インスピレーションとリーディング

サーリー・マーヤ

はじめに

皆様インスピのマーヤです(笑

 タロットを手にするとまず解説書を読み、その意味を覚えることでリーディングを進めていくと思います。解説書に書かれている様々なキーワードを状況により取捨選択し、それに肉付けしていくことで、より具体的な占いができますね。この取捨選択と肉付けをより精密にしていくということが、リーディングの修行の基本になることと思います。
 しかしながら、占いの経験を積むにつれ、「取捨選択」と「肉付け」という論理的な思考によるものでなく、なんか直感というかインスピレーションというものが働き、リーディングの手助けになるということに気づいてくると思います。
 じゃあそのインスピレーションって何なのかということになるわけですよね。単なる閃きなのか?解説書を基にして読む程知識がないから、苦しまぎれのものなのか?日常生活で直感でよく行動する人なんかがいたときには「理性的な判断が出来ない人」というレッテルがはられがちで、インスピレーションという言葉はあまりいい意味では使われませんね。
 インスピレーションでリーディングをするのは邪道なのか?ってな話になるわけです。リーディングにありがちな、そのインスピレーションとは何なのか。という内容で拙い文章で申し訳ありませんが、皆様に提供させて頂きたいと思います。

カードから発せられる何か

 カードをトランプなんかと同じような単なる道具だと思っています? 実はそうじゃないんですね。カードをじっと見つめてください。単なる絵なのに、なんか絵が動いたように感じたり、何か波動のようなものを感じたりしますよ。何寝ぼけたことを言っているのかと思われるかもしれませんが、実際そうであるからしょうがない。この不思議なところからもタロットの神秘性を感じますね。
 このカードから発せられる何かこそが、リーディングの時にインスピレーションが働く大きな原因になるわけです。
 じゃあカードから発せられる何かとは何でしょうかね?じゃあもうちょっと突っ込んで考えてみましょう。
 カードから何かを感じることができる・・・・・・それに、感じる度にその感じは雰囲気が違う・・・・・
変化しているのかな?いやそれだけではありません。クリスマスツリーのネオンの色がチカチカ変わるような機械的なものではありません。何か伝えようとしているかのようなメッセージ性を感じる・・・・つまり、カードが自分に対して積極的に働きかけているのです。
 じゃ何か?カードには意志があるのか?生き物みたいに・・・・・・・・
正解です。その通りです。答えを言うとそうなるんです。しかし、単なる紙に意志があるなんて信じられない。と思われるかもしれません。しかし、実際にカードの絵柄を見ると何かが発せられていて、メッセージ性を感じることが出来る以上、それは事実なんですと言うほかありません。
 私はこのメッセージを解読してカードが何を言いたいのか理解することができます。普通に会話するような気軽さで、かなり複雑な会話が可能です。会話するにはどうすればいいのかについては、紙面の関係上割愛させてもらいます。私はこの会話をリーディングに活用しますが、この会話によって得た情報はかなり正確です。単なる妄想だったらリーディングの精度を上げるまでに活用できませんよね?
 会話によるリーディングは解説書を基にしたリーディングとは異なってきますね。だって解説書に書いてある意味とは正反対のことを言うことがありますからね。通常の占い方とかなり異なる占いが可能になり、可能性が広がるんですよ。まあ、余談ですが、カードとの会話がそのままリーディングに生かして、カード1枚だけで、かなり突っ込んだ占いができるんですよ。実際私はカード1枚だけを抜き出して、会話形式で1時間ほどの長時間にわたって占いをしたことがあります。カードと会話することができれば簡単なことなんです。だって、私は通訳するだけですから負担も少ないんですよね。
 じゃあマーヤの言うインスピレーションって会話のことかい?と言われそうです。それが違うんですよ。会話はあくまでも会話です。インスピレーションを感じたことがある人は分かると思いますが、会話とは感覚が違うんですね。カードとの会話は、「カードから発せられる何か」の特性の1つとして挙げさせてもらいました。
 インスピレーションとは、「直感」や「閃き」だと理解され、それらは対象から自分へと一方通行的なものだと思われがちですが、会話のエピソードから受信するだけでなく、発信もするという双方向的なものだといえると思います。

重要語句  「双方向のインスピレーション」

 やっと前置きまで辿り着くことができました。これが皆様に伝えたい内容です。双方向のインスピレーションと言われてもピンと来ない人も多いだろうと思います。そこで、インスピレーションに限らず「情報」という大きな括りからまず考えてみましょう。

情報とは?

