黄道12宮(ゾディアック)

 西洋の占星術で扱われている様々な象徴や思想は、西洋のオカルト的伝統の全般に渡って影響を与えている。
 これは、西洋に限った事では無いだろう。
 洋の東西を問わず、世界中の至る土地、そこに根付く文化にとって、【天文】の影響は計り知れない。
 地上で生きる人間にとって、四季等の【時】を知るのに【暦】の存在は必要不可欠で、その為には【天文学】の発展が欠かせない。また同時に、その正確さの追求の為に【数学】が発展して行く。
 人類は、ここに人智の及ばない偉大なる変化と、ある種の法則を見出し、それはごく自然な流れの中で、宗教的信仰・思想へと発展して行く事になる。
 ついには、長い歴史の中で、精神的伝統として成立し、現代にまで、大きな影響を及ぼすに至る。

 さて、このサイトで取り組まれるのは、主に【タロット】。若しくは、もう少し裾野を広げ、西洋のオカルティズムが対象となる。
 西洋の占星術で扱われる象徴や思想は、西洋の各種占術や、魔術等でも扱われ、その業界ならではの扱い方をされている。

 これは、西洋占術の中でも極めて若い【タロット】の業界でも例外では無い。

 この場では、【タロットに関わるモノ】として、西洋の占星術で用いられる【12星座】について解説して行こう。

 まずは、基本的な知識から解説を始める。

 【12星座】とは、【黄道】と呼ばれるエリアに存在する12個の星座の事である。

 【黄道】とは、地球を中心に考え、天体において【見かけ上、太陽が通る道】の事だ。
 地球を中心に考えた場合、それは360度を囲むリング状のモノとして考える事が出来る。
 そのリング状のエリアに定められた12個の星座が、占星術の上では、重要な象徴となる。

 占星術を行う上で、生年月日により、個人の持つ【星座】が決まったりする訳だが、これは、生まれた日に【太陽】が何座に位置しているかで決まる。
 太陽は、約一ヶ月を掛けて、一つの星座を通過し、約一年を掛けて、12星座の全てを巡回し、初めの星座に戻る。
 さてしかし、これは【占星術】の上での話であって、実際の【天文学】から考えると、若干の差異が存在する。

 天文学的に考えた場合、この12個の星座は、360度を均等に30度ずつ分けた形で配置されている訳では無い。
 また、12星座は、約一年で一巡するが、完全に365日の周期を持っている訳では無く、年々少しずつズレているのだ。

 現代において、牡羊座の時期(3/21〜4/20)に太陽が位置するのは、何と水瓶座であったりする。実に二つもズレているのだ。

 この様に、実際の【星座】の位置と、占星術で用いられる【星座】の位置には、差が存在している。

 この二つを混同しないように、オカルティズムの世界では、別々の呼び方をする。

 実際の星座については、そのまま【星座】と呼び、占星術等で扱われる場合は【星宮】と呼ぶ。
 【星宮】は、春分点を基準として、黄道を均等に30度毎のエリアに分け、各星座の意味を割り当てて行く。
 【黄道12宮】と呼ばれる時は、実際の星座とその位置の事を指すのでは無く、占星術等で扱われる、エリア分けされた黄道と、そのエリアを支配する星座の影響力と考えるのが正しい。

 タロット等において扱われるのは、この【黄道12宮】の方だ。

 こうなると、12個それぞれの呼び方も変わって来る。
 その呼び方を、下記に紹介しておこう。

牡羊座 牡牛座 双子座 蟹座 獅子座 乙女座
白羊宮 金牛宮 双児宮 巨蟹宮 獅子宮 処女宮
ハクヨウグウ キングウグウ ソウジグウ キョカイグウ シシグウ ショジョグウ

天秤座 蠍座 射手座 山羊座 水瓶座 魚座
天秤宮 天蠍宮 人馬宮 磨羯宮 宝瓶宮 双魚宮
テンビングウ テンカツグウ ジンマグウ マカツグウ ホウベイグウ ソウギョグウ

 さて、これら12宮は、タロットカードにも関わって来る。
 18世紀になって、オカルト的側面を開花させたタロットカードは、その体系を整え・発展させる為に、色々な研究者の手によって、古い精神的伝統と結び付けられた。
 12宮の場合、大アルカナ22枚に配当される事になる。
 カードと12宮とが結び付く事によって、4000年以上の歴史を持つ占星術から知識や知恵を借りる事が可能となり、カードの解釈に深みが増す事になる。
 勿論、元々別物である占星術とタロットを結び付ける事をナンセンスとする流派もあり、また、結び付け方にも幾つかの異論があるが、あくまでも【有益に使う】事を目的とした上では、効果的な手法の一つと言えるだろう。

