『]T』

名称 『ジャスティス』 『JUSTICE』 『正義』

主キーワード 正義・公平・公正・因果応報・バランス・厳格・厳正
          均衡・社会的モラル・ルール・律法・裁判・秩序

『己の信念に基づき、正義を行なった人物が、正義の前に召し寄せられた。彼は、その正義に見合う報酬を得たが、同時に厳しく裁かれた。彼が何故かと問うと、正義はこう言った。』【汝は小さすぎる。正義を行なう者ではなく、正義その物となれ】

 ナンバー『]T』を割り当てられるこのカードは、善と悪とを分け隔てる選別者。全ての有様を見続け、それに報酬と報いを与える評価者。厳正で、全くミスの無い完全な審判。真理の成すところである均衡を体現し、全てを裁く裁判官である。
 彼女の第一原理は【全体の秩序】であり、それは全く公平・公正な形で表現される。そこには、個人的な温情などは無く、個人的な怨恨なども無い。全く機械的で、厳正な機能であり、全体の視野から働く為、小さな者には一見不公平にも見える。
 【正義】とは、決して【悪を弾劾すること】では無い。【正義】が欠けると【悪】に陥るのであって、【正義】は【悪】を裁く立場には無い。【法】の定めるところに従い、自分の成すべきところを成すことが【正義】なのである。全体の秩序を保つ為に、成すべきことを成し、行なってはならないことは行なわない。全体のバランスが崩れないように働くことが【正義】なのである。
 【正義】と【悪】を見定めるのは、【正義】と呼ばれる【審判と報いの神】である。これはとても混乱しやすいだろう。
 我々人間は、【正義】を行なうことが出来ても、【正義】そのものになることは出来ないのである。先ほども書いたように、人間の成す【正義】とは、【法】に従った公平・公正な行ないの事であり、決して【裁き】の位置に立つことは無い。裁きを行なうのは【正義】と呼ばれる、【宇宙の機能】であり、【真理の作用】なのである。人は時に、それを【神】と呼び、【運命】とも呼ぶ。
 【運命】とは、単なる未来の計画表ではない。過去に起こった全ての出来事に応じた結果を導き出す、限りなく公平・公正な【因果律】の作用なのである。
 【運命】は、人間の一つの行ないに対し、それの善悪を見定め、相応しい報いとなる結果を用意している。【運命】ほど厳正な裁きを下せる機能は、他には無いだろう。

 示唆 公平・公正・厳正・秩序・均衡・報い・報酬・裁き・宇宙の必然的機能・真理の作用・因果律・運命の裁き

 カードに描かれているのは、右手に諸刃の剣を掲げ、左手に天秤を持つ女神である。彼女は、二本の柱の真中に鎮座している。このカードのテーマは、二者の均衡にある。対立する二つのものの均衡を取り、バランス良く共存させる。天秤は魂を測り、その善と悪とを測る。この時の善とは、全体的な利益であり、正に秩序をもたらす行為を指すと考えるべきである。悪とは、利己的な目的の為に、秩序を壊す行為である。個人の善意により、悪人を匿ったとしよう。天秤は不安定にユラユラと揺れる。確かに匿うこと自体、善行と言えるかもしれないが、それはあくまでも個人的な裁量であり、全体のモラルを傷つける行為でもある。彼は【正義】の前で、善意に報酬を、しかし秩序を壊したことには厳しい報いを受けなければならないだろう。測るのは天秤の役目であり、裁くのは剣の役目である。彼女の右手に掲げられた剣は諸刃の剣であり、報いと報酬を象徴する。決して日本刀のような片刃であってはいけない。ここでも対立する二つ(ツイン)の象徴が見られる。
 彼女は、人の罪を弾劾する告発者ではない。同時に、罪を擁護する弁護人でもない。彼女はその中立にあり、双方の言い分を考慮に入れ【法】の定めるところによって、どちらに感情を傾けることなく裁く、裁判官なのである。それは彼女が二本の柱の真中に姿で象徴されている。
 彼女はその有する権限によって、人に【義務】【権利】【資格】を与える。人は無条件で【権利】や【資格】を与えられるわけではない。また、何の見返りも無く【義務】を課せられることもない。人は与えられた【義務】を果たすことによって、【権利】を主張出きる【資格】を得るのである。
 人は、責任と言う【義務】を果たさねば、自由と言う【権利】を主張できる【資格】は得られない。報道関係者は、プライバシーの保護と言う【義務】を果たさねば、言論・表現の自由と言う【権利】を主張できる【資格】は得られない。法を守ると言う【義務】を果たさねば、法の下に守られると言う【権利】を主張できる【資格】は得られない。
 昨今の人々は、【義務】を果たさずして【権利】を主張する傾向にある。このカードの教える所によれば、それは秩序を壊す、紛れも無く【悪】なのである。

示唆 対立する二者・モラル・義務・権利・資格・中立・仲裁

 【正義】のカードは、物事のバランスを保つ為に、即時的な裁定を下すカードでもある。ゆっくりと消化し、解決するカードではない為、裁定が下った後には、様々不可解な点や不満が残ることが多い。また【正義】のカードは、曖昧な解決を好まない為、対立する二者に存在する美徳のどちらかが切り捨てられることもある。時に無慈悲なカードと言って良いだろう。例えば、人の【生命】は、代えが利かない貴重な物だが、罪の償いにその【生命】を要求することもある。実に緊迫したカードだと言って良いだろう。【正義】のカードで何かを勝ち得たとしても、その裏で大きなものを失ってしまうことは少なくない。
 罪を犯さないでいられない人間にとって、【正義】とはかなり恐怖に満ちたものだと考えられる。事実【正義】の主張は、戦争を引き起こし、人の命さえ奪うことがある。
 我々が【正義】に支配される場合、時に尊厳を失う。我々は【正義】と向かい合うものとして、【正義】と和解することが大切になってくるのだ。
 つまり我々は【正義】に支配され【正義】を行なうのではなく、【正義】そのものを体現出来るようにならなくてはならない。
 【損失の正義】 時に【正義】のもたらす均衡は、尊厳を失う。
 【利益の正義】 尊厳を失うことの無い【正義】を模索することが寛容なのである。