 情報と言われたら、まず真っ先に連想するのは「文字による情報」だと思います。それは本の文字だったり、テレビキャスターが話す言葉だったりするでしょう。実際私が皆様に提供しているのはその文字情報ですね。しかし、情報とは文字情報だけでしょうか?
 「百聞は一見にしかず」という言葉がありますね?これは100回聞くという文字情報はたった1回の視覚情報と同じであるという意味ですね。いやいや視覚情報と限定するのは早計ですね。見るというより体験してみるという意味合いのほうが大きいでしょうか。明らかに文字情報よりも体験による情報を上位においています。更に言えば、文字情報だけによる知識よりも、実際に体験したほうがより理解できるという意味にもとれますね。実際そうなのでしょうか?
 例えば「神田さん」という人を理解しようとしたとしましょう。周りの人に神田さんのことについて聞いてみたら、「優しい人だね」「かわいい人だよ」「おしとやかだね」「声がかわいいんだ」「小柄な人だね」「そういやテニス部キャプテンだったはず」「頭いいよ」「最近彼氏と別れたみたいで辛そうだったなあ」という返答がきた。その人は神田さんという人が女性として魅力がある人だと理解した。
 次の日、実際神田さんに会う機会があった。なるほどうわさ通り、かなりかわいかった。色々話した。確かに声がかわいい。話し方もいい感じ。会話の内容も神田さんの優しさを指し示すようなものだった。神田さんは常ににこにこしていた。そして真剣に話を聞いてくれた。香水だろうか。彼女のイメージにあういい香りだ。別れ際になんだか握手をしたくなった。申し出たら快く引き受けてくれた。握手をした。彼女の手は柔らかかった。
 神田さんと別れてから、彼女のことを好きになっている自分に気づいた。
・・・・・少し話がおかしな方向にいってしまった・・・・・申し訳ありません。
 つまり、神田さんに出会う前の文字による情報は、この人の「会いたいなあ」という気持ちを誘うまでにしか至っていません。しかし、実際会ってみたら「好きになった」という気持ちまで高まっています。これは文字による情報よりも、実際会ってみる(見る・聞く・匂う・触る)という行為によって具体的に理解することになり、結論として「付き合いたい」となるわけです。噂話という文字による情報のみでは、実際に会ってみるという行為にはかなわないものです。
 それは何故でしょうか。それは具体的にその感覚を味わうからでしょう。この感覚というものはとても重要です。感覚なくして論理的な思考のみで全てを語ろうとしてもそれは無理な話です。何故なら、言葉には感情や感覚を示すものが多いからです。青という色も視覚情報あってこそですし、楽しいという言葉も感情あってこそ。暑いという言葉も感覚あってこそ。ごつごつしているという言葉も感覚あってこそで、まったりとした味という言葉も感覚あってこそですし、しつこいですがバラのような香りという言葉も感覚あってこそです。
 ちなみに、この感覚や感情から派生する言葉を聞いて意味を理解できるのも、受け取り手が過去実際に体験しているからですね。つまり、五感で感じて得る情報のほうが、文字面で得る情報よりも具体的で理解するのに適しているわけです。その上で、文字を使いながら論理的な思考を深め活用していくものだと思います。文字は論理的な思考を生み、抽象思考を可能にします。つまり、まずは感覚という情報を基にして思考し、結論を導くんです。先ほどの神田さんの例でしたら、神田さんを実際に知覚することにより様々なことに気づくでしょう。「かわいい声」「いい匂い」などの気づきによる情報をもったとしても、それだけで終わったら駄目です。「だから○○だ」というところまで高めないとそれで終わりです。この結論をつける部分が思考によって行われる訳ですね。
 おっと重要語句がでましたねえ。ここ試験に出ますんで、家で必ず復習するんですよ(笑)

重要語句  「感覚という情報から思考という過程を経ることにより結論を導く」

 そういうところから考えると、解説本のみでリーディングを進めていくと初心者は文字の操作だけに終わってしまい、具体的な情報である感覚や感情という部分が欠如してしまう可能性があります。そうなると実感が伴わないわけですから、リーディングが抽象的になり、勿論結論も抽象的で分かりづらいものになるでしょう。また実感の欠如により、リーディングに手ごたえが感じられず、消極的なものになる可能性が大きいです。感覚による情報という素材って大事ですねぇ。
 じゃあ、リーディングにおける感覚情報って何でしょうか?勘が鋭い方はもうお分かりですよね?そうです。インスピレーションです。そしてその素材は「カードから発せられる何か」です。一般的なイメージからしても、インスピレーションとは論理的な思考とは対極にありますし、頷きやすいと思いますがどうですか?じゃあ、これからインスピレーションと感覚情報との関係をお話しさせていただきますね。

