活動宮

金牛宮:雄牛座(Taurus)

二区分:女性宮
三要素:不動宮
四素子:地の宮
支配星:金星
タロット照応:法王


雄牛座の神話

 河神【イーコナス】の美しい娘【イオ】と、大神【ゼウス】が、レルネ川のほとりで戯れていた所、【ゼウス】の妻である【ヘラ】に見付かってしまいます。
 大神【ゼウス】は、浮気現場を隠す為、【イオ】を美しい牛の姿に変身させ、その場を乗り切ろうとしますが、目聡い【ヘラ】は、その牛を自分のモノとして手に入れ、百の目を持つ怪物に見張らせます。
 大神【ゼウス】は、何とか【イオ】を救い出そうとして、伝令神【ヘルメス】に、怪物の討伐を依頼。ヘルメスは羊飼いに化け、草笛を以って怪物を眠らせ、見事その首を討ち取ります。
 その後も【イオ】は、嫉妬深い【ヘラ】に、執拗に嫌がらせを受けますが、その度に【ゼウス】が助け舟を出し、最終的に【イオ】は、エジプト王と結婚すると言うハッピーエンドを迎える事となります。
 後に、大神【ゼウス】の恋の記念として、牛の姿が天上に掲げられました。

別説

 先の説に登場した【イオ】の子孫である【エウロパ】が、海辺の牧場で草摘みをしている所、大神【ゼウス】の変化した美しい白い牛が現れます。
 【エウロパ】は気を許し、牛の背に乗った所、瞬く間に天上へと駆け上がり、遠くクレタ島を目指しました。
 大神【ゼウス】は、美しい娘【エウロパ】を、自分の花嫁に迎えようと、攫った訳です。
 クレタ島に着いた後、【エウロパ】の身を守る為、青銅の巨人【タロス】や、猟犬、槍等を与えます。
後に【エウロパ】は、有名な【ミノス王】や、【ラダマンチェス】【サルペードン】と言った子供を生み、ギリシアの世に送り出したとされます。
 後に、大神【ゼウス】の恋の記念として、牛の姿が天上に掲げられました。

(※【イオ】に手を出し、その子孫である【エウロパ】に手を出し。大神【ゼウス】は、かなり多情な人格として知られます。・・・迷惑な事ですねぇ。(^^;   )

解説

 金牛宮:雄牛座が持つ基本的な性質は、【成長する生命力:繁栄の過程】と言ったモノで、堅実に前進・成長して行く、生命の基本原理を暗示する。
 【白羊宮】では、誕生する瞬間の爆発的なエネルギーが見られたが、そのエネルギーが大地に根を下ろし、着々と大きくなって行く【行き続けて行く事】の原理と見る事が出来るだろう。
 【牛】と言うと、緩慢で無骨なイメージを持ちがちだが、神話でも見て取れるように、【美し】と言う要素を持っている。それは、支配星である【金星】の影響から見ても、妥当な印象であると言えるだろう。確かに緩慢なイメージは健在で、ゆっくりと穏やかで、堅実と言う部分も強いが、同時に、勤勉で、且つ、底力のある【前進力】も暗示している。
 実際に、占術で扱う際の解釈は、【富】【豊かさ】【豊饒性】【暖かな母性】【豊かな大地】【根気強さ】【豊かな感性】【美的センス】等。影響する範囲としては、【労働】【財力】【富】【家庭】【芸術】【恋愛】等。
 牡羊座の神話伝説により引き継がれる特性は、母性的な【美】。
 また【白い牛】と言うイメージから、【純真無垢】と言う特性も見て取れる。

 【区分】【要素】【素子】のバランスからして、【消極性】【内気】【保守的】【頑固】【現実的】【堅実】【慎重】【忍耐】等の意味合いも出て来る。

 支配星の【金星】は、金牛宮:雄牛座を突き動かす【原理的なエネルギー】であり、全体的な【影響力】として残る。その内側にあって、そのエネルギーの個性表現として、金牛宮:雄牛座の特性が生まれると考えられる。
 支配星【金星】が象徴するフィールドについては、【惑星解説】を参照の事。

