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むし歯予防へのフッ化物の応用

子どもにはうがい効果的

 平成21年度に「北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例」が可決され、平成22年度より十勝管内でもむし歯予防が効果的に行えるフッ化物洗口の普及が謳われています。未だその認知が地域住民に十分になされていないこともあり、今回より4回にわたり、このむし歯予防のためのフッ化物の効果についてお話ししたいと思います。

 むし歯とは、歯垢の中のむし歯菌の出す酸によって歯が溶けてしまう病気と考えられています。むし歯予防として、◎歯に付着した歯垢を歯ブラシで取り除くこと。◎むし歯菌の栄養源となる砂糖を中心とした糖分の取り方・食生活そして生活習慣に注意すること。◎ダラダラ食べなどをしない規則正しい生活。そして、◎フッ素により歯そのものを強くすること−の4つが重要となります。その中でもフッ素は歯の表面のハイドロキシアパタイト結晶を安定したフルオロアパタイト結晶に変化させると言われており、結果、歯の質を強くするという効果と、むし菌が出す酸を抑えるという2つの効果があります。

 さらにむし歯予防を目的としたそのフッ素を応用した方法にはいくつかあり、『上水道フッ素応用>フッ素洗口>フッ素塗布>歯磨き粉』という順番で効果が高いと言われております。比較的効果の高いフッ素洗口は比較的低濃度のフッ素水溶液を用いて、うがいをする方法です。日本口腔衛生学会では、「フッ化物洗口法は、就学前から小・中学校まで一貫して応用すると特に有効であり、幼児においても安全に実施する事ができる。わが国の実状に適合したフッ化物応用法としてフッ化物洗口法の普及を推奨する。」と発表しています。

 子どもの口の中は、新しく生えた奥歯に歯ブラシが届かなかったり、生え始めの歯は一部が歯肉に覆われており、歯垢がたまりやすい状況です。そのような状況で歯みがきだけでむし歯予防を行うのは理にかなっていません。そのようなことからフッ素を応用した予防が効果的と思われます。
むし歯は社会的な病気であるともいえます。経済的理由でフッ素の歯面塗布などが受けられない場合や、むし歯予防など歯科保健知識の不十分な場合などにむし歯が多くなり、健康格差の問題も生じます。

 お口の健康づくりには、すべての人が平等に健康な歯をもつことが欠かせませんが、フッ素洗口はこれを実現させる効果的な手段と言えるかもしれません。時期としては、フッ素は生えてきて間もない歯に使うと一番効果的といわれています。また、中学生までフッ素洗口を続けた子は大人になっても虫歯が60%も少ないという研究が日本で発表されています。さらに最近では、大人の歯の根面のむし歯にも20〜30%の予防効果があるという研究報告もあります。

 いずれにしてもどんな薬でも、また、たとえ食物でも一時期に大量に摂取すると体に害を及ぼす可能性がありますので、効果的なむし歯予防をするために使用量や諸注意を把握した上での使用が必要です。

 

管内小学校でも成果あり

 平成21年に「北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例」が施行され、フッ化物を溶解した洗口液でブクブクうがいするだけで、むし歯予防が効果的、かつ簡便に行えるフッ化物洗口の普及が求められています。

 平成22年度より十勝管内では、帯広小学校がモデル校に指定され、管内で唯一フッ化物洗口を同年12月より開始する事が出来ました。フッ化物洗口開始に際し、帯小の在校児童の保護者に希望調査を行いました。平成22年度は、在校児童数222名中、希望する者210名となり、96%の実施率で、多くの保護者の方に好意的に受け入れられたと考えます。

 平成27年度で6年間のモデル事業が終了し、更に3年間の延長が決まりましたが、6年間の効果として帯小児童のむし歯の罹患率は1.5→0.5%に減少し、他小学校(1.56→0.89%)に比較して明らかにむし歯の数が減少し、フッ化物洗口の効果が示されました。

小学校6年生の一人平均むし歯数の比較
小学校6年生の一人平均むし歯数の比較

 また、昨年度帯小を卒業した生徒が進学した市内2校の中学1年生に行った追跡調査では、フッ化物洗口を経験した帯小卒業生とフッ化物洗口を経験していない他小学校卒業の生徒で1人平均むし歯数を比較したところ、帯小卒業生が0.44本で、フッ化物洗口非経験の他小学校卒業生(0.98本)に比べ、0.58本もむし歯が少ないことが明らかになりました。また、1人平均むし歯歯面数は、帯小の卒業生が0.48だったのに対し非経験群は1.57と、フッ化物洗口経験群が1.09面少なかったことも判明しております。

フッ化物洗口経験群と非経験群の比較
フッ化物洗口経験群と非経験群の比較

 最後になりますが、むし歯予防のためのフッ化物洗口は世界中の国々で最も有効な予防方法として認知され、効果や安全性も証明されています。歯ブラシをするよりも、フッ化物の応用が効果的であるとの報告もあります。今後は、他小学校にもフッ化物洗口が広がり、むし歯の無いお口で健康で楽しい生活を送れるようにして行きたいと考えます。

 

