【]Z】

名称 『スター』 『THE STAR』 『星』

主キーワード 希望・可能性・才能・道標・契機・感性・発想・楽観・自然・輪

詩句 【古の地図】
『目印の無い砂漠の夜。旅人は、如何にして歩んだのか。貴方は、天空を見上げて知るだろう。暗闇の背後に見るだろう。古の旅人達が、地図をそこに描いた事を。』


 ナンバー『]Z』を割り当てられる【星】のカードは、暗闇の中で旅人を導く【北極星】。いと高き存在として、人々を遠くから眺める【神々の世界】。未知の中に浮かび上がる【希望の光】。己自身の中に見出す、発展する原石としての【才能】。それらは、確証は無いものの、未来に対して感じ得る【成功への期待】を暗示していると言える。

 【星】のカードを見てみると、一際大きく輝く黄色い星と、それを囲むように輝く七つの白い星とが見える。その星空を背後に、裸の女神が、両手に水瓶を持ち、一方は泉に、もう一方は大地に、尽きる事の無い水を注いでいる。
 カードの右手後方には、小さな丘があり、その丘の上には一本の木が聳える。良く見ると、その木の枝には、鳥が留まっている事にも気が付く。

 夜空の中央で一際大きく輝く星は、天球の中心として、一年を通して動く事が無い【北極星】を意味している。
地上を旅するモノ達にとって、北極星は方位上の【北】を示す重要な道標であり、自分が進むべき方向を示す、重要な導きでもあった。
 古代の旅人達にとって、夜空に広がる星々は、人の手に勝る偉大な羅針盤であり、地図でもあったのだ。星を読む事によって、旅人達は、自分の向かうべき方向を知り、向かうべき運命を知る事が出来た。

 またこの星は、東方の三賢者を、キリストの誕生地まで導いた【ベツレヘムの星】とも考えられる。
 三賢者は、この星の後を追い、キリストが生まれた馬小屋にまで辿り着いた。
 三賢者にとって、この星は【祝福の兆し】であり、出会うべき運命への導きそのものだったのだろう。

 天空に輝く星々は、実にささやかな光しか持たない。太陽の光の中では見出す事が出来ず、月の光の中でさえ、薄らいでしまう。とても儚い光だ。
 しかし、真っ暗闇の夜の中では、確かな存在感を放ちながら、美しい姿を現す。
 確証の無い、儚げな光。しかし、暗闇の中でこそ気が付く光。暗闇の中で、方向性を示し、行くべき道を示す光。
 我々人間は、これらの光を天空にだけでは無く、己の心の中にも見出す事が出来る。
 迷い苦しみの中に見出す【希望】は、未来に対する確証は無いけれど、確実に行くべき方向を示し導く、内界の星と言う事が出来るだろう。

キーワード 導き・道標・希望・期待・祝福・未知数の可能性・方向性の暗示

 さて、一際大きな黄色の星の周囲を囲む、白い星達は何を意味するのだろうか。
 白い星の数は七つ。これは伝統的に、内惑星と呼ばれる太陽系の星々の事と思われる。
 つまり、太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星の七つだ。
 古くから西洋の占星術に用いられ、それぞれの星には、神話上の神々が住まうとされた。

 太陽は、生命と活力を象徴するモノとして。神はアポロやソルと言った神々が支配する。
 月は、情緒と変化を象徴するモノとして。神はアルテミスやルナと言った神々。
 火星は、闘争とエネルギーを象徴するモノとして。アレスやマルスと言った神々。
 水星は、知性や伝達を象徴するモノとして。ヘルメスやマーキュリーと言った神々。
 木星は、創造や慈悲を象徴するモノとして。ゼウスやジュピターと言った神々。
 金星は、美と豊穣を象徴するモノとして。ビーナスやアフロディティと言った神々。
 土星は、試練と困難を象徴するモノとして。クロノスやサトゥルヌスと言った神々が支配する
と考えられていた。

 七つの星々は、それぞれ天球を巡り、人の誕生の際には、その場所から【才能】と【運命】を授け与える。それによって、人は才能と呼ばれる長所を得たり、逆に欠落した部分を持ったりする。運命の【幸運】と【不運】も、同じように授かる事になる。

 【星】のカードに描かれている七つの白い星は、我々に与えられた【神々の贈り物】を意味していると考える事が出来るだろう。困難の中にあって、それを打ち砕く為の能力を、所謂【才能】と言われる形で、我々に与えてくれるかも知れない。
 【星】のカードが現れる時、我々は自分自身の力で歩む事が前提となる。遠く何万光年も離れた星々は、我々の手を引いて歩いてくれる訳では無いし、前を歩いて、障害を打ち砕いてくれる訳でも無い。ただ、我々自身の内側に眠る、星々からの贈り物を見出す事が出来れば、道を進むには充分な力を得られるだろう。
 太陽から授かった、燃え上がる生命力によって進むのか、それとも水星から授かった知性によって問題を解決するのか、それとも土星から授かった困難に耐えうる強靭な精神と肉体によって乗り切るのか。それは人それぞれだろう。
 いずれにせよ、【星】が出ている限りは、前に進めるはずである。
 そう言う事を暗示するカードなのだ。