 春分から約一ヵ月後の夜明け時に、地平線より現れる星宮が、【金牛宮】である。
 実際に現れる星座は、今現在【魚座】であるが、占星術の基本として考えられる【星宮】は、【仮想天体】、若しくは【影響領域】と言う位置付けであり、春分の夜明けの地平線を基準に、30度〜60度に渡っての範囲が、【金牛宮:雄牛座】の場となる。

法王

 タロット【法王】との照応について。
 【法王】は、伝統的に【祝福】や【古いしきたり】【相談者】と言った意味を持つが、【金牛宮:牡牛座】の持つ特性と、素直に合致する意味を、あまり持たない。唯一の持つ共通点は、金銭面(財運)に良い影響を持つと言う部分。
 タロットが成立し、オカルティズムと結び付けられた後、占星術の知識から輸入する形で、【美的センス】【育成】【頑固(古さ)】等の意味が拡張される事となる。
 タロットの鑑定時に、どちらの意味を引き出すかは、やはり焦点となっている部分や、他のカード配置によって異なる。星の影響を暗示するカードが多ければ、【金牛宮:牡牛座】の意味を引き出せるようにすると良いだろう。


獅子宮:獅子座(Leo)

二区分:男性宮
三要素:不動宮
四素子:火の宮
支配星:太陽
タロット照応:剛毅

獅子座の神話

 ギリシア神話の英雄【ヘラクレス】が、妻子を殺してしまった贖罪として成した【12の難業】の一つ目。【ネメアの谷の獅子退治】が由来とされている。
 この【ネメアの獅子】は、ギリシア神話上最強最悪の怪物である【ティフォン】と、ギリシア神話の怪物の母とも呼ばれる【エキドナ】の間に生まれた。
 英雄【ヘラクレス】は、棍棒を用いて、この獅子を追い詰め、怪力にまかせて締め上げ、窒息死させてしまう。その後、獅子の毛皮を剥ぎ、【ミケナイ】へと持ち帰る事で、獅子退治の証拠とした。
 倒された【ネメアの獅子】は、英雄【ヘラクレス】の偉業を称える為に、神々の手によって、星座へと上げられた。

解説

 獅子宮:獅子座が持つ基本的な性質は、【百獣の王】としての【王権】と、【王権】を手にするモノとしての【男性性】である。それは【権威】と、その内在的な意味である【力】の行使。その両者を背景に持ち得る、【不屈の意志】と、堂々とした【自信】が、獅子宮:獅子座の基本的な性質と言えよう。

 さてしかし、【獅子座】の神話は、英雄【ヘラクレス】の難業に添って展開されるも、数ページ程度の極めて短い物語である。しかも、この神話に出て来る【獅子】は、英雄の【敵】として現われ、最後には退治される運命にある。
 この神話から、【獅子座】の持つ特性を見出すのは、一見困難に見えるだろう。
 この物語の背景を探る。
 まず【ネメアの獅子】の素性について。
 父は、ギリシア神話上、最強最悪の怪物である【ティフォン】。その身長は、頭が星々に掛かる程に巨大で、左右の腕を伸ばせば、西洋・東洋の両端に達すると言われている。肩からは、100個もの竜の頭が生え、背には巨大な翼を持ち、腿から下は、大蛇の姿と言う、正にとんでも無い怪物だ。
 対して、母である【エキドナ】は、ギリシャ神話に登場する多くの怪物達を生み出した【怪物の母】である。上半身は美女の姿だが、下半身は獰猛な大蛇の姿をしていると言う。
 この二人の怪物から生まれた【ネメアの獅子】は、正に、【怪物としてのエリート】であると言えるだろう。
 【ネメアの獅子】は、神話上の例に洩れず、【不死身の化け獅子】とされている。その毛皮は鋼よりも強く、攻撃しても傷一つ付かない。故に、英雄【ヘラクレス】は、獅子の退治に難儀する。
 最終的には、外側から傷付けるのを諦め、絞め殺す(窒息させる)と言う手段で、この獅子を退治するのだ。
 西洋の精神的な伝統の中で、【獅子】は【王権】の象徴として。或いは【権威】【勇気】【力】の象徴として考えられている。同時に、人間の持ち得る【激しく、凶悪な感情】として考えられる場合もある、
 この二つは、時に【一つのモノの、二つの側面】として捉えられる。
 【権威】や【勇気】や【力】は、時に【怒り】や【憎しみ】を生み、【嫉妬】と【暴力】を生み出す。
 英雄【ヘラクレス】は、その【英雄】としての資質を磨く上で、外側に反映された【怒り】や【憎しみ】と戦う必要があったのだ。
 そして、【不死身】の【百獣の王】は、その【傲慢さ】故に、【絞め殺される】事になる。
 外に強靭な毛皮を持っていても、外側からの圧力に、内部が耐え切る事が出来ず、滅びてしまうのだ。