感覚情報とインスピレーション

 インスピレーションを得た時、「インスピレーションを理解した」と言うでしょうか?違いますね。正確に言うと「インスピレーションを感じた」ですね。この「感じる」という言葉自体、感覚ですね?しかし、「インスピレーションを見た」とか「インスピレーションを聞いた」とは言いません。つまり、インスピレーションは感覚情報だとは言えるけど、五感による感覚情報ではないのです。じゃあいわゆる第六感かい?と言われそうですね。まあ間違ってはいませんが、第六感というと超能力に代表されるような特別な人しか感じることの出来ないものと思われそうなんで、区別します。「五感以外の感覚」と表記させていただきますね。何故なら特別な人にしか感じることのできないものではないからです。
 この五感以外の感覚は、通常人間が持ち得ない感覚ですから、かなり具体性に欠けるのです。何故かと言いますと、人間は五感で物事を感じて実感し、理解するようになっています。つまり、五感以外の感覚を純粋に知覚して実感することは難しいのです。実際、カードとの会話についての修行をしている人が、「それがどういう意味を示しているかはわかりませんが、兎に角何かを感じました」と言うことが多いです。それは感じたことは確かだけど、それは具体的な感覚情報ではないことを指すと思います。
 しかし、そのようなものでも、具体的に実感することが可能なのです。それは、五感意外の感覚情報を五感に変換し、分担するのです。正確に言えば五感によって補うと言ったほうが適切かもしれません。
 これだけでは分かりづらいですね。具体例を示しましょう。五感以外の感覚情報をテレビの電波、変換するものをテレビと考えてください。電波の状態では、我々は情報を収集して理解することができませんね。しかし、アンテナから受信して、それをテレビで情報を変換することによって、映像を見ることができるし、音楽を聴き、音を聞くことができます。つまり、電波の状態では、情報としては不十分なんですね。テレビという変換機械があってこそです。そのテレビとしての役割を脳が行えばいいのです。
 人間の脳って都合のよい作りをしておりまして、このように認識するのが難しい感覚は既存の感覚で補う働きをするのですね。人間って神秘的!と思ってしまいますね。そしてこのような変換作業をすることによって、実感するという確実性につながるのです。おっとここで重要語句登場ですね。

重要語句  「五感以外の感覚情報を五感に変換し、分担する」

 インスピレーションの正体は五感以外の感覚情報を五感に変換し、分担することによって、実感を伴う具体的な情報である。となりますが、ここで「ちょっと待って!私が感じたインスピレーションはそんな五感の感覚情報を伴うものじゃなかったぞ!直感的なもので、閃きに近いものだったぞ!」と言われそうですねえ。確かにそういうケースもあるでしょうねえ。実は、五感以外の感覚情報は確かに感覚情報には変わりないのですが、その内容は五感だけでは説明できないものが多く存在するのです。つまり、五感以外の感覚情報は多種多様であり、情報量は意外に多いんですよ。それではどんな情報があるのかということを説明させていただきますね。

インスピレーションから得られる情報

 インスピレーションを理解するのに、人間から発せられる情報と置き換えると分かりやすいです。先ほどの神田さんの比喩を引用して説明しますね。1つ目の矢印は、感覚情報の種類。2つ目の矢印は、インスピレーションを知覚するための変換方法です。

「かなりかわいかった。」   →視覚情報
「声がかわいい」        →聴覚情報
「いい香り」           →嗅覚情報    →五感に振り分け知覚する
「彼女の手は柔らかかった」 →触覚情報
神田さんの比喩にはないが →味覚情報

ここまでは、先述している五感に振り分ける情報ですね

「会話の内容も神田さんの優しさを指し示すようなものだった」→言語情報
  →意味を受け取り(文字に変換)

 言語情報と言うと、先ほどから言っている「文字情報」とだぶる気がしますが、対象物に対しての噂話と実際に会って会話をするというのは全く意味が変わってきます。その人を指し示す言葉を聞いてもその人そのものを知覚するわけではありませんよね。しかし、対象となる人との実際の会話はそのものの理解に繋がりますね。そういう意味では会話という言語情報は感覚情報に含まれるとなるわけです。
 ちなみに、上には「意味を受け取り文字に変換」とありますね。つまり「おはよう」という言葉を受け取る時、「お・は・よ・う」という音を受け取るのではないのです。だから「おはよう」という言葉を知らない人が受信してしまった場合。意味は受け取ったが変換不能となり、そのインスピレーションは無効となります。そういう意味では、様々なことを知っておく必要がありますし、語彙力がないと困ってしまうのです。そういう意味じゃシビアなインスピレーション情報だといえますね。

