『0』

名称 『フール』 『THE FOOL』 『愚者』
主キーワード
 魂の旅路・純真無垢・始まり
          無知なる故に成長を期待されるもの
          好奇心は夢を叶える・好奇心はネコを殺す
旅人の祈り
 『私は故郷を後にします。魂の声が私を旅に導きました。私はその旅に必要なものを袋で背負い、風のままに歩みます。歩み行き、主の御業を知る喜び。私は歩みを止めません。主よ、私の未知なるもので、私の行く先を満たしてください。どうか、困難を前に、世界への興味が失われませんように。』

  ウェイト版
 22の大アルカナの始めに描かれるのは、軽装の旅人。若者である。
 彼は原始の霊。生まれたばかりの無垢な体であり、これから人生という時間、宇宙という空間を旅し始める。彼は生まれたばかり故に、あらゆる事にまったくの無知であり、またそれ故に、これからの旅で得る多くの体験と知識を喜んで吸収する。

 示唆 人生に意義ある旅・可能性多き若者・未熟ながら未来有望な若者・赤ん坊(誕生)・学びを喜ぶ学徒(成績は悪いかもしれないが)

 彼の瞳は左側虚空を見つめている。左側は内面・過去・精神世界の方向である。虚空とは即ち、人の切望する全くの故郷としての世界である。彼は旅立ちの場に居ながらにして、既に彼が辿りつこうとしているゴールを見ている。しかし、実際そのゴールに至るまでは様々な危険と困難が待構えている。どうやら彼はそれには無頓着のようだ。
 彼の前には断崖絶壁がある。彼はその危険に気が付いていない。

示唆 純粋な理想・純粋な夢・希望・精神的な高潔さ・精神の故郷への切望・旅に出たい、今居る場所から逃げたい・先走り・危険に気が付かない

 彼は手に杖を持ち、その先に鞄をぶら下げている。杖は人間が用い出した、原初の道具にして万能具。杖はつくものだが、彼はそれに捕らわれない用い方をしている。物は使い方によって様々な効果をもたらす道具となるのだ。先入観が無いからこその、ものの活用の仕方。鞄の中には何が入っているのだろうか? 旅に必要最低限のもの。しかしそれは同時にあらゆるもの。先ずは四大具だろうか。彼は旅に必要なものは常に携えているのだ。しかし彼の性格上、自分の持っているものを把握しているのか怪しい。
 左手には白いバラを持っている。希望と無垢の性質。神性も意味しているようだ。
 足元には白いイヌが彼に向かって吼えたてている。イヌは世間や組織的なものを意味し、吼えたてるのはつまり警告。
 しかし彼は、未知を与える教師に対しては勤勉な学徒だが、未知を危険と警告し、未知から隔てようとするものには反抗的。むしろ耳を貸さない。

 示唆 旅の備えあり・しかしそれに気付かない・先入観がない・道具・物は使いよう・警告に耳を貸さない・好奇心が危険を招く・希望・無垢・神性

 彼はこれから旅に出る若者である。よってその場は出発地で、故郷。しかしその場は同時に終着地点、帰るべき故郷でもある。その場は同じ場所だが、旅立ちの前と後ではその意味が違う。宇宙を旅し終えた彼にとって、故郷は旅立つ前より素晴らしいものになっているのだ。旅を終えた彼は最早、旅立ち以前に比べれば未熟ではない。成熟した完成人である。しかしながら、故郷に戻った瞬間、彼は新たな旅の始まりに過ぎないと知る。その旅においてはまた彼は未熟なのだ。彼は何度も旅立ち、そして故郷に帰る。同じ事をしているのではない。同じように見えて、帰ったときはいつも一段階上に居る。

 示唆 旅立ち・故郷へ返る・新しい段階へ・旅立ちの死(FOOLは時に死を意味する)スパイラルアップ

 彼はどんな人だろう? 先ず年下の男性(女性の可能性もある)・可愛い・快活・わだかまりが無い・単純・天然・放浪癖がある・素直・良く感動する・好奇心旺盛・ちょっとバカ・無頓着・不精
 もし彼の性質が悪く現れるのなら、奇抜・奇怪・協調性無し・自分勝手・狂気・愚考

 人間関係を組むにして良い友になろうが、しかしグループ意識や群れる性質が無い。何時の間にか何処かに行ってしまったり、急に音信不通になったりもする。でも嫌っているわけではない。
 もし恋人にするなら、実に純愛。ストレート。多少恥ずかしがりや。束縛を嫌い、束縛しない。しかし好奇心旺盛で放浪癖があるので、恋愛や人生の自由性に理解が無い人には辛い恋人になる。
 仕事関係。行動的な部下となる。自分の判断で動くので、勝手な行動も目立つ。定型の仕事には向かない。クリエイティブな仕事には向いているが、企業的なところには向かない。部下にしては扱いにくい。但し、彼の性質を良く理解する上司が居れば、その才能は遺憾無く発揮されよう。実力は大器晩成。
 金銭。無頓着なので、金銭感覚殆ど無し。一杯使ってしまったり、全然使わなかったり。収入は不安定。時に無職。
 健康。とても健康。事故に注意。病気にはならないと思うが、しかし、このカードは死をも意味し、安らかながら、突発的な死を示唆することもある。

 精神性や将来への希望を論点に置くのであれば、とても魅力的で良いカードと解釈できるが、トラブルは付き物。
 社会性や人間関係など実質的な問題に論点を置くなら、かなり注意すべきカードとなる。
 正位置の解釈は、このカードの美徳の面が中心に現れ、逆位置の場合は悪徳が現れる。