 これら【ネメアの獅子】の神話から読み取る性質は、勿論、獅子宮:獅子座にも反映される。
 基本的には【不屈の意志】と【堂々とした自信】に満ち溢れるが、往々にして【傲慢】になり、他者を見くびる事がある。
 また、獅子宮:獅子座の特質を持ちながら、自分よりも優れたモノや、自分を認めないモノに対しては、激しい【怒り】と【憎しみ】を抱き、それは【嫉妬】と【暴力】に反映する場合がある。
 この【猛獣としての獅子】を克服した時、英雄王としての【獅子=ヘラクレス】の資質を手に入れる事が出来る。
 獅子宮:獅子座の特質を持つ人は、その力の反面、自分の内側で、自分自身との不断の戦いが行われていると言える。

 獅子宮:獅子座の特質を持つ人は、【不屈の意志】と【堂々とした自信】を持っているが、それは自立したモノでは無い場合も多い。その為、他者からの賞賛を求め、或いは、他人の意志では動かない強情さを示す場合もある。
 【猛獣としての獅子】を手懐けた場合、【獅子】は穏やかにまどろみの中に入る。この【眠れる獅子】は、普段、堂々として穏やかで、周囲から自立し、力を振るう事は無いが、【獅子の身内】を害する敵が現れると目を覚まし、【守る為】に力を振るうようになる。

 獅子宮:獅子座の持つ特質である【王権】は、底から滲み出るような【カリスマ性】にあり、時にその資質を発揮し【リーダーシップ】を取るようになる。
 支配性【太陽】の影響も強く、吸引力があり、集団の纏まりを助ける【重し】としての力もあり、明るくポジティブな影響を、周囲に与える。

 集団の中にある事を、比較的好む為、逆に、プライベートな部分では、センチメンタルで、ロマンチストな面も見られる。

 【区分】【要素】【素子】のバランスからして、【積極的】【行動的】【指導的】【保守的】【頑固】【短気】【意志強固】等の意味合いも出て来る。

 支配星の【太陽】は、獅子宮:獅子座を突き動かす【原理的なエネルギー】であり、全体的な【影響力】として残る。その内側にあって、そのエネルギーの個性表現として、獅子宮:獅子座の特性が生まれると考えられる。
 支配星【太陽】が象徴するフィールドについては、【惑星解説】を参照の事。

 春分から約四ヵ月後の夜明け時に、地平線より現れる星宮が、【獅子宮】である。
 実際に現れる星座は、今現在【双子座】であるが、占星術の基本として考えられる【星宮】は、【仮想天体】、若しくは【影響領域】と言う位置付けであり、春分の夜明けの地平線を基準に、120度〜150度に渡っての範囲が、【巨蟹宮:蟹座】の場となる。

