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名称  『ジャッジメント』  『JUDGEMENT』  『審判』

主キーワード 復活・再生・覚醒・啓示・結論・最終的決断・救済

詩句 【審判の日】
【その日、貴方は己の前に立たされる。そして、こう問われるだろう。
『貴方は私に恥じぬ生き方をしたか?』】

 ナンバー『]]』を割り当てられる【審判】のカードは、有限時間の最後に訪れる審判の情景。全ての過去を清算する為に用意された裁きの場。あらゆるモノが、そのあるべき場所へ帰る瞬間であり、生と死が、その人生に応じて全うされる瞬間でもある。大天使の吹くラッパの音に、これまで眠っていたモノは全て目覚め、隠れていたモノ達は、白日の元に顔を晒す。この時の後に来る永遠時間を迎える上で、全ての準備が整えられる瞬間なのである。

 【審判】のカードには、巨大な大天使がラッパを吹き鳴らしている情景が描かれている。そのラッパは、白地に赤十字の描かれた旗によって飾られ、全ての人の目に付く様に形でたなびいている。地上では、裸の人々が箱の中から立ち上がり、両手を広げて天上を仰いでいる。

 この情景は、キリスト教の聖典である【新約聖書】の最終章【ヨハネ黙示録】に描かれているモノである。
 最後の日。偉大なる七人の大天使がラッパを吹き鳴らし、それに応じて種々の災いが地上を襲うと同時に、また、死せる人々全てが生き返り、再臨したイエス・キリストの前に召しだされ、最後の審判を受けると言うシナオリだ。
 キリスト教徒にとって、日々の信心と、戒律の順守、様々な善行は、全てこの日を迎える為の準備として行われている。
 キリストを信じ、戒律を守りながら、その教えを実践したモノは、白い衣を与えられ、神の住まう永遠の楽園に参入する事が出来るとされ、逆に、キリストを否定し、悔い改めず悪行を繰り返した人々は、サタンと共に、永遠の地獄に突き落されると信じられている。

 その真偽はここで問うまいが、西洋の精神的伝統の一部として、【最後の審判】の情景は、現代でも根強い影響力を持っていると言えるだろう。

 さて、タロットカードの中では、どのような扱いがなされ、また、どのような意味合いを持つのか。

 そもそも、タロットを含めたあらゆる占術は、キリスト教からすれば、全て異端であり、サタンの所業となされている。にも関わらず、その情景が、タロットの重要なポイントとして扱われている理由は何であろうか。
 この部分を突き詰めると、タロット史への言及が欠かせぬ部分ではあるが、大きく省くとする。
 敢えて言うのであれば、【最後の審判】と言うイメージが、キリスト教だけのモノとは限らず、殆どの宗教、若しくは、殆どの人間心理の中にある情景だらかと言う事が出来るだろう。

 まず、大天使に注目して見よう。
 【ヨハネ黙示録】では、七人の御使いがラッパを吹き鳴らすとだけ記され、天使の名前については言及が無い。しかし、伝統的に大天使ガブリエルを筆頭とした天使達と考えられる傾向にある。
 タロットに描かれている大天使は、この【ガブリエル】と目され、マリアの受胎告知等の重要な局面で、神の意思を伝えるメッセンジャーとしての役割を見て取る事が出来る。
 【ガブリエル】は、天上からラッパを吹き鳴らし、【時】が来た事を伝え、生者、死者の全ての目を天上へと向かわせる。そして、救済の印である十字の旗を掲げ、全ての人に印象付ける。
 大天使の羽は、その他のカードで描かれている大天使達と同様に赤く染まり、神の意思を遂行する情熱と、強い意志とを表現している。
 彼の吹くラッパは、単なるメロディでは無く、心に直接響き揺るがす声であり、魂を呼び起こし、目覚めさせる言葉でもある。

