『U』

名称 『ハイ プリエステス』『女教皇』『女司祭』
   『THE HIGH PRIESTESS』 
主キーワード 女性原理(処女性)・潜在意識・二極性原理
         神秘の門・学問・高潔・純潔・冷静・冷徹
秘教の学院において学ぶべきは、自分自身の姿です。貴方は全てを知っていると思っていても、、それは全体のごく一部でしかありません。貴方が学ぶべきものは、広く、深く、広大で、目に見えるが捉え難く、触れることはできるが掴み難い。そして最も大切なものは常に隠されているのです。しかし怖れずに進みなさい。叩けよ、されば開かれん。この神秘の門は・・・』

 ナンバー『U』を割り当てられるこのカードは、神秘の門を静かに管理する女性。高位者の声を翻訳する女預言者。叡智の図書館を管理する司書。そして全ての人の潜在意識に住まう、女教皇。
 彼女は、物事の秘められた場所に居て、深く、高く、隠された神秘的なものと、それを求めるものとの間を仲介する存在である。彼女の言葉は、一見夢のように曖昧だが、しかし先見の明を持った、真実の智恵を与えてくれる。
 彼女は永遠の処女であり、永遠の片思いの相手でもある。

 示唆 神秘的・内在・夢見・智恵・学問・秘密・潜在意識・潜在能力・処女・片思いの相手

 彼女は、広大な海の上に座を構え、その上に座っている。海とは人の潜在的な意識の空間を示し、水は感情・情緒・愛などを指し示している。海の広さの如く、また深さの如く、人間の潜在意識は広大だが、彼女はそれを確かに司っているのだ。
 彼女の足元には三日月があり、冠には満月がある。海は、月の重力の影響を大きく受けており、海の満ち欠けによって、その在り方へ変化させる。同様に、大半が水によって構成される人間の体、そして感情・情緒・愛・潜在意識も、この月の影響を大きく受けている。彼女は、この広大な海の象徴でもありながら、それを支配する月の象徴でもあるのだ。

 示唆 潜在意識の深み・感情の変動・愛の盛衰・月齢の支配(ライフサイクル)・月経

 彼女は手に『TORA』(トーラー)と書かれた書物を持っている。しかしその書物の半分は、彼女の服の下に隠されている。この『TORA』とは、ユダヤ教の律法書を意味する。それは神の意志が書き記されたものであり、宇宙の創造などが書かれた真理の書物であるが、我々が知る範囲は、その書物の半分でしかなく、もう半分は彼女によって隠されているのだ。彼女はその書物を持っていながら、その書物に目をやっていない。書物の内容を全て知っているのだ。しかし、それは彼女の口から語られるとは限らない。
 彼女は神秘と真理の体現でもある。彼女は背後のベールを支える二つの柱の間に座っている。黒い柱は『神の試練』を意味する『ボアスの柱』であり、宇宙に存在するあらゆる負の極性を持つものを象徴している。白い柱は『神の愛(慈悲)』を意味する『ヤキンの柱』であり、正の極性を持つもの全てを象徴している。この二つの柱によって神秘のベールは支えられており、彼女はその間に均衡として、または対立するものの緊張として存在しているのだ。彼女は神秘学の教師でもある。

 示唆 秘密主義・神秘学・真理(理論的)・二極性原理・均衡・緊張・教師・学院

 彼女は学問に秀でており、学ぶこと、理解することに長じている。それは水の性質に由来する知性でもある。学んだ知識は水に溶けた塩の様に一体化し、そして時に結晶化する。その水は潜在意識と言う大海に流れ込み、永久的に保存されるのだ。
 彼女は内向的である。人とは離れ、一人で自分の司るものと向き合う。彼女はとても繊細なので、ちょっとした変化の流れに敏感であり、ストレスを溜めてしまう。静かな水面に石を投げ込むと、波が立ち、瞬く間に波紋が広がるようである。彼女の内的な均衡が破れると、感情が乱れ、傷付いてしまう。