タロット【剛毅】との照応について。
 【剛毅】のカードは、伝統的に【力】と【勇気】を主要テーマとする。しかも、その【力】とは、【他者を打ち倒す力】に焦点が当たる訳では無く、【外部からの圧力に屈しない力】として考えられている。或いは【無敵】。これは【全ての敵を打ち倒す力】では無く、【誰をも敵とは思わず、誰からも敵と見做されない】状態の暗示だ。敵としての他者を想定した【比較的な力の強弱】では無く、全ては自分自身に焦点の当たる【精神の力】と言えるだろう。
 タロットカードの歴史から見ても、【剛毅】のイメージに大きな変化は無く、中世期の【枢要徳】剛毅の一つとして、【勇気】の美徳が人格化されたモノと考えられている。
 現代のタロットカードでは、白い無垢な衣を着た女性が、獅子の顎に手を添えている様子が描かれている。この時の【獅子】は、ギリシャ神話にある【ネメアの獅子】と同様に、獰猛で、荒れた獣と見て良いだろう。それは、危険な獣だが、女性は穏やかな表情で、その獅子を手懐けている。顎に添えた手にも、力は入っておらず、優しく触る程度。神話では、英雄【ヘラクレス】の怪力を持って締め上げていたが、タロットカード【剛毅】では、敵として倒すのでは無く、自分の内側の要素として、優しく向かい入れるべきだと教えている。
 この時の【女性】は、人間の心の中核である【セルフ(=自己)】と見做される。それは、伝統的に【太陽】で象徴され、獅子宮:獅子座の支配性と結び付く。
 占星術において【惑星】は、個人の持つ根源的なエネルギーで、その表現形態として、各【星座】が作用する。つまり、大本は【惑星】であり、【星座】は、【惑星のエネルギー】の表現ツールでしか無い。
 心理学的に言えば、【セルフ(=自己)】が心の中核で、社会と向き合う為のツールとして【エゴ(=自我)】を用いているのと同じである。
 時に【エゴ(=自我)】が一人歩きし暴走するように、獅子宮:獅子座の性質も一人歩きして暴走する事がある。この時【ネメアの獅子】のように、猛威を振るうようになる。しかし、【セルフ(=自己)】が、【エゴ(=自我)】を管理する事により、より適切な力が発揮されるように、【太陽】に獅子宮:獅子座の性質が根付く事により、【権威】【勇気】【力】を、より適切な形で発揮する事が出来る。
 【剛毅】のカードは、獅子宮:獅子座の性質との取り組みを教えるカードと評価する事が出来るだろう。

天蠍宮:蠍座(Scorpio)

二区分:女性宮
三要素:不動宮
四素子:水の宮
支配星:冥王星(火星)
タロット照応:死神

蠍座の神話

 蟹座の【カルキノス】や、獅子座の【ネメアの獅子】のように、ギリシア神話の中で【端役】として登場するのが【蠍】である。
 この【蠍】は、猟師【オリオン】を刺し殺した功績により、天上へと上げられる事になるが、その経緯は次の通り。
 猟師【オリオン】は、海神【ポセイドン】と、【ミトス王】の娘【エウリュアレー】の間に生まれた男児で、巨大な体格と、類稀なる美しさを持っていた。また、その豪腕により、巧みな狩猟を行う事でも有名で、彼自身、自分の腕前に過大なる自信を持っていたとされる。
 そんな【オリオン】は、月の女神、狩猟の女神である【アルテミス】と交流を持ち、彼女に向かって『地上のあらゆる獣を仕留めてみせる』と豪語したと言う。この傲慢な口振りを聞いて怒った大地母神【ガイア】は、一匹の【蠍】に命じて、【オリオン】の下へ送り込んだ。
 【蠍】は、女神の命じた通り、狙い違わず一刺しで【オリオン】を殺してしまう。
 その功績を称えられ、大地母神【ガイア】の手によって、【蠍】は天上を上げられる事になる。
 当の【オリオン】は、女神【アルテミス】の願いによって、同じく天上へと上げられる事になるが、自分を一撃で倒した【蠍】を恐れ、【蠍座】が地平に隠れる時のみ天上へと上がり、【蠍】が天上へと這い上がる時には、地平に隠れてしまうと言われている。

別説
 上記の説が一般的だが、猟師【オリオン】の物語には、関わって来る神々に関して、色々な説が唱えられている。
 猟師【オリオン】の母は、大地母神【ガイア】であると言う説。
 猟師【オリオン】の殺害を命じたのは、天空の母【ヘラ】であると言う説。或いは、月の女神【アルテミス】の兄である、太陽神【アポロン】であると言う説等。