「神田さんは常ににこにこしていた。 →感情情報 →実際にその感情を感じる
そして真剣に話を聞いてくれた」               その感情を理解する

 人間は、相手の表情を見ることで感情を読み取ることができます。これは医学でも立証済みです。まあ読み取るといっても、相手と同じ感情を完全に共有するわけではありませんがね。そうはいっても、怒っているか楽しんでいるのかというぐらいは確実に読み取れますね。
 同じように、インスピレーションによって感情情報を入手することもあります。占いでいいますと「クライアントが恋愛にいかに苦しんでいるのか。そしていかにその人のことを好きなのか感じることができる」というメリットに転化します。例えば、極度に悲しんでいて、涙を流している人をなぐさめようとしたが、ついもらい泣きをしてしまうということがありますね。これは、相手の感情に共鳴して自分にも似た感情が流れることをしめします。でも、そこまでいってしまうと慰めるために最善の言葉をかける余裕がなくなってしまいます。つまり、一緒にわんわん泣くばかりで、悲しんでいる人に対して何も言葉をかけられなくなる訳です。一緒に悲しんでくれたという意味では、慰められるかもしれません。しかし、慰めるという当初の目的は果たせませんね。
 これを占いに当てはめるとどうでしょうか。クライアントと一緒にわんわん泣いて、リーディングができないばかりか、アドバイスが出来なくなってしまいますね。ついでに言うと、プロの方なんか1日何件ものクライアントを相手にするわけですから、ネガティブな感情を必要以上に浴びると精神的にも肉体的にもかなりの負担をかけてしまいます。
 悲しい、憎いという感情をクライアントは持っていることは分かったし、それを感じた。でも、それに浸かりきらないぞ。という気持ちが大切になってきますね。クライアントの感情を受けても、同時に冷静に分析する自分があるという状態を保つ必要があると思います。

 以上が、インスピレーションによって得ることができる情報ですが、「話が大きくなりすぎてついていけない!」と感じたり、「そんなことが本当に出来るの?インスピってそんなもんじゃないでしょ?」と思ったりするかもしれません。しかし皆様が体験したインスピレーションも私の話に当てはめることができるんですね。

「なんかクライアントに一大事がおきるな」
 これは、クライアントに一大事がおきた風景をみたのかもしれません。しかし、映像として確実にみえていないために、実感だけ残ったと考えられます。

「なんかとても悲しんでいるな」
 これはクライアントの感情を情報として受け取ったのかもしれません。しかし、実際に占者がその悲しみを感じるまで至っていないかもしれません。でも悲しんでいるという確信だけは残ったと考えられます。

「イエスかノーかどっちかだろうな。でもイエスのような気がする」
 これは言語情報として言葉を受け取ったかもしれません。感覚や感情以外のものは、言語情報である可能性があります。

 ここまでくると、インスピレーションを感じたことのある人は、身に覚えがあると頷いてくれると思います。要は感覚が薄かったり、曖昧なために、私が上に示した7つの感覚情報として認識しにくいんですよね。でも、薄かろうと曖昧であろうと感覚として受け取っているわけですから、実感として残るわけです。インスピレーションの特徴として、根拠はないが実感がある。確信がある。となるのはそのためです。おっとここで重要語句

