手の気持ちは【情報】となっても、決断の上で、重要な位置を占める事はありません。
 動き出す前に、既に【言い訳】を用意している時点で、少々お粗末な気もしますね。

 私は、依頼者に対して【自分の人生と、その決断に、責任を負う事】を求めます。
 その覚悟が有ると言う場合、占い師の言葉が、時にお役に立てる事があるだろうと信じています。
 しかし、その覚悟が無い場合、きっと、占い師の言葉は、お役に立てないばかりか、その人生を逃げる道具にされてしまうのだろうと考えています。

 占い師を【商売人】と考えるのであれば、そう言った依頼でも、本来は受けるべきなのでしょう。
 ですが、トキワは【役立つ占い師】を志しています。
 大変申し訳無いのですが、【役立つ事が出来ない】と判断すれば、お断りします。
 申し訳無いのですが、依頼者が占い師を選ぶように、私も依頼者を選ばせて頂きます。
 【商売人】になる事は出来ませんでした。

 でも、ご安心下さい。
 これまでお断りしたケースは、5000件分の10件程だと記憶しています。

 人生とは惑いの多い代物。
 時に気弱になり、意図せず決断を任せてしまいそうになる時もあるでしょう。
 そう言った場合は、その時に応じた鑑定と、アドバイスをするように心掛けています。
 その代わり、トキワの鑑定には、問い掛けが含まれる事があります。
 【貴方は、どうして行きたいと思っていますか?】

 急いで答える必要はありません。
 一緒に、ゆっくりと考えて見ましょう。