 また【蠍座】は、天上に昇った後には、ギリシア神話の中で、多少なりの出番を得ている。
 太陽神【アポロン】の息子である【フェートン(パエトン)】が、父にねだって【日輪車(太陽を運ぶ馬車)】を代わりに運転する事となった。
 太陽の道を、厳密に進まなければならない難しい仕事なのだが、【蠍座】を通過する際に、毒針の尾が振れた事に驚いてしまい、手綱の狂った【日輪車】が暴走してしまう。
 太陽が大地に近付き過ぎて、人々を焼き黒くしてしまったり、作物を焼いてしまったり、或いは、大地から遠ざかり過ぎて、大地を極寒にしてしまったりと、地上と神界を騒がせてしまう。
 大神【ゼウス】は、事の次第を見かね、【日輪車】に向けて雷を落し、【フェートン】もろとも打ち落としてしまう。
 【フェートン】の遺体は、エリダヌス川に落ち、水のニンフ達の手によって、河畔に葬られたと言う。

解説
 天蠍宮:蠍座の基本的な性質は、その強力な【毒針】によって象徴される【死】と、その対極にある【生】。そして、その矛盾した二つを結び付けようとする、ある種【哲学的】な心理構造にある。
 それは【思索的】と言うよりも、もっと【感性的】なモノであり、他者には理解し辛い性質となって現れる。より深く、深刻で、熱烈な感情と共に、その矛盾した二つを結び付ける傾向にある為、そこには強烈な【死生観】が生まれる事がある。時に、【死】と【生】の間に連続性を見出し、その境界線が曖昧になる為、【自殺】や【他殺】と言ったキーワードとも縁深くなって来る。この場合の【死】は、【消滅】では無く、ある種の【永遠の生】と見做すのだろう。
 【死】と【生】のテーマを感覚的に追求して行くと、【性(SEX)】のテーマが浮上して来る事があり、【恋愛】や【性】に対しても、一般とは違う【深み】の中での価値観が表出して来る。

 神話において、怪力無双を誇る【オリオン】を、一撃の下に刺し殺してしまう【蠍】。
 或いは、【日輪車】の手綱を握った【フェートン】を脅かせ、結果的に【死】へと追いやった【蠍座】。
 これは、どのような人物の前にも必ず訪れる【死】の象徴として見る事が出来る。巧みな狩猟技術も、豪腕も、美しさも。或いは、権力等も、【死】の前には一切無力であり、それらは、限られた時間の中で生きる人間にとって、一時の夢のようなモノとも言えるだろう。
 いずれは必ず失われるモノ。
 【蠍】が象徴するのは、そう言った【有限のモノ】を奪う力である。
 【蠍】に属する人間にとって、【有限の生】は、興味の対象とはならない。むしろ【死の後の永遠】にこそ、【生命の神秘】を見出し、それを希求する。
 【死のベール】の向こうに、【生の真髄】を求めるのが、【蠍】の性質とも言えるだろう。

 これらの性質は、心理学的な方向性から見ると【心の深み】【深層心理】【無意識】に対する興味と、それに対する探求心と捉えられる。
 その領域では、【死】と【生】のような相反する性質が混在し、【矛盾】を超越した形で広がっている。それは【蟹座】にとって、真に【生の秘宝】であり、同時に【死の超越】として認識されているのだろう。
 【蠍座】の支配星である【冥王星】は、現実的な【死の世界】であると同時に、心理的な【深層】をも象徴し、普段我々が意識的に避けてしまう【向こう側】に、【蠍座】が足を置いていると言う背景が想像出来る。

 【蠍座】の性質は、常に【深み】へと向いている為、その強烈な感情が外側に表現される事は少ない。その為、周囲の人々から見ると、何を考えているのか解らない傾向にある。内側で激しく動く感情が外側に向かう時、他者から見ると、常軌を逸した言動へと発展する傾向にもある。
 【蟹座】には、到底辿り着けない【死と生の秘宝】を求め続ける持久力があり、そのテーマに意識を集中させる【探究心】がある。
 これらが現実的な力となって現れる時、心理学や医学、神秘学の研究、哲学、先進科学等への適性となって表現される。

