鳥と銃弾

シカの死体ある冬の日、釣り場に行く途中、カラスが集まっている所に出くわしました。路肩に車を停めてカラスを追い払うと、エゾシカの死体が出てきました。

ご覧の通り肋骨がむき出しで、もはや原形が残っていません。彼女はこの近くでハンターの銃弾を浴び、死力を尽くしてここまで逃れ、果てたのでしょう。新雪の上に点々と遺された血痕が、雄弁にそれを物語っていました。

エゾシカと白鳥で書いたとおり、エゾシカはあまりに増えすぎたため、’98年度から猟期も捕獲頭数も緩和されました。好き嫌いを別にすると、エゾシカ猟自体に問題はありませんが、撃ち殺したエゾシカの死体を放置することで、別の大きな問題が持ち上がってきています。


鉛の銃弾と銅の銃弾急所を一撃でしとめて、死体をちゃんと回収出来ればいいのですが、傷ついたエゾシカがハンターから逃れて、このように死んでしまうと、他の野生動物の餌となります。身体に入った鉛の銃弾は殺傷力を増すため、先を潰しながら体内を進み、銃創の回りの肉に鉛を残していきます。

死体を見つけたオオワシやオジロワシ等の猛禽類は傷口から食べ始め、鉛をたっぷり含んだ肉は彼等に鉛中毒をもたらします。
右の写真は銅の銃弾と鉛の銃弾です。野生動物の鉛中毒を防止する銅弾は’98年度からモニターによって一部使われていますが、価格や流通量の問題からまだ広くは使われていません。

猛禽類が死んでいるのは、単に鉛のためだけではなく、他の有害物質が蓄積されているのが原因とも考えられています。いずれにせよ食物連鎖の頂点にいる生物の悲しい宿命といえるでしょう。本来魚食のオジロワシがエゾシカの死体を食べるほど、環境が悪化しているのでしょうか?


マガモの夫婦水辺で憩うマガモの夫婦です。彼等は草食動物でありながら、猛禽類と同様に鉛の被害者になり得ます。

水鳥達は砂利を飲み込み、砂のうに貯めて消化の補助に使います。彼等は散弾銃によってばらまかれた鉛玉を砂利と間違え、飲み込んでしまいます。哺乳類は鉛を飲み込んでも消化に砂のうを使わないので、簡単に中毒にはなりませんが、鳥類は体温も高いため、中毒になりやすいのです。

その結果、飛ぶことはおろか、歩くことも出来なくなり、鉛中毒に苦しみぬいて、死ぬことになります。そして、その死体を猛禽類、カラスが食べると・・・・。

この夫婦の砂のうにも鉛玉が入っているのかもしれません。


散弾の鉛玉私は使いませんが、釣り人も「ガン玉」という散弾のような形の鉛のおもりを使います。これも釣り糸やゴミの放置と同様今、野鳥達の驚異となっています。

私は釣り場で色々な野生達の死体を見た事があります。厳しい自然の中で生きている彼等にとって、死は私たち人間が思っているよりずっと身近にあり、突然にやってくるものでしょう。
しかし、本能に従った行動が中毒死という結果につながるのは理不尽としか言いようがありません。

今、北海道の野生達にはあまりにも敵が多すぎるようです。

鉛中毒についてもっと詳しい情報は 「ワシ類鉛中毒ネットワーク」

上の随筆は’99年1月30日にUPしました。'99年4月21日の新聞に、2001年の
春から鉛のライフル弾の使用が禁止されることになった旨が書かれていました。
また、鉛の散弾についても2000年の秋から使用禁止になります。一歩前進しました。
動物園にて
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