タロットと12宮の結び付き方は以下の通り。

白羊宮 金牛宮 双児宮 巨蟹宮 獅子宮 処女宮
W 皇帝 X 法王 Y 恋人達 Z 戦車 [ 剛毅 \ 隠者

天秤宮 天蠍宮 人馬宮 磨羯宮 宝瓶宮 双魚宮
]T 正義 ]V 死 ]W 節制 ]X 悪魔 ]Z 星 ][ 月

 タロットと12宮を結び付ける上で、現在でも決着のついていない問題がある。
 【8−11変換】と呼ばれる問題で、タロットの順番と、12宮の順番の間に生じる不整合を、如何に解決するかと言うモノだ。

 マルセイユ版等を初めとする、【古典的タロット】では、8番に【正義】のカードが、11番に【剛毅】のカードが存在する。
 しかし、この順番で12宮を配置して行こうとすると、天秤を持つ【正義】に【獅子宮】を、獅子が描かれる【剛毅】に【天秤宮】を配置せねばならず、何と無く具合が悪い。
 【まあ、あまり気にせずに・・・】と考え、そのまま使用する人も居たようだが、細かい事が気になる人も居たのだろう。
 【白羊宮】【金牛宮】【双児宮】・・・・と順当に当て嵌まっていた所を、【獅子宮】と【天秤宮】の順番だけ入れ替えてしまう人も居たし、逆に、【正義】と【剛毅】の順番を変えてしまう人も居た。

 【正義】と【剛毅】の順番を変えてしまった人物の代表が、アーサー・エドワード・ウェイト。このサイトでも準拠として紹介されている【ライダー版タロット】の作成者だ。
 事実、ライダー版のタロットでは、8番には【剛毅】が、11番には【正義】が描かれている。これは【マルセイユ版】等を代表とする【古典的タロット】とは大きく異なり、今では【近代的タロット】【魔術的タロット】等と呼ばれる事がある。

 【8−11変換】の問題は、結局【12宮の順番を変える】か【タロットの順番を変えるか】と言う、二つの考え方のぶつかり合いだった。

 さてしかし、このどちらにも納得出来ない人物も居た。
 どっちを変えるにしろ、一箇所だけ順番が変わるのは、どうにも気持ちが悪い。
 そこで、【もう一箇所も変えてしまおう】と言うアイデアが誕生する。
 このアイデアは、アイレスター・クロウリーと言う魔術師によって提唱され、今では【ダブルループ理論】とか呼ばれている。
 この理論が提唱されてから、一箇所だけの順番を変えてしまう手法を【シングルループ理論】と呼ぶようになる。

 さて、【8−11変換】の問題と、それにより発生した【シングルループ理論】【ダブルループ理論】は、【12宮】と【タロット】の結び付きを考える上で重要な要素ではあるが、如何せん複雑な問題である為、これ以上の解説は控える事としよう。
 また、別の機会を持って、じっくりと論じて見たいと思う。

さて、もう少し12宮の基礎的な解説を続ける。

 12宮には【男性宮】【女性宮】と言う二分類が存在する。これを【二区分】と呼ぶ。
 同時に、【火の宮・水の宮・風の宮・地の宮】と言う四分類が存在する。これを【四素子】と呼ぶ。
 また【活動宮・不動宮・柔軟宮】と言う三分類が存在する。これを【三要素】と呼ぶ。

 この基礎解説の後に、各星宮個別の解説を行う訳だが、その際には【三要素】で括って解説して行こう。

 また、各星宮には【支配星(ルーラー)】と呼ばれるモノが存在する。その【支配星】については、今後解説予定の【惑星】のページをご参照頂こう。

 この【支配星】の配当については、【古典式】と【現代式】の二つがある。
 【古典式】と言うのは、古くから占星術で扱われる【太陽・水星・金星・火星・木星・土星・月】の古典的な七つの惑星を使用する方法である。
 【現代式】と言うのは、古典七惑星の他に、近代発見された【天王星・海王星・冥王星】の三つを加えて使用する方法である。(※近年の再定義により、冥王星は、太陽系の惑星としての地位を失っている。)
 ここの解説では、その両方の【支配星】を紹介するモノとする。

 さて、以上を以って、12宮の基礎的な知識解説を終了としよう。
 実際には、もっと奥深い部分があり、占星術の観点からすれば、不足この上無い事かと思う。しかしこの場では、あくまでも【タロットと関わるモノ】として、軽く頭に入れておけば良いのであって、更に詳しく知りたいと思われる方は、占星術に関する専門的良書をあたって頂きたい。

活動宮 不動宮 柔軟宮

付加論考