 【区分】【要素】【素子】のバランスからして、【消極的】【従順】【頑固】【保守的】【内向的】【感情的】【執着】等の意味合いも出て来る。

 支配星の【冥王星】は、天蠍宮:蠍座を突き動かす【原理的なエネルギー】であり、全体的な【影響力】として残る。その内側にあって、そのエネルギーの個性表現として、天蠍宮:蠍座の特性が生まれると考えられる。
 支配星【冥王星】が象徴するフィールドについては、【惑星解説】を参照の事。

 秋分から、約一ヵ月後の夜明け時に、地平線より現れる星宮が、【天蠍宮】である。
 実際に現れる星座は、今現在【乙女座】であるが、占星術の基本として考えられる【星宮】は、【仮想天体】、若しくは【影響領域】と言う位置付けであり、秋分の夜明けの地平線を基準に、30度〜60度に渡っての範囲が、【天蠍宮:蠍座】の場となる。

タロット【死神】との照応について。
剛毅 【13番 死神】のカードは、その名前の通り【死】と、対を成す【生】を主題としており、【蠍座】の持つ特性と、多くの部分を共有している。【死神】のカードの中には、幾つかの死体が描かれ、伝統的に【王冠】等の権威を暗示するモノが、死神の足元に転がっている場面が多い。これは、力や権威が【死】の前に無力である事の暗示として、【オリオンの死】に通じるモノがある。但し、【蠍座】の場合は、【死の後の永遠】や【死と生の深み】に焦点を当てるのに対し、【死神】のカードは、むしろ、【死と生のサイクル性】や【表裏のとしての生死】に焦点を当てていると言って良いだろう。【蠍座】には【死の哲学】があるが、【死神】のカードには【死のルール】があり、そこに感情や思考の加わる余地は無い。ある意味【死神】のカードは、【死】に対してかなり【ドライ】な捉え方をしていると言えるだろう。【死神】のカードは、【死】をもたらすシステムであり、【死】そのものの暗示である。それに対して【蠍座】は、【死の哲学】であり、【死】を享受する人の精神の有り方であるとも言える。

宝瓶宮:水瓶座(Aquarius)

二区分:男性宮
三要素:不動宮
四素子:風の宮
支配星:天王星(土星)
タロット照応:星

水瓶座の神話

 約4000年前、春分の夜明けの水平線には、牡羊座が輝いていた。その為、牡羊座が12星座:12宮の基準点とされ、残りの11星座・11宮の順列が定まっていた。
 その時代から約4000年。約72年に一度ずつズレる【歳差】の影響によって、現在では、春分の夜明けに、水瓶座が輝いている。
 その為、一部の業界では、今の時代を【水瓶座の時代(アクエリアンエイジ)】と呼んだりもする。
 では、その【水瓶座】の神話とは、一体どのようなモノなのだろうか。
 ギリシア神話において、【水瓶座】は給仕の神【ガニメーデス】の担ぐ水瓶であるとされている。
 【ガニメーデス】の出自は、諸説様々で、トロイアの王子【トロス】の息子、或いは、【ラーオメドーン】の息子等と言われている。
 いずれにせよ、トロイア王族の血を引いた少年であったと言うのが、一般的な説のようだ。
 【ガニメーデス】は、金色に輝くとまで称された、絶世の美少年であり、その噂は隣国を越え、神々の世界まで達したと言う。
 その噂に興味を持った大神【ゼウス】が、放牧をしていた【ガニメーデス】を攫い、神界に連れ込んでしまう。
 この際、ゼウス自らが【鷲】の姿を取って攫ったとも、ゼウスの使いである【鷲】に命じて攫ったとも言われており、この部分も諸説様々である。
 尚、この際の【鷲】が、【鷲座】となったと言われている。
 さて、【ガニメーデス】を天界にまで連れ込み、一目見て気に入ってしまった大神【ゼウス】は、常に身近な場所に置く為に、神々の酒宴において、不死の酒【ネクタル】を給仕する役に抜擢する。
 誤解が多いのだが、【水瓶座】は、水瓶だけが描かれた星座では無く、少年が水瓶を抱えている星座である。この星座の描写は、給仕神【ガニメーデス】が、不死の酒【ネクタル】の入った瓶を担いでいる姿なのだ。
 大神ゼウスは、【ガニメーデス】を攫った代わりに、黄金の葡萄と、神速の馬を、父親に与えたと言われている。