4、5歳から中学生まで洗口を

広く一般の家庭にはフッ化物の歯磨き粉が普及し、それを使うことは当たり前となっています。虫歯予防に有効なわけですが、それに加えてフッ化物塗布やフッ化物洗口を行う理由があります。今回はフッ化物洗口に関する疑問や心配事についてQ&Aでお答えしたいと思います。

フッ素は安全なのですか?
もともとフッ素は自然界に存在し、様々な食品にも含まれている必須栄養素の一つです。歯科医院でフッ化物塗布や洗口に使うフッ化物は、フッ化ナトリウムであり、安全です。食塩も過剰に摂取すると中毒となりえますが、適量であれば問題がないのと同じです。
フッ化物洗口は、いつ頃から始めればよいのですか?
永久歯のう蝕予防の場合は、永久歯が生える直前から始めると効果的です。永久歯が生える時期には個人差がありますが、ブクブクうがいができるようになって、一般的には4〜5歳くらいからフッ化物洗口を開始することができます。その後、小学生の時期に次々と乳歯から永久歯に生え変わり、中学生の時期には親知らずを除く全ての永久歯が生えるので、中学卒業まで継続するとよいでしょう。
歯を失う原因としては歯周病が問題視されています。歯磨きや食の指導に重点を置くべきで、なぜフッ化物洗口ばかりが強調されるのでしょうか?歯磨きの徹底指導ではダメなのですか?
歯を失う原因の9割は、むし歯と歯周病とされています.歯周病対策も大切ですが、むし歯予防も同様に大切です。むし歯予防の対策としては、食生活のコントロールや歯磨きの大切さについては、これまでも学校現場で指導がなされていると思います。これらは今後とも大切な取り組みではありますが、歯質を強化する観点からのむし歯予防対策であるフッ化物洗口は、新たな取り組みとして大変効果的なものです。正しい歯磨きは歯肉炎予防には大変効果的ですが、歯磨きだけでむし歯の原因となる口腔内の歯垢をすべて取り除くことは不可能です。
フッ素を飲み込んでしまいました。大丈夫でしょうか?
フッ化物洗口後、洗口液を吐き出しても全体量の10〜15%の液が口の中に残ります。その中のフッ化物の量は毎日紅茶を1〜2杯飲んだ時に摂る量と同じです。また、フッ化物洗口液は例え誤って全部飲み込んでしまった場合でも、全く心配の無いように安全な濃度で設定をしています。
最後になりますが、フッ素は歯を強くしたり、むし歯になりそうな部分を治したり、むし歯菌の働きを抑制します。フッ素は使用方法と量を守りさえすれば、安全かつ気軽にできる予防ケアとして、子どもだけでなく大人にも有効なものです。

 

健康格差をなくす教育を

 そもそも、なぜフッ化物洗口なのでしょうか?むし歯の予防には1日3回の歯ブラシや食生活の改善をすれば十分と思う人たちがいるでしょう。しかし、たとえ1日3回の歯ブラシをやっていたにもかかわらず、多くの人たちはむし歯になり、歯の治療の経験があると思います。また、食生活の改善として糖質の摂取量を少なくするというのも現実的ではありません。むし歯予防に関しては今まで行ってきたやり方では限界があり、新たなアプローチをしていくことが必要となってきています。その一つがフッ化物洗口と言えます。ただ、このフッ化物洗口は個人での継続がなかなか難しいため、集団で行うことが望ましく、さらにいえば、幼稚園、学校といった場所で行うことが理想的です。

 すでに十勝の保育園、幼稚園のほとんどの場所で、希望する園児にはこのフッ化物洗口が行われています。しかし、残念ながらせっかく行われてきたフッ化物洗口が、小学校に上がってからは実施されているところはほとんどありません。その理由としては、学校でのフッ化物洗口を行う環境が整っていないことが大きな原因です。学校は教育の場所であり、健康教育もその一つです。子どものことを第一に考え、それに健康が備わるのであれば、フッ化物洗口を学校で行うことに対して真摯に取り組む必要性があります。現に、帯広市の小学校においてもこのフッ化物洗口に取り組もうとしている学校もあり、歯科医師会もそのサポートを行っています。

 健康格差の解消がしきりに謳われていますが、歯科疾患はこの健康格差が見えやすい疾患です。そのため、学校における集団でのフッ化物洗口はこの健康格差を解消する手段としてとても重要なものです。健康格差をなくすための健康教育は、これから子どもが大きくなって大人になり、ずっと健康でいるための礎です。気がつけば無意識のうちに当たり前のように健康に気を使っているような子どもたちが大人になれば、歯周疾患や高血圧、糖尿病といった成人に多い疾患の多くが今よりもずっと少なくなることは想像するに容易なことでしょう。

 今後、より豊かな生活をするに向けて必要なことは、様々な分野の専門家が力を合わせ、新たな取り組みにも正面から向き合うことです。口から始まる健康、それが全身の健康に繋がる一つのきっかけであるフッ化物洗口はこれを機にしっかりと考えていく必要があると思います。

 十勝歯科医師会はフッ化物洗口を実施する学校の協力をしています。問い合わせは十勝歯科医師会(0155-25-2172)までお願い致します。

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