重要語句 感覚情報を受け取っているが、それが希薄だったり曖昧だったりすることが多い。根拠のない確信はそこからくる

 じゃあ希薄ではなく、濃厚に、曖昧ではなく明晰にインスピレーションを感じることができれば、タロットライフが潤うものになると思いません?未知の領域に足を突っ込むことになりますからね。かなり浪漫をかきたてられると思いますよ。
皆さんは、どうすればそのように濃厚で明晰なインスピレーションを感じるにはどうすればいいのか知りたくなりませんか?残念ですねぇ。それまで書いていたら膨大な文字数になってしまいます。またの機会にということで勘弁してくださいね。というのは余りにも冷たいですね。さわりだけ紹介します。
 インスピレーションは、カードから発せられる何かを受け取り、それを五感に振り分け補うことだと言いました。つまり2つのステップがあるんですね。1つ目が「カードから発せられる何かを受け取る」2つ目が「五感に振り分ける」ですね。
「カードから発せられる何かを受け取る」には、まず、カードから何かが発せられるという発想をもつことですね。本当にカードから何かが発せられるのだろうか?と疑問をもっても構いません。そういう考え方もあるんだという程度で結構です。すると本当に何かを発するのかな?ということを意識しながらカードを眺めることになるでしょ?そうすると今まで目を向けなかったものに目が向くということですので、それだけで感じることができますよ。
 例えばレストランのBGM。どのレストランでもBGMが流れていると思いますが、誰もそれに意識を向けませんね?何の曲が流れていたか後から考えても思い出せないと思います。耳には入っているけど聴こえていない訳です。でも誰かが「この曲なんだっけ」と言ったとしたら、みんな耳を傾け聴くことになるでしょう。それと同じことですよ。意識を傾けていないものは、感覚しないものなのです。それと同じことだと考えると分かりやすいでしょうか。カードを単なる紙だと思い、占いの道具にすぎないと思っていると、カードから発せられる何かに意識が向きません。私の文章を読んだ後、ご自分のカードをご覧になると私の言っている意味が更にわかると思いますよ。
 「五感に振り分ける」には、まず視覚情報から始めたほうがいいですね。何故かといいますと、人は誰でも「想像」できますよね。これって視覚情報ですよね?「イメージをする」という言葉がその典型だと思います。五感に振り分ける作業は無意識にできることですが、その振り分ける質は想像する力がいかに強いか、そして精密かに依存します。想像力の質=五感に振り分ける質だと言えますね。想像力の質とは、例えば、リンゴを想像するとしましょう。目を閉じてリンゴを想像します。するとまぶたの裏にリンゴが浮かんでくるでしょう。しかしそのリンゴの姿がすぐ消えてしまっては駄目ですね(想像する力の強さ)あと、そのリンゴの姿が曖昧でぼやけていては駄目ですね(想像の精密さ)となるわけです。
 視覚情報の想像力を鍛えた後、他の感覚情報を想像するという方向にシフトチェンジしていくといいですね。先ほどのリンゴの例でしたら、リンゴを明確に映像としてイメージできるだけでなく、リンゴの匂いを感じるようにするということです。
つまり、想像力の豊かさという下地を利用してカードから発せられる何かを五感に振り分けられるようにするわけです。リンゴの例はあくまでも訓練法であって、カードから得られる情報が想像しただけのものであり、妄想であるというわけではありません。
 この修行法を魔術の世界では「視覚化」と言われています。とまあこんな感じです。超能力者でなくても、訓練次第でこの境地まで達することは可能ですよ。だからこそ、第6感と区別したんですね。

占い師とクライアントの関係

 さて、これまではインスピレーションとは何か、ということに話題が集中してましたね。クライアントのことがなおざりでした。それでは占うという作業を前提にクライアントとの関係について書かせていただきたいと思います。
 占いをすると、解説書主体の占いであれ、インスピレーション主体の占いであれカードはクライアントに関係する事柄を映しますよね。事柄は過去・現在・未来という時間に関係することであったり、好きな人の気持ち・クライアントの気持ち・周りの人からの影響という人に関係することであったりなど様々な視点からクライアントに関係することを映すと思います。しかも、カードも占い師もそのクライアントに初めて会ったにもかかわらず、リアルに映すんですね。何故だろうと疑問に思ったことないですか?
 答えはいたって簡単です。カードとクライアントが繋がっているからですよ。皆さんはシャッフル・カットをする時にどんなことをしていますか?クライアントや占う内容をイメージしますよね。しかも、シャッフル・カットが最も意識を集中する段階ですね。これがカードをクライアントに繋げる儀式みたいなものなんです。
 カードとクライアントが繋がる。その後に、カードから発せられる何かをインスピレーションとして感じることによって占い師とカードが繋がる。つまり、カードを中継して占い師とクライアントが繋がる訳ですね。この占い師とクライアントがつながることを私は「リンクする」と呼んでいます。おっとこれは重要語句ですね。

重要語句 「シャッフル・カットにより、占い師とクライアントを繋げる」

 このリンクという現象は、占いをスムーズにさせたり、様々な応用が利いたりしますから、大切なものですが、問題点もありますね。
 それは、クライアントが余りにもネガティブな感情をもっていたり、エネルギーが強かったりすると、それらが占い師に流れ込むことがあることです。感情情報との付き合い方でも書きましたが、受け止めすぎると悪影響を与えるものはできるだけ受け流すのが大事になってきます。
 さて、シャッフル・カットという行為はリンクをする儀式ですから、かなり意識を集中させてやっています。この意識を集中している状態は、カードから発せられている何かを受信するのに適している状態です。しかも、カードを開いていませんので、カードの絵柄に惑わされないという意味でも純粋に行うことができますね。このように適している状態を見逃すのは勿体無いという考えもあって、シャッフル・カットをしてリンクを繋いだ直後からインスピレーションを働かせています。具体的には「チャットやメールでの鑑定の時、クライアントの顔の画像を受信する」「クライアントの好きな人(恋愛占い)の容姿や性格を受信する」「クライアントの過去に起きた重大な事件の様子を見る」などですが、カードを展開している時よりもかなりの精密度で受信することができますね。私の場合はシャッフル・カットから占いが始まっているのです。しかも、占いの50パーセントはそこで終わらせることが可能です。シャッフル・カットって奥が深いですね。