 ※大神ゼウスの行った事は、現行法で言えば【小児誘拐】或いは【人身売買】に当たる為、決して真似をしてはならない。(確実に実刑となる)

解説
 宝瓶宮:水瓶座の基本的な性質は、少々理解し難い所がある。
 四大において【風】に分類される性質と、星座の成り立ちから深い関連性を持つ【水】の性質が絶妙に交じり合い、不可思議な特性を発揮している。
 【風】の性質の影響から、少々神経質で、ストレスを溜め易い部分がある。また、精神的な自由を求める傾向も強い為、束縛するモノに対しては、強い抵抗を見せる場合がある。
 しかし同時に、【水】の性質からも影響を受ける為、強い感受性を持ち、同情心が強い。親切であり、友情心が強く、寂しがり屋でもある。
 【水】の性質は、概ね【人】との関わりの中に至福感を見出し、同時に苦しみも併せ持つ。人と接する事によって、自分の精神を精錬して行く特性を持つが、【風】の性質に比べると、コミュニケーションに長けているとは言えない。
 【風】の性質は、コミュニケーションの技法に長ける反面、人間関係に冷めた感覚を持っている為、本来それ程同情心は強くない。また、コミュニケーションの中で、集団の束縛を嫌う傾向も持っている。
 ある部分において矛盾する性質を、一つの【雛形】の中に収めているのが、宝瓶宮:水瓶座だと言えるだろう。

 宝瓶宮:水瓶座は、その名称から【水】のイメージが極めて強い。その為か、多くの人が、この星宮を【水】に分類されるモノだと勘違いしている。
 しかし、この星宮を正しく理解する為には、【水瓶】を抱えた【少年】の星座であると言う事を再確認する必要があるだろう。
 例えば、【アクエリアス】とは【水を運ぶ人】を指す言葉でもある。
 【運ぶ】と言うのは、【風】の代表的な機能であり、この星宮の【主体】であるとも言えるだろう。そこに、運ぶ対象として【水】が加わる。
 つまり、【水】によって象徴される、情緒や想い等を【伝達】する事を旨とした星宮なのだ。

 これは、人間にとって非常に難しいテーマであると言えるだろう。
 人間関係の問題の大半は、コミュニケーションに関わる【言動】に依存する。
 言葉は勿論の事、文章であっても、行動であっても、自分の意図する事を伝えようと、何らかの伝達手段を用いる時、相互の誤解等が生じ、トラブルが発生する。
 自分の気持ちを、適切な伝達手段で伝え切るのは、とても難しい事なのだ。

 宝瓶宮:水瓶座は、そのテーマにチャレンジする。象徴的に言えば、そのテーマに最も強い性質を持っているとも言えるが、現実的に考えれば逆で、そのテーマに最も悩まされ易い星宮と言えるだろう。
 但し、弛み無くそのテーマに取り組む為、進化が早いと言う性質も持つ。

 【水瓶】は、時に複数の液体を、一緒に投入する事が出来る。ゆっくりと撹拌する事によって、元々別のモノだった液体が、一つの液体となって【水瓶】に留まる。
 このように、宝瓶宮;水瓶座は、錬金術を行うかのように、異なるモノを一つに結び付け、新しい形を作り出すと言う特性も持っている。
 これは、無から作り出すと言うよりも、既存のモノを組み合わせて、より高度な成果をもたらす形式と言って良いだろう。

 例えば、【水瓶座の時代(アクエリアンエイジ)】と呼ばれる現代の事を考察して見ると面白い。
 テクノロジーの業界で、【マルチメディア】と言う言葉が良く使われる。
 【マルチ】とは【複数・多角的・多面的】と言う意味で、【メディア】とは【情報媒体】の事を指す。つまり、複数の情報媒体が、有機的に組み合わされている状態を【マルチメディア】と呼ぶ。
 例えば、通常のコンピュータは、ディスプレイにおいて静止画や動画を見て、スピーカーからは音楽(音)を聴く事が出来る。また、プリンタからは書類を出力する事が出来る。このように、複数の情報媒体が、一つの機能の中に組み込まれている状態が【マルチメディア】なのだ。
 これは、元々異なる【媒体】を、一つのシステムの中に組み込み、有機的に結び付けると言う点において、【水瓶】の中で交じり合った【一つの液体】と同じような性質があると言える。
 また、各種【メディア】は、本来【情報の発信者】の意図を、的確に相手に伝える為のツールである。そして、人が最も伝えたいのは、【発信者】の描くイメージ、情緒、想い等。それらを伝える為には、様々なメディアを駆使しなければならない。
 現代の【マルチメディア】とは、正しく、宝瓶宮・水瓶座の主旨に、最も近いのでは無いだろうか。