キーワード 最後の時・決算・審判・啓示・目覚め気付き・救済・強い信仰心

 地上では、灰色の肌色をした人々が、裸のまま立ち上がり、天上を仰ぎ見ている。
 彼らは、一様に箱の中から立ち上がっているが、肌の色からも解るように、元々は死んで、埋葬された人々である。
 大天使の吹き鳴らすラッパの音を合図として、全ての死せる人々が蘇り、再臨するイエス・キリストの前に立つ。
 これは、キリスト教徒達が固く信じる教えの一つだ。
 キリスト教徒にとって、この瞬間こそが全ての終着点であり、目的であると言っても過言では無いだろう。
 同時に、隠されたモノ、時の彼方に忘れ去られたモノも白日の下に晒され、キリストが正邪の判断をする材料ともされる。
 また、キリストの教えが広まる前に死んだモノは、遠く異郷の地にて、キリストの教えに触れる事無く死んだモノ達は、復活の後に猶予を与えられ、キリストに帰依するチャンスを得る事が出来るとされる。
 一般的に【審判】のカードは、最終的な結果を得る瞬間とされるが、実際には多少の猶予が与えられ、過去の過ちや罪を改め、より正当な答えと近付く為のチャンスが与えられる事が多い。
 但し、そのチャンスが与えられても、必ずしも正当な答えに辿り着く保障がある訳でも無く、同じ過ちや罪を犯す場合は、今度こそ、その不当な行いに対する最終的な報いが成される事になる。

キーワード 復活・再生・再チャレンジ・挽回・清算・報い・賞罰

 【審判】のカードの性質には、【]T 正義】のカードに似ている部分が多く存在する。
 双方共に、過去の行いに対する結果として、その賞罰が与えられる訳だが、この二つのカードの決定的な違いは、【過去の復活】と【総合的な結末】の二点と言えるだろう。

 まず【正義】には、【過去の復活】と言う特性は存在しない。過去の行いに対して、その正当・不当が判断され、その報いが与えられる。対して【審判】のカードは、過去に失われた様々な事柄が復活し、目の前に並べられ、それをもう一度吟味する機会を与えられる。忘れてしまった過ちが蘇ったり、諦めてしまった機会が再び訪れ、勇気を試される場合もあるだろう。
 【正義】の判断には、ある種の【偏り】が存在し、特定の分野に絞った審判が下される傾向があるが、【審判】の判断は、全時間・全空間・全分野に及ぶ為、善きにつけ、悪しきにつけ、全てを含めた【総合的な審判】となる傾向にある。それは、複数の事柄の総合的な結末である為、全く予期せぬ結果となる事もある。
 また、これも二つのカードによって異なる傾向として、【正義】のカードは、主に実際的な言動に焦点が当てられ、その報いも、現実的な出来事として起こる反面、【審判】のカードは、言動以外にも、その想いや意思にも焦点が当てられ、その報いも、必ずしも現実的な出来事としてでは無く、その人の精神や心、魂に及ぶ場合があると考えられる。
 更に、【正義】のカードは、過去の清算ではあるが、決して結末では無く、その先に過去を加味した新たな余地が与えられるが、【審判】はその物語の結末であって、その先に続くモノは無く、過去が加味されない全くの新しい道となる傾向にある。
 正に【審判】は、最後のチャンスであり、最終的な結末を象徴するのである。