双方向のインスピレーション

 長かった・・・・・・やっとここまでたどり着きました。いよいよ、核心に迫ります。
 皆さんはテレビを観たことありますよね?テレビって流れる映像や音をただ黙って観るだけですよね?野球中継でひいきにしているチームが不甲斐ないプレイを見て「ふざけるな!」と叫んだところで、画面の映像はなんら変化なしですね。画面に映っているプレイヤーが「そんな事言われてもね、俺も俺なりに頑張っているんだよ」と言葉を返すなんてありえません。それは言い換えれば、受信はできるが発信できない状態と言えるでしょう。一方同じテレビでも、テレビゲームはどうでしょうね。テレビに映っている映像を観たり、音を聞いたりするだけでなく、画面に映っているキャラクターを自分で動かすことができますね。これは自分の意志が画面に影響を与えることができるという意味では、受信だけでなく発信も行えると言えるでしょう。
 じゃあインスピレーションだったらどうでしょうか?インスピレーションのもつイメージとして、インスピレーションを受け取るだけで働きかけるというものはないですね。つまりインスピレーションは受信するというイメージが強いのです。しかし、先述したテレビゲームの例にもあったように、自分の意志でインスピレーションから得られる情報を操作することが可能なのです。
 カードから発せられる何かを受信して感覚情報に変換した時、現実的な感覚とインスピレーションによる感覚とが混在した状態になります。つまり、視覚情報として「実際にシャッフルしている自分の手や、対面の占いであったら、目の前にいるクライアントの姿」が現実的な感覚として知覚しますね。同時に、インスピレーションによって得た映像を知覚します。この2つの映像がだぶった状態になるわけです。しかし、インスピレーションによって得る情報に意識を集中すると、現実的な感覚としての映像が次第に消えていきます。このようにインスピレーションによる情報に集中すればするほど、現実的な感覚が薄くなるんです。そうなると、あたかも違う世界にワープしたような感覚におそわれるんですね。カードの中に飛び込んだような気持ちになります。このカードの中の世界は、クライアントにリンクを結んだ状態でやった場合は、クライアントの中の世界になりますね。
 このクライアントの世界に入るということは、テレビを観るのとは違って、歩いたり、物を動かしたりできます。更にはその世界にいる人物と会話することも可能です。
 クライアントの世界には、クライアント自身やクライアントの好きな人なども登場しますので、この人たちとはよく話しますね。クライアントが「私が好きな彼は私のことをどう思っているのでしょうか?」と言われたら、実際にクライアントの世界にいるその人と直接「実際○○さんのことどう思っているの?」と聞いたりすることもあります。とまあこんな感じで書いても分かりにくいでしょうから、小説タッチでインスピレーションの例を書かせていただこうと思います。

第1話 クライアントにダイブ!クライアントの女性観に迫るの巻

 クライアントは高校生。好きな女の子との恋愛運を占って欲しいとのことだった。まあ特定の人がいるんだったら、その好きな人との相性になるんだろうなと思いながら、シャッフル。カードとクライアントをリンクさせ、早速インスピレーション受信開始。ウオーミングアップを兼ねて、写真のように画像を受け取った。まずはクライアントが浮かぶ。まあ目の前にいるんだから、
「わざわざクライアントを映さなくてもいいじゃん。」
 とカードに文句を言いながら画像をチェンジさせた。

これは発信ですね。必要がないと分かったら、別の情報に切り替える。あたかもつまらない番組があったらチャンネルを変えるか如く。

 すると、女の子が浮かんだ。
「おお、これってクライアントが好きな女の子か。かなりかわいいな」
 と思った瞬間、別の女の子がその横に現れた。
「あれ?二人?もしかして好きな人って2人いる?」
 と思い確認した
「あなたの好きな人って2人ですか?」
 というと
「はい・・・・・・なんで分かったんですか?」
「・・・・見えたから」

適度な先入観はそれが崩された時、インスピレーションの存在と確実に働いているんだという確認になります。強い先入観は「そんなはずはない」とインスピレーションから得られた情報を否定してしまうので注意が必要です。

 ロングヘアーとショートヘアーということで、髪形が違うのでこの2人の女の子の 区別は容易に出来た。この2人との相性になるのかと思ったが、
「ロングヘアー」
という声がした。

