『Y』

名称 『恋人達』『兄弟』 『THE LOVERS』
主キーワード 預言・啓示・閃き・恋人・選択・決断・岐路・人生
          スタート・バランス・ハーモニー・大いなる岐路と
          大いなる啓示による未来に繋がる決断
『ある道を男が歩いていた。別の道を女が歩いていた。それぞれ別々の道を歩いていた。ある時この二人は出会った。彼等の道は一つになった。彼等はその出会いを喜んだ。ふと道の先を見ると、そこで道は二つに分かれていた。さあ、君達はどっちの道を選らぶ? どっちの道も遠く続きそうだ。ただ一つ、どっちの道を選ぶにしても、前を向いて歩くことを忘れては行けないよ。』

これまでのカード(0〜Xまで)は『人物のシンボルカード』として、物事の側面を表す性質が強かったが、『恋人達』のカードは、場面と状況と環境を表す性質が強い。
 ナンバーYを配当されるこのカードは、未来に関する啓示を与えてくれる神託、不意に隠された物事が見え始める大いなる閃き、前進と休息の調和によって導かれるバランスの良い旅路。そして、選択と決断の連続を経験する全ての人の人生である。
 これらは、私達が人生の中で何度も経験する岐路の一場面で、人生がいつも決断の連続によって進められていることを教えてくれる。常に行動的な人物であれば勿論のこと、しかし何もせずに一日を過ごしている人でも、その一瞬一瞬に『何もしない』という決断を行っているのである。
 このカードは恋愛の占断において大体良い意味を持つが、それ以上にこのカードの出現は、その本人の人生において、とても重要に局面にあることを示唆している。彼(彼女)は、選択と大きな決断を要求される岐路に立たされており、どの道を選ぶかによって、彼(彼女)の進路は結果へと至る大きなプロセスに向かうことになるのだ。

示唆 啓示・神託・閃き・調和・バランス・旅路の一場面・選択・決断・岐路・プロセスのスタート

 アダムとイブの選択(人類の選択)
 ウェイト版のタロットでは、『生命の木』と『知恵の木』を背後にした、アダムとイブの楽園在住のシーンが描かれている。その上方には、この二人を祝福・加護するかのように手を広げる偉大な天使の姿が描かれている。この天使は、太陽と癒しと風を司る大天使である『ラファエル』とされる。
 さて、アダムとイブの物語は、旧約聖書の創世記にて語られる。この場面は、人類の永い歴史にとって、とても重要な局面であることを知っておきたい。
 アダムとイブが楽園を追放され、原罪を負うこととなったのは、禁じられた『知恵の木の実』を口にしたことが原因である。もしあの時、イブが唆されずに『知恵の木の実』を食べることが無かったら、今の人間の世界とその歴史は存在しないことになる。しかし、イブはその果実を食べ、アダムもそれを食べた。それによって、楽園を追放され、原罪を負い、人間の苦悩に満ちた歴史が始まったのである。
 即ち、アダムとイブの行為は、その後の人類の流れを決める、大いなる選択だったのだ。まさにその時の一瞬の判断が、その方向性での結論を導くプロセスを招いたのである。

 アダムとイブの選択の先にあるプロセス。そのプロセスを経て辿りつくところは一体どこだろうか? 楽園への回帰かも知れない。サタンの住まいかもしれない。しかしいずれにしろ、アダムとイブは共同作業を伴いながら、そのプロセスを歩まなければいかないのである。どちらか片方だけではいけない。何故なら、イブはアダムの体の一部(あばら骨)から作られたからである。彼等は一体であり、また一緒に歩むからこそ、欠けた部分を補えるのである。

 彼等の進む道は平坦ではないが、しかし救いも残されている。まず、彼等は一人ではなくパートナーを伴うことが出来た。お互いの性質を生かし、それぞれバランスのよい役割を果たすことで、行動が実を結ぶことになる。また彼等が進む道にも多くの岐路があるが、その都度に天使が上方に来て、アドバイスを与えてくれる。これはしかし同時に、サタンの手先も訪れ、難しい道を選択するように囁くこともある。どちらにしろ、最終的な決断は彼等自身に委ねられる。

 彼等は道を歩む過程で成した行為によって、多く成果(子供)を得て、楽園に回帰する為に役立つものを手に入れる。また時には、得たものを放棄する決断もする。勿論過った判断によって険しい道を進むこともある。
 しかしそれらは全て、彼等の選択によって導かれたプロセスであり、戻り様のない道なのである。同じ道は引き返せない。別の道を模索して、楽園へと回帰しなければいけないのだ。それが人生の全体図なのである。

示唆 今後の進路を決める重要な岐路に立たされている・物語の始まり・共同作業・一心同体・欠けた部分を補う・同じプロセスに向かい合うパートナー・パートナーシップ・バランス・調和・パートナーとのバランスのある役割分担・道(平坦・悪路)・囁き(天使の声・悪魔の声)・決断・決断をした後に後戻りは出来ない・その最終決断は自分がしたのであり、決して他人のせいではない(サタンはイブを唆したが、サタンが『知恵の実』を無理やり口に押し込んだのではない。最終決断は、逃れ様も無く本人のものである)・決断とプロセスの経過によって成果を得る・今後の進路を進める為に役立つものを手に入れる