示唆 即時的解決・不可解な解決・正義の代償・尊厳の問題・損失の正義・利益の正義・正義との和解

 さて、人物カードとして見る場合、具体的にどんな性質をもって現れるだろう。
 物事に対して客観的な見方を示し、時に個人が感じられないような、緊迫した人物。若しくは、周囲とのバランスを取る為に、必要以上に八方美人な人物。
 【正義】のカードは、三権分立で言えば【司法】の立場にある。法に従って裁くのであり、【正義】には参照すべきルールがある。人物として現れる場合、彼は個人としての意見よりも、既存の知識体系をもとにすることが多い。前例を尊重するため、多くの情報を身につける。博学な人物が多いと言って良いだろう。
 剣を構えたかのような、精神的武装をしていることも多い。つまり理屈屋。何事においても、人を評価・裁定する癖を持っていることもある。天秤で測るように、人を測る。
 天秤のバランスを取る為に、集中して人の和を保とうとすることもある。その為、その場限りの雰囲気に同調し、他の場では全く別にことを言い出すこともある。

 もし彼を友人とするなら、参考になる相談相手となってくれるだろう。悩み事に対して、前例をもって即時的な解決方法を示してくれる。しかしそれは、必ずしも役に立つとは限らない。感情的な問題の悩みに関しては、殆ど不可解と思えるアドバイスをして来ることもある。あまり長いこと傍にいられる友人とは言えない。お互いがお互いに気を使い、疲れる友人関係になってしまうことも多い。若しくは、かなり批判的で、人を傷つけることを平気で言う人の場合もある。
 恋人にするのは比較的簡単だが、長い付き合いをするには色々と心煩わされるが多い。価値基準が厳密で、あまり柔軟性があるとは言えない為、相性が悪い場合は、直ぐに喧嘩になってしまうだろう。特に【正義】の性質を持ちながら、学識が浅い時は、【正義】の遂行手段として【暴力】に訴えることもある。実に気難しい人物を言って良い。但し、人間関係に関しては、非道徳的な行為を嫌う為、浮気などの心配は無いと言える。
 仕事関係で見るなら、手際良く、あらゆる難関をスマートに乗り越える優秀な上司、部下と言える。上司の場合は、部下は多少苦労するはずである。ミスや不正に対して寛容な対処をしてはくれない。何かしらのペナルティを与えてくる。悪く出れば、減給や左遷などの方向(ネガティブペナルティ)。良く出れば、ミスを挽回するような成果を見せるように要求されるだろう。(ポジティブペナルティ) 部下の場合は、上司と折り合いをつけるのが上手い為、かなり信頼出きるが、固く、動かし難い面がある。
 向いている職業は、裁判官・警官・金輸関係・ジャーナリスト等。
 健康。結構丈夫な方だと言って良い。健康面でも、バランスが取れているため、大きな病になることは無いだろう。しかし、神経質な面がある為、ストレス性の病気や、精神の病になることがある。
 腸などのポイントに、病を抱える可能性もある。

 【正義】のカードは、巷でもかなりポジティブな印象のあるカードだ。その為に、今回の解説では、ネガティブな面を多少強調してみた。このカードも、追求の手を伸ばせば、実に奥の深い面を持っている。【ツイン】の性質が強いカードの為、大アルカナの中でも二面性の強い部類に入るだろう。
 各自、【正義】と言う言葉の意味を、良く考察して頂きたい。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、不当な扱いに悩んだ問題が解決される、自分の曖昧だった精神的ポジションが確立される、客観的な判断が出来るようになることなどを示唆する。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、自分の行なってきた事に対して正当な評価を受ける、争い事に勝つ、社会的に認められるポジションに立つことなどを示唆する。
 正位置の場合、正義の復活や、人に均衡をもたらす変化を意味し、逆位置の場合は、正義が失われる(不正が行なわれる)ことや、正義の無慈悲な局面にさらされることを意味する。


 解説に対する解説
 【正義】のカードは、大アルカナの中でもメジャーな部類なので、解釈が簡単だと思われがちである。しかしその実、世の中で言われる【正義】が不可解であることも私達は知っている。
 例えば【正義】が【人】を守るのだろうか? それとも【人】が【正義】を守るのだろうか? 時に【正義】の名の下に【粛清】が行われ、多くの尊厳ある命が奪われる事実がある。また、時代によって異なる【正義】がある。
 我々は、我々が思っているより【正義】のことを知らないのだ。
 【正義】のカードを良く理解する為には、そう言った、世の中で動いている【正義】を観察する事が大切なのである。
 【貴方の正義は、私の正義ではない】
 占いを行なう前提で、【正義】のカードを解釈するなら、それこそ大きな壁だと言って良いだろう。10人のクライアントに会えば、10通りの【正義】を見ることになるはずだ。時に【正義】と【正義】がぶつかり合う問題の相談を受けることもある。
 このカードを覚える際に、一番始めに頭に入れて欲しいのは、私達は【正義】に支配されるだけでは、【尊厳】を守れないと言うことである。では、尊厳を守る為には【正義】を守れないのか? そう言ったことを考えることが、このカードの本性を探る作業だと考えよう。