キーワード 総合的な結果・内的な報い・ラストチャンス・最終的な結末
        思い出す・見つかる・再会する

 さて、【審判】のカードにおいて復活する人々は、伝統的に父・母・子の三人を主としている。これは、必ずしもキリスト教の伝統として扱われるモノでは無く、勿論の事、【ヨハネ黙示録】に記されている事でも無い。
 むしろ、異教的な考えが含まれていると考えて良いだろう。
 一つの解釈として、錬金術的な考え方が成される場合がある。
 父を太陽、若しくは火や硫黄の象徴と捉え、母を月、若しくは水や水銀の象徴として捉える場合、二人の間に立つ子供は、哲学者の石(賢者の石)や黄金として捉える事が出来る。
 それは、陰陽・善悪等の二元に別れたモノと統合し、完全なる人間として結実した状態や、心理学的に言えば、【自我】の支配を離れ、内なる【自己】によって心が纏め上げられた状態とも言う事が出来るだろう。
 【審判】の瞬間は、錬金術における最後の【変容(メタモルフォーゼ)】のステージと判断する事も出来るかも知れない。
 確かに、【ヨハネ黙示録】によれば、【審判の時】は、人間が肉体を持った上で復活し、完全となり、永遠の命を得る瞬間であるから、錬金術的な考えからでも、重要な場面として捉える事が出来るだろう。

キーワード 変容(メタモルフォーゼ)・完成・二元の統合・自己の目覚め

 さて、もう少し【審判】の意義について考えて見よう。
 【審判の時】は、有限世界を生きる我々人間に、必ず訪れる【最後の瞬間】の象徴でもある。
 神とそれに付随するモノ以外には、全てモノに始まりがあり、また、全てのモノに終わりがある。
 人は、概ね【終わりの時】を恐れる傾向にあるが、決して逃れる事が無い以上、それを見据えた過程を過ごす必要があるのかも知れない。
 【終わりの時】は、本来全てが成就し、全うされる瞬間でもある。
 そこには、有限の時間を生きた全てが集約されているとも言えるだろう。
 これは、何も人間の一生に限った事では無い。
 あらゆる仕事であっても、人との出会い・別れの中にあっても、また恋や恋愛においても例外では無いだろう。
 全てのモノに終わりがある。哀しい別れが有る。
 その【最後の時】があると言う前提の下で考えれば、今の瞬間や、過去の過程、そして、これから歩み得る未来について、その貴重さが解るのでは無いだろうか。
 【審判】のカードによって象徴される瞬間は、結局の所、その人が、その一瞬一瞬をどのように過ごしたかが問われるのである。
 その瞬間、満足感を感じるのは、自分自身に対してであり、また同様に、後悔を感じるのも、自分自身に対してなのだ。

 さて、実践の上で【審判】のカードを解釈する場合は、【正義】のカードと同様に、過去に注目する必要があるだろう。
 過去に位置するカードを確認したり、また、クライアントの話を聞いたりして、【審判】がどのように作用し得るかを考えると良い。
 カード単体で、具体的な現象を把握するのは、比較的難しい作業となるが、単に主題に対しての【リベンジ】が可能となると判断しても差し支え無いだろう。
 殆ど無い事ではあるが、【結末】と言う意味で、やはり【死】の暗示となる場合がある。その場合は、周囲に意味を補強する様なカードが加わるので、見逃さないように注意する事。
 また、【悪魔】のカードとの相性は、すこぶる悪い。
 逆に、四つの枢要徳を象徴するカード【勇気=剛毅】【賢明=隠者】【正義=正義】【節制=節制】とは、特に相性が良いと判断する。

人間関係 全体的な人間関係において、それぞれの立場が明確化され、自分の立ち位置がハッキリして来る。隠していた想い等も表面化し、それを起因とした問題も解決の方向へ流れて行く。時に、劇的な変化として影響力を与える場合もあるが、それが事態の乱れとして続く事は無く、徐々に人間関係の中に秩序が構築されて行く。また、古い友人や過去の恩師との再会等も考えられる。いずれにせよ、正位置など性質が良い状態で出た場合は、過程はどうあれ、良い方向へと収束して行く傾向がある為、吉兆と判断して良い。逆に、逆位置など性質が悪く出た場合は、現在の問題が解決せず、不義理な状態が続く傾向がある。死神や正義とは異なり、原則として【結末】を迎えなければならない瞬間である為、ここで解決出来なかった事は、やり直しが効かない場合が多く、慢性的な問題となりかねない。但し、性質の善し悪しに限らず、結末を迎えるまでに若干の猶予がある為、その間の行動によって、事態の改善に努める事も可能と判断する。