 配当される数字Yは、上向きの正三角形と下向きの正三角形の組み合わさった六芒星によって象徴される。上向きの正三角形は『上昇原理』と言われるものの象徴で、男性性・積極(能動)性・陽性・エネルギー性などを示唆する。逆向きの三角形は、『下降原理』と言われ、女性性・消極(受動)性・陰性・物質性などを示唆する。この対立する両者、同時に補うべき両者の結合が六芒星であり、完全性の象徴でもある。

示唆 二極の結合(バランス)による完全性

 アダムは『上昇原理』の人格化でもある。同時に顕在意識(通常の自覚している意識)の象徴でもあり、客観的理性を得ている。彼の視線がイブに向かっていることに注目。イブは『下降原理』の人格化であり、同時に潜在意識(顕在意識の下に眠る無意識層)の象徴でもある。彼女は主観的本能に優れ、カンが鋭く、霊性にも敏感に感応する。イブの視線が天上の太陽の天使に向かっていることに注目。太陽の天使は超越意識(あらゆる存在に開かれた、霊的次元にも及ぶ意識)の象徴でもある。6は太陽を象徴する数でも在り、先に述べたように『上昇原理』と『下降原理』を交えた六芒星による、完全なる人格も象徴する。その意味から見れば、顕在意識は潜在意識を通して、始めて超越意識を意識できると分かる。これは二人の人物のことを見るのではなく、一人の人間の中身を覗いた時のことであることを忘れてはいけない。即ち、自己の中にある二つの局面をバランス良く結合させて、超越意識へと至る方法がある、ということだ。

 示唆 顕在意識の持つ、超越意識への関心・潜在意識の仲介・自己の二極面のバランス良い結合・霊的な世界に耳を傾ける

 さてこのカードが占断の際に出た場合は、そのポジションによって注意深く読むように心掛けよう。現在のポジションに出たなら、特別重要な局面に立たされている。恐らく今後の進展に重要な意味を持つ、選択・決断を迫られているだろう。または、今後のプロセスを一緒に取り組むパートナーが出現するかもしれない。過去のポジションに出た場合は、彼は既に決断をした後である。現在・未来の状況はその決断の結果であり、覆しようが無い。未来のポジションでは、決断を迫られる事態が予想される。他人や環境を示唆するポジションの場合は、誰かの決断によって始まるプロセスに巻きこまれる(巻きこまれている)ことを示唆し、心理面のポジションでは、決断の時であることを自覚した上で(カードの性質が悪い場合は自覚が無い)、決断に必要なアドバイスが心に囁かれているような気がしている。
 『環境や局面を示唆するカード』の場合、『人物のシンボルカード』の性質を持つカードよりも、ポジションに注目を払う必要があることを覚えておくと便利である。

 人間関係
 大体は良好。集団の付き合いではなく、個人的な付き合いである場合、色々な面で良いパートナーを示唆している。時に、大切なパートナーを選び取る必要性を物語る。それは今後のプロセスに大きな影響を与える人物であったりする。性質が悪い場合は、悪影響を及ぼすパートナーや、不協和を示唆する。
 恋愛
 このカードは恋愛に関して一番良いものである、と考えても、実占に関しては差し支えない。大体の恋愛は成就するか、より良い方向性が見つかる。しかし、このカードの出現は『夢のゴール』では無く、新たなプロセスの始まりであることを忘れてはいけない。恋愛が成就した後、また結婚をした後のことまで注目しておく必要をクライアントに述べておくことが大事である。性質が悪く出ると、『成就しない』と言うよりは、お勧めできない展開になる、と考えた方が良い。
 仕事関係
 大切な局面である。やはり決断が要求されているが、その決断の影響力は実に大きい。仕事に関して頼れるパートナーを得るかもしれない。周りのアドバイスや忠告を素直に聞き、熟慮した上で自分の心が出した答えに従う他ない。性質が悪く出ると、後に響く過った決断をしてしまうか、誤情報によって痛手を食う。
 金銭面・ギャンブル面
 収入・支出・貯蓄に関しては、殆ど影響はないが、投資やギャンブルに関する選択を示唆する場合がある。性質が良く出る場合は良い結果を及ぼす投資。悪く出る場合は被害を被る。
 健康面
 太陽の天使『ラファエル』は治癒と再生、医療の天使でもある。その為、このカードが出た場合は、既に患っている病気や怪我が癒される方向に向かうことを示唆する。またバランスを意味するカードでもあるので、生活バランスの回復を促すカードでもある。

 精神性や将来への希望を論点に置くのであれば、自分の人生における大切な岐路・より良い選択をすべき時・大胆な決断を意味する比較的良いカードと解釈できる。その決断が正しければ、自分の納得のいく人生を歩めるだろう。実社会的問題に論点を置く場合も同じく決断を意味するが、その場合、直接自分の立場に結びつく。
 正位置の解釈は、このカードの美徳の面が中心に現れ、大体は良い決断、良いパートナーシップ、良いアドバイスを意味する。逆位置の場合は、過った決断により、苦しい環境を呼び寄せることを示唆する。