キーワード 才能・長所・幸運・芸は身を助ける

 さて、カードの中央に居る女神は何者だろうか。
 星々の母。天空の女神。
 【ヌイト】と呼ばれる女神が、適当かと思われる。
 【ヌイト】とは、宇宙空間そのものであり、その手に持つ水瓶から、絶え間なく星々を生み出していると言う。
 【星】のカードでは、この女神は大地に跪き、両手に水瓶を持ち、一方を大地に注ぎ、一方を泉に注いでいる。
 この水は、【節制】のカードでも解説した【生命の水】だ。生命の髄である。
 天空の女神は、大地をこよなく愛する為、惜しげも無くその水を大地に注ぎ、同時に、地上にあって女神の姿を映す泉にも、その水を注いでいる。
 これによって、大地は生命力に満ち、多くの生物達を育む。
 このカードには、生命の兆しとして【木】が描かれている。地中から【生命の水】を汲み上げ、女神の住まいである天空を目指し成長を続ける。その木の枝には、生命の賛美を歌う鳥が留まっている。この木は成長を続け、いずれは大地と天空とを結ぶ、偉大なる柱となるかも知れない。

 この事は、我々に何を教えてくれるのだろうか。
 孤独と思われる人生の中で、ふと夜空を見上げた時、多くの星々が見守っている事を教えてくれているのかも知れない。星の存在は遠いけれど、何万年も掛けて光を贈る星々と共に、我々は決して孤独では無い事を教えようとしているのかも知れない。天空から降り注ぐ星の光は、それ自体が生命の水だと伝えているのかも知れない。希望を持って成長する事で、天と地を繋ぐ柱になれる可能性を暗示しているのかも知れない。
 しかし、いずれも可能性であり、達成の保障は無い。それが【星】のカードである。
 しかし、その未知数の可能性であっても、我々を導き、前へと進ませてくれる。それが【星】のカードである。

 我々が困窮し、その時【星】のカードが出現した場合。未来へと進む為の足掛かりや、方向性を示す道標が何処かに存在している。
 それは余りにも小さく、見落としがちな光である。
 何かしらのアイデアやヒントとして、誰かが何気なく発言した言葉の中に隠れているかも知れないし、身近に置いてある小説の一節の中に隠れているかも知れない。また、昨日見た夢の中、テレビのキャッチフレーズ、通勤中に目にする看板の文字等、本当にふとした切っ掛けで発見されるような代物かも知れない。
 【星】のカードが出たら、【気付き】を大切にする時期である事を覚えて置こう。困窮した問題にばかり気を取られていたら、遠くから投げかけられている光に気が付けないかも知れない。【星】のカードが出たのなら、困窮する時こそ、視野を広げる事が大切だと考える事が必要だ。
 ふとした出来事が、自分の中で、問題の答えや、解決のヒントと結び付く。
 それは、あたかもこの時の為に用意されていたかのように、自分の中に飛び込んで来て、自分の内側にある様々なモノと結び付く。
 心理学では、この様な現象を【コンステレーション】と呼ぶ。
 面白い事にこの言葉は、星と星とが結び付く【星座】に語源を持つのだ。
 貴方は人生に迷った時に、自分の内側に広がる【地図】としての【星座】を見上げる事が出来るだろうか。

人間関係 基本的に、穏やかな人間関係が形成される。人と人との結び付きが、今の自分に必要な【気付き】を与える切っ掛けになる可能性がある。人付き合いの中で、相手の言動を見逃さないようにする必要があるだろう。特に、特定の問題に悩まされている時は、人との接点が重要になる。友人や知人が、その問題の解決策を運んでくれる可能性がある。

恋愛関係 片思いの恋愛である場合、単純に【進展】を暗示する事が多い。特定のパートナーが居ない場合は、接点(出会い)を暗示する事もある。【星】のカードが、恋愛について直接的な影響力を暗示する事は少ないが、自分の目指すゴールへの道標として現れる為、諦める段階には無い事と、恋愛が成就する可能性がある事を暗示していると言える。
 既にパートナーが居る場合は、同じ【星】を見ている可能性がある為、進む方向性が一定し、安定した関係性を維持できる。

仕事 無職の場合、自分の就くべき業種・職種等が絞られ、就職活動がスムーズに運ぶようになる。但し【星】のカードだけでは、【就職出来る】と断定する事は出来ない。
 既に働いている人の場合は、自分の目指すべき場所がハッキリしてくる事により、仕事に対するモチベーション(やる気)が上昇する傾向にある。企画・運営・開発等に携わる場合は、より創造的なアイデアが生まれ、長期的な計画として動き出す可能性がある。
 稀に、転職の兆しとして現れる場合もある。既存の職には無い方向性を見出す事により、現職を辞し、全く新しい方向性に進む事になる。所謂【脱サラ】をして、自営業を始めるようなタイプだ。自分で新しい道を切り開くのは良い事だが、【星】のカードには、【達成保障が無い】事に留意しておこう。

健康 【星】のカードは、【女帝】のカードとも関係深く、【自然】と【サイクル】と言う意味合いを共有する。その意味で言って、健康についても好意的なカードをとして捉える事が出来る。
 体長が悪い場合は、寝食のバランスを回復させる事により、健康を取り戻す事が出来るだろう。
 健康を害する可能性がある場所としては、足(脛の部分)等。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、精神性の回復、精神性の結び付き、重要な気付き、未来への視野の拡大、才能の開花。人生と言う大きな旅路の中で、自分の目指す場所を見出す内的地図の発見を意味している。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、現実的方向性の発見、問題解決のヒント、人との結び付きによって開かれる道、才能を現場で発揮するチャンス等を示唆する。
 正位置の場合、自己の【星】を見出す事により、力強く前進していける事を示唆し、それに伴う未来への可能性に焦点が当たり、逆位置の場合は、【星】を見失う事により迷い、迷った結果引き起こされ得る諸問題に焦点が当たる。