これこそがインスピレーションにおける言語情報です。特に選択に関係することはほとんどこれですね。また、別タイプの言語情報もありますので、これを言語情報タイプAとしましょう。

 なるほど、ロングヘアーの女の子がメインになるわけだと理解してクライアントにこう言った。
「ロングヘアーの子とショートヘアーの子がいますが、どちらかと言えばロングヘアーの子のほうが好きですよね?」
「はい。そうですね。」
 これで対象となる人物が確定できたということで、ロングヘアーの彼女に絞って先に進めた。写真みたいな画像では情報にも限りがあるので、クライアントとロングヘアーの彼女とが共有する空間に場面を変えた。すると教室に場面が移った。

教室に場面が移りましたが、私が場面を教室に場面を移らせたわけではありません。生活空間に移りたいと思ったら、カードによる判断で教室になったのです。つまり、占いは占い師だけが行うのではなく、カードとの共同作業だと言えます。

 教室でクライアントはロングヘアーの彼女と遠いところにいる。話していない。チラチラとはみているが、話すにまでは至っていない。そして、クライアントは男友達と楽しそうに話しだした。更によくみると、彼女に光がたちこめている。それでぴんときた。つまり、彼女はクライアントからすると高嶺の花だということだ。しかも、クライアントが男友達と楽しそうに話しているところからみて、クライアントは恋愛に関しては奥手で、しかもそれほど恋愛に深くはまりきっていないことが分かった。

 彼女に光がたちこめるというのは現実にはありません。しかし、インスピではなんでもありの世界ですからそういう表現が可能なのです。おかけでとても分かりやすいですね。
 また、感じたことばかりでなく、感じたことをもとに結論を出すという作業をしていることに気づくと思います。感じるだけでは駄目。そこから論理的に思考して判断していくという意味分かりましたか?

 そこで、彼女に話しかけてみた。
「好きな人いる?」
 いきなり本題に近いところにはいったが、あくまでもインスピレーション上の人物なので、前置きは不要だと考えた。すると
「います。・・・・・・部活の先輩なんです。余り話したことはないけど、かっこいいんですよ」
「ほう・・・・そうですか。付き合っているんですか?」
「まだですよ〜先輩は人気あるし。もてるんですよ。どうすればいいんでしょうか。分からないんです」
「はあ・・・・・」
 このままでは恋愛相談の相手が変わってしまう危険性を感じ、話題を変えた。
「○○さんのことどう思う?」
「うーーん。友達?」
 なるほど、意識されていない。恋愛感情ゼロってことかと思いつつ、予想していたことが確定したという手ごたえを感じた。大体のところは情報収集できたので、インスピレーションから脱出し、シャッフル完了。カードの展開に入った。

恋愛占いをする場合。対象の人と話ができるのは大きなメリットなんですよ。何故なら、知りたいのは相手の気持ちですからね。それを直接聞けるのは手っ取り早いでしょ?
さらに、この会話こそが言語情報となりますね言語情報Bとしましょう。また、彼女の喋り方や表情により、彼女の人柄が分かります。言語という情報の他にこのような感情に関すること、感情情報を手に入れることができます。感情情報とは、感情をダイレクトに受信し、共鳴するだけではなく、このような入手法もあるんです。

とまあ、これがクライアントの世界に入るという意味でのインスピレーションの実用例です。しかし、インスピレーションに深く入り込むことになりますので、精神的な疲労やエネルギー消費は半端じゃありません。だからあまりお勧めできませんが、こんなことも可能だという面では面白い例だったのではないかと思います。

第2話 お手軽テレビ電話。カードって便利だねの巻

 ある恋愛占いが終わった。最後に質問がないか聞いてみたところ。クライアント(女性)が彼は私のことをどう思っているんですか?と聞いてきた。散々それについては喋ったが、納得してもらうためにリアルな形で理解してもらおうと思い、1枚引いた。カードに彼になってもらうように指示すると、彼の顔になり、動き出した。彼の特徴を話すと一致した。インスピレーションの実感と確認を済ませたところで、話しかけた。

 先ほどの例では、カードに入り込むようなものでしたが、このように、カードをテレビ電話のように使い、カードに見える映像はインスピレーションによる映像で、それ以外は現実的な感覚でやることができます。このほうが、負担が少なく、実用的です。シャッフル中でなく、展開中だったらこの方法がベストですね。