恋愛関係 片思いの恋愛である場合、単純に【結論】を暗示する事が多い。但し、どのような結論が出るかは、その他のカードとのバランスを見て判断する必要がある。【審判】が、良い性質を持って出たとしても、必ずしも【恋愛の成就】を意味する訳では無いので注意が必要。出会い等を求めている場合、恋愛に発展し得る(片思いで終わらない)出会いがある可能性の暗示として判断する。また同時に、過去に交際の有った人や、過去に出会った人との再会があり、それが恋愛として動き出す可能性としても捉える事が出来る。既にお付き合いをしている場合、現在の関係性に結論が出て、新しいステージへと進む前触れとして判断する事が出来る。周囲のカードとの関係性を読みつつ、例えば【結婚】と言うステージに進展するか、関係の解消としての結論に至るかを判断する。運命性の強いカードである為、このカードが影響する恋愛には、重要な局面が多いと判断して良い。

仕事 無職の場合、就職活動をしているのであれば、ある程度自分に合う職が見つかり、働き始める暗示として捉えて良い。但し、無職でありながら、働く意志を持たず、就職活動をしていない場合は、それが【結論】と見做される場合がある為、今後の生活に多大な悪影響を及ぼす可能性がある。現在働いており、転職等を志している場合、その判断は正しいと言えるだろう。現職場における、現ステージの役割を終える暗示と判断する事が出来る為、タイミングとして正しく、また、新たなステージに進む切っ掛けとしても相応しい。仕事上の問題を抱えている場合は、その問題の解決が近い暗示と判断する事が出来る。また、何かしらの企画に携わっている場合、その企画が【結果】を出す事が出来る吉兆として見る事も出来る。【審判】のカードの他に、【塔】や【剣の10】等の破壊的終局のカードが出ている場合には注意が必要となる。企業レベルでは、倒産等の暗示として見られるし、また、個人レベルではリストラの暗示として見る事も出来る。
性質が悪い形で出る場合は、【結論を得られない】と判断し、問題が長期化される可能性を考える。この際、場合によっては、その問題から意識的に遠ざかる等の対処を検討すると良い。

健康 【審判】には、復活と言う意味合いがある為、病気を患っている場合には、回復の兆しとして見る事が出来る。但し、周囲のカードとの関係性に注目する必要があるだろう。例えば【法王】との組み合わせであれば、医療の力によって回復すると判断し、【太陽】や【恋人達】との組み合わせであれば、自然治癒力の増大による回復と判断する。また【女帝】や【星】との組み合わせであれば、生活スタイルの見直しによって改善が期待出来る。逆に【結論】と言う意味合いから、【死神】や【塔】【剣の10】との組み合わせが生じた場合、生命の危険を暗示する事がある。何度も言うように、【審判】には多少の猶予がある為、治療方針に見直しを掛け、対処する事が肝要と言える。また、特に自覚した不調が無い場合や、それ程重く無い病気を患っている場合は、今後どうなると言う事は判断し難いが、万難を排し、健康診断を受けるように勧めると良い。これは、何らかの潜在的な病気を持っていると言う意味では無く、健康を気にするに重要なタイミングであると判断する。
健康を害する可能性がある場所としては、胃や腸等の消化器系等。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、精神的、心理的、霊的な目覚めと自覚。人生における転機と、過去の清算。自身の変容。信仰への目覚めと、魂の救済。希望の再興等を意味している。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、過去に諦めた計画の再始動。過去との再会。現在抱えて居る問題の解決。現在取り組んでいる事柄の結果を得る。ステージの変化等を示唆する。
 正位置の場合、物事が結論に導かれ、過去と再度向き合い、総清算が行われる事を示唆し、また、それに伴う自身と環境の変化に焦点が当たる。逆位置の場合は、明確な【結論】が得られず、その曖昧とした状態が【結論】と認識され、修復が効かなくなってしまう恐れがあり、それに伴う自身と環境の苦闘に焦点が当たる。