 宝瓶宮・水瓶座は、自分の内側に存在する情緒的な面を、積極的に外側へと発信する為に、自分が持ち得るあらゆる【情報素材】を駆使して行く。また、新しい【情報発信】の素材を求めて、体は、積極的に外側に向かって行く。
 同時に、未成熟な部分の為に、コミュニケーションの障害の多くを抱え、苦悩する。
 そして、試行錯誤を繰り返し、壁を一つ一つ乗越えながら、進化を続けて行く。

 こうした性質から、適職は【情報技術関連】【科学技術関連】【演技、舞台技術、演出関連】【文芸関連】等。また、美術・芸術にも優れた才能を発揮する事が多いが、独自のモノを一から作り出す事が出来ない為、写真や園芸等、既存のモノを有機的に演出して行く方法で、美的センスを表現する。新しいモノを求める性質から、旅行ジャーナリスト等、移動しながら働く仕事にも興味を持ち易い。

 【区分】【要素】【素子】のバランスからして、【積極的】【行動的】【頑固】【反抗的】【社交的】【知性的】【神経質】等の意味合いも出て来る。

 支配星の【天王星】は、宝瓶宮:水瓶座を突き動かす【原理的なエネルギー】であり、全体的な【影響力】として残る。その内側にあって、そのエネルギーの個性表現として、宝瓶宮:水瓶座の特性が生まれると考えられる。
 支配星【天王星】が象徴するフィールドについては、【惑星解説】を参照の事。
 ※古典的配属では、【土星】が支配性とされている。現在では、副主星とされるが、それでも依然として、この星宮に影響を与えている。

 秋分から、約4ヵ月後の夜明け時に、地平線より現れる星宮が、【宝瓶宮】である。
実際に現れる星座は、今現在【射手座】であるが、占星術の基本として考えられる【星宮】は、【仮想天体】、若しくは【影響領域】と言う位置付けであり、秋分の夜明けの地平線を基準に、120度〜150度に渡っての範囲が、【宝瓶宮:水瓶座】の場となる。

タロット【星】との照応について。
剛毅 【17番 星】のカードは、大アルカナのカードの中でも、印象が曖昧とした部分が多いカードと言える。伝統的には【希望・才能・可能性】等のキーワードが与えられるが、それぞれ実態の無い【概念】のようなモノであり、具体的にどのような影響を与えるかを理解するのが難しい。ただ、実践的な意味合いで言えば、このカードは良い意味での汎用性に優れ、成功の保証は無いモノの、概ね良い影響をもたらす。
ユングの心理学では【コンステレーション】と言う言葉が使われる。これは元々【星座(星同士の繋がり)】を意味する言葉なのだが、心理学においては、心的な要因が結び付く事を意味する。本来、一つのモノとは言えない【要素】が、互いに密接に結び付く事によって、ある姿を描き出すと言う点で、【水瓶】の作用に近い部分があるだろう。事実、【17番 星】のカードも、この【コンステレーション】が引き起こすと言う影響があると考えられる。この点で言えば、【星】と【宝瓶宮:水瓶座】の関連性は深いと言えるだろう。また、【星】の構図も、水瓶座に似通っている。人物が、水瓶を携えていると言う点で言えば、その性質の近さを伺える事が出来るだろう。但し、【宝瓶宮:水瓶座】では、一人の少年が水瓶を抱えているが、【星】のカードでは、一人の女性が、二つの水瓶を携えている。この点は、起源の異なりに由来するか、或いは、後世のカード解釈によって形作られた構図である為、その部分での差は大きくなって来る。