「○○さんのこと知ってる?」
「はい。知ってます。よく話しますね。」
「よく話すんですね?話すと楽しい?」
「楽しいです。面白いから。」
「そっか。好きな人いる?」
「いません。」
「恋愛に興味ないって感じ?」
「付き合いたいとは思うけど、べつにいいかなあって感じかな?」
「他にやりたいことがあるんだ。」
「そういうわけじゃないけど。」
「分かった。ありがとう」
会話を終了させ、クライアントに言った。
「あなたに好印象をもっているようです。でも、恋愛にはまるタイプじゃないですね。だからあなたに告白するという感じではありません。もし、付き合いたいのなら、自分から告白したほうがいいですね。でも、しつこいのはまずいかな。ゆっくりゆっくり関係を深めてチャンスがきたら告白するぐらいがいいと思います。」
と言い、占いが終了した。

 カードはテレビ電話。会話をして、情報を得て、それをもとに思考し、結論を導く。これがインスピレーションを活用するこつです。

クライアント以外の人物とのリンク

 以上の例により、発信する様子がわかったと思います。つまり、私のいう発信とは、インスピレーションによって得る情報をただ眺めるだけでなく、テレビゲームのキャラクターを操作するように、テレビのチャンネルを変えるように変化させていくことです。また、会話することにより、働きかけることもできます。これも発信の大きなメリットです。
 しかし、クライアントの世界を体感することはわかっても、クライアントの世界にいるクライアントはなんなのか分かりづらいですね。クライアントの世界にいるクライアントは、クライアントとのリンクにより、クライアントの情報がカードに蓄積されます。それが、クライアントの姿や性格までも模写することによりインスピレーションが架空のクライアントを作り上げるのです。架空のクライアントであっても、クライアントの過去やクライアントの内面までもカードが受信していますので、かなりリアルです。クライアントの癖までもリアルに模写します。私はこの架空のクライアントをシャドーと呼んでいます。
 じゃあ、クライアントを模写するのは分かった。じゃあ、クライアント以外の人物。つまり、恋愛占いだったら、クライアントが好きな人はどうなるのか言われそうです。答えは、その人物にもリンクでつないでいるということです。クライアントから、その人物の姿を受信することができます。その受信した映像をもとに、好きな人ともリンクをはるのです。しかし、リンクを同時にたくさんはるのは、先述したネガティブ感情など様々なものを自分に流してしまったり、占い師のエネルギーを相手に流してしまったりする可能性があるので、まずいですが、クライアントを含め2人までだったらいいと思われます。ですから、インスピレーションにおける会話は最高2人ぐらいが適当です。

終わりに

 インスピレーションを題材にして文章を書くのは至難の業でした。何故なら、私も書いているように、私が感覚として味わっていることは、文章として伝えるのは難しいのです。百聞は一見にしかずですよ。感覚的なことは、実際に感覚してみないと分からない。でも、感覚は共有できない。結局は文字による伝達になるわけです。ですから私の拙い文章で皆様にご迷惑をかけていないか心配です。しかしこれも修行です。クライアントに伝えるのも文字情報のみですからね。そういう意味では占い師は、数学者のような高い思考力を。そして文学者のような豊かな表現力をもつ必要があると実感しています。
 このような機会を与えてくださった常葉さんに感謝。
 このテーマを書くきっかけを与えてくれたRYUUさんに感謝
 アドバイスを与えてくださったチャズ@さんに感謝
 そしてこの文章を読んでくれた皆様に感謝
 ありがとうございます。


解説 常葉 了

 いやー、長かったですねー(^^;
 読み通した皆様、お疲れ様です。
 書き上げたサーリー・マーヤさんもお疲れ様でした。

 今回、サーリー・マーヤさんがお書き下さったテーマ『インスピレーション』は、占い師にはとても重要な課題なのです。
 特にタロット等の卜占(ポクセン)の分野に当たるものは、象徴を読み解き、且つマニュアル束縛されない範囲の成果を出すため、『インスピレーション』の扱いは死活の問題を持っているのです。
 しかし、重要な『インスピレーション』と言っても、単なる思い付きではいけません。それが正しい情報であるかを査定して口に出さなければ、クライアントの身に不幸を招かないとも限らない。その為、色々な占い師さん達が工夫して、『インスピレーション』を鍛錬したり、正しい情報かどうかを査定するシステムを開発しています。
 今回サーリー・マーヤさんが書いて下さった内容は、まず『インスピレーション』の可能性を教えるものとして、とても優れていたと思います。
 鍛錬の仕方や、査定方法等は、また各々の学習の中で探していって下さい。
 もし切っ掛けが分からない場合は、是非ともサーリーさんのサイトへ行き、直接質問してみてください。
 サイトの場所は、リンク集から。