示唆 理解力・学習・吸収・非揮発性・内向的・孤独・繊細・ストレス・波紋状の影響力・感受性豊か・鬱

 彼女は神秘的な視力の持ち主でもある。彼女の直感は良く当り、予言・予知・正夢の力を持っている。しかし彼女の存在は非常に曖昧でもある。暗闇の中、月の光だけで物を見るように、または夢の中でものを見るように、霧に包まれた中でちらりと姿が見られるような存在なのだ。私達が彼女のことについて知っていることは、全体のごく一部であって、全てを知っていると思ったとしても、必ず隠れた真実がある。

 示唆 直観力・予言・予知・占い・夢・幻・暗中模索・五里霧中・自分の知らない事実

 さて、彼女は具体的にどんな人物だろう。年齢不肖、一人身の男性又は女性。物静かで美しい。華奢で色白。人付き合いは良くなく、友達も少ない。物腰が柔らかで、優しい人物だが、言葉数が少ない。コミュニケーションは苦手で下手。やや冷たい所があり、生真面目。
 表には見せないが信念があり、ある意味で頑固。受動的でインドア派。
もし、彼女の性質が悪く現れると、人を嫌い、冷徹。感情の起伏が激しく、ヒステリック。理論先行型、盲信、現実逃避をはかる。

 もし彼女を友人とするなら、とても落ち着いた関係となる。遊ぶ場所は静かなところで、会話は少なく、会話があるとしたら知的な話題である。神経質なので気を使うことになるが、良く知れば彼女の奥深さ、神秘的な魅力、その奥に隠された深い優しさを見つけることが出来る。あまり外に出たがらず、動きたがらないので、誘っても断わられる場合が多いし、しつこく誘えば嫌われてしまうだろう。心に思っても言葉に出さないので、すこしイライラするかもしれない。感受性が豊かなので、ちょっとしたことで傷付いてしまう。
 もし恋人にするなら、とてもデリケートな付き合いになるだろう。デートに誘うにしても、彼女が嫌がらない所を探すのは一苦労のはずだ。コミュニケーションの取り方も慣れるまでは難しい。彼女の全てを知りたいと思っても、そうそう簡単には知ることが出来無い。感受性豊かなので、すぐに傷付いてしまう。相手の心の支えになってあげることが重要だ。ゆっくりと静かに着実に付き合っていけば、しだいに彼女のことが分かってくるだろうし、彼女も少しずつ秘密を教えてくれるはずだ。
そもそも恋愛に関しては、彼女は片思いの相手でもある。幻の恋人。
処女。彼女の貞操は固い。純潔で穢れが無い。

 仕事関係で見るなら、優秀な上司、優秀な部下。事務仕事や知的な仕事に長じており、その才能が高く買われる。しかしコミュニケーション能力が低いので、会社では浮いた存在になりやすく、また受動的なので、仕事を押し付けられやすい。先見性に富んでおり、予測不能であるようなトラブルを前もって知り、回避する能力がある。職業は本来、学問に関わるものが向いている。教師や司書。又は神秘的な仕事も良い。尼僧・占い師など。接客業や営業などの業種は殆ど無理である。
 金銭。お金を使用する目的が余り無いので、入手したお金は自然に貯金にまわってしまう。収入は、本人の勤勉な仕事ぶりに反映して安定していると言えるが、それほど多くの給与を貰うことはない。基本的に無欲、入らず、使わず。ギャンブルなどは、特殊な予知能力の現れでたまにやると勝つことがあるが、基本的に向いてはいない。
 健康。肉体面でかなり虚弱であると言える。また感受性が豊かなので、精神面での健康も安定している方ではない。月の運行の影響をかなり受けるので、女性の場合は女性特有の病気などに注意。精神の病、特に鬱などに掛かりやすい。ストレスの影響で体に害が及ぶこともある。肩・腕・手に対する事故にも注意。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、隠された事が明らかになったり、潜在的な能力に目覚めたり、先見の明を得たり、曖昧とはしているが良い兆しを示唆する。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、学問の才能や勤勉さ。コミュニケーション能力が無いことによる問題などを示唆する。
 正位置でも逆位置でもこのカードは比較的曖昧で、周囲ののカードによって良くも悪くも解釈できてしまう。それはこのカードが極めて受動的であり、他の影響力の下に変化を示すからである。
 逆位置が出た場合は、精神の不安定や、先が見えない状況などを示唆することが多い。