『Ⅷ』
名称 『ＳＴＲＥＮＧＴＨ』 『剛毅』
主キーワード 偉大なる力・無敵・剛毅・精神力・勇気・抑制
忍耐・克服・理解・容赦・受容・偉大なる愛・昇華
『目を閉じると、怒り狂う獅子が見える。獅子は私を拒絶するように牙を剥き、大きく吼えて威嚇する。しかし私は恐れない。もはや私に敵は無いからだ。私は獅子に近寄り、その怒りを抱いた。その獅子からは悲しみが伝わった。・・・私が気が付くと、何時の間にか静かに涙を流す私自身を抱いていた。ああ、もはや私には、敵は無い。』
ナンバー『Ⅷ』を割り当てられるこのカードは、あらゆる敵を克服する勇者、その偉大な力によって無敵となった聖人、際限なき理解を得て、ことごとく敵を許すことの出来る賢者、そして、真に偉大なる愛を持ち、全ての存在を受け入れる、あらゆる意味での力在る者である。
その人物は、如何なる者よりも強い力を持ち、既に無敵の存在となった。無敵とは敵が無いことを意味する。どんなに強い力を持ち、敵に打ち砕かれず、敵を打ち砕く力があったとしても、歯向かう敵が存在するのであれば、その人は無敵とは言えない。無敵とは、敵が無く、全ての存在がその人物を敵と見なさない状態を意味し、それは真に偉大な力を持つものの偉業なのである。
力とは、様々な場所で様々な姿形を取っている。本来力とは、敵を打ち砕く為に存在するのでは無い。それはあらゆるものを動かすエネルギーであり、存在を発展させるために在るのだ。無敵となったものは、力の意味を悟り、それを実際に体現することが出来る。
その人物は正に、真の勇者であると言える。
示唆 偉大な力・無敵・発展のためのエネルギー・力の理解・偉業・真の勇者
カードに描かれているのは、獅子を優しく嗜める女性である。彼女は、獅子を全く怖れる様子を見せない。本来獅子は獰猛で、危険な動物なのだが、彼女にとって獅子は敵では無く、彼女自身にとっての脅威でもない。彼女は、その獅子がどのようにしても、彼女自身の存在を脅かすことはできないと知っているのだ。怖れは無理解から生じる。彼女は自分と獅子の両方のことを、深く理解している。その為一切の怖れが生じないのである。
獅子は、人間の激しい欲望を象徴している。その欲望は、時にその人自身を食い尽くすかのように暴れ出すことがある。それを怖れ、人間は自分の欲望を抑え込もうとする。しかし、鎖で縛り、檻に閉じ込めた欲望は、一向に納まる様子を見せない。これは抑圧と言い、決して欲望を克服することは出来ない。彼女は、自分の欲望について良く知っているため、その様な手段は用いない。彼女は自分の欲望を優しく嗜め、許される範囲でその欲望を満たし、許されぬ範囲では静まるように包み込む。これは抑圧ではなく、抑制と言う。
彼女は、欲望とは生態的なペットのような物だと知っているため、必要な餌は与え、許される範囲の自由も与えるが、不健康の元となる暴飲暴食はさせず、過剰な自由も与えない。彼女は確かに、欲望を飼いならす、優れた飼い主なのである。
示唆 自己理解・他者理解・深い理解・怖れない・欲望のコントロール・抑制・克服・バランス・賢明な飼い主（リーダー）・脅威ではない事を知る
彼女の頭上には、無限記号（レムニスケート）が描かれている。限界の無い可能性、限界の無い力を指し示している。力が大きくなり、真の意味での強さを得ると、次第に許しと寛容の力に変わっていく。更に大きくなれば、人間の脆さ・醜さ・弱さなどを包み込める、偉大な【愛】の形に変わっていくのだ。【愛】とは単なる理想論や馴れ合いではなく、現実に働く力の局面なのである。
さてこのカードは、西洋１２宮の獅子宮に対応し、且つ処女宮にも関係する。獅子に関しては、先ほど人間の激しい欲望であると述べたが、他にもう一つの局面も持っている。強い意志、情熱・深い愛情・保護精神・王者的性質。力強く寛容な王を意味することもある。しかし、その内側にはやはり、強い欲望や情動なども潜んでいる。処女宮は、このカードでは白い服を着て、花の冠をした女性として描かれている。このカードでは処女宮的性質を直接的にあらわしはしないが、常に猛獣を従える毅然とした強さを持つ女性として、獅子宮的性質を制御する存在として描かれているのである。
示唆 無限・許し・容赦・寛容・愛・力（エネルギー）・獅子宮・強い意志・情熱・愛情・保護精神・王者的性質・内なる情動・毅然とした態度・制御
さて、このカードは【力】を意味するカードである。その部分についてもう少し深く追求してみよう。このカードが意味する力は、高次の神的なエネルギーではなく、人間の内在する情的なエネルギーである。この情的なエネルギーは、例えば激情・欲望（欲求）・性的エネルギーなどの形で内在し、時に人間を苦しめる時がある。その為、一般社会では、これらのエネルギーを良くない物と見なす傾向にある。しかしこれらは、人間が生きていく上で必要な、原動的なエネルギーであることを忘れてはいけない。何らかの対象に向かう激情は、力動的・行動的なエネルギーであるし、欲望は実現をもたらす志向性でもある。性的エネルギーは遺伝子学的に言っても、種族繁栄のために必要なエネルギーである。問題は、これらのエネルギーが無制御に暴れだしたり、過剰に動いたりする時である。また逆に、これらのエネルギーが無理に抑圧される場合であっても、精神的・肉体的に悪い影響を及ぼす。
これらのエネルギーを上手に扱う手段として、昇華という概念がある。欲望や性的なエネルギーを、別の形で発散するのである。例えば、芸術活動やスポーツなどは、昇華の最たる例だと言える。人間の内側から起こるエネルギーを、芸術的な作品として残したり、躍動的なスポーツ活動に転化することによって、欲求不満を解消し、満足感のある成果を得る事が出来るのだ。欲望や性的なエネルギーを抑圧したり、枯れさせてしまう人物の場合、スポーツや芸術活動に関しても、全くの成果を出せない人物が多い。スポーツや芸術作品は文化でもある。つまり文化とは、そう言った個人の内在する激しいエネルギーが外側に現れて、始めて存在し得るものなのである。
示唆 激情・欲望・欲求・性的エネルギー（性欲）・エネルギーの転化・昇華・スポーツ・芸術活動・エネルギーの発散（ストレス解消）・文化、文明の源
さて、人物カードとして見る場合、具体的にどんな性質をもって現れるだろう。実にゆったりとした穏やかな物腰で、全ての事柄に取り組む。内部には激しい気性を持ちながら、それに振り回される事無く、毅然とした態度を保つ。穏やかに見えるが、活力的で、スポーツや芸術活動などに参加していることが多い。
肉体的にも堅強であることが多いが、見た感じそうは思えない風格。真面目ではあるが、陽気。寛大で寛容。見た目より情熱的。
性質が悪く出る場合、抑圧が強くなり、内的なエネルギーが発散されず、ストレスをためることがある。爆発した瞬間は手に負えないような暴れっぷりを見せる。
彼を指し示すキーワードは、『内なる力強い力』と『理解する力』であり、取り組む全ての事に対し、大きな成果を得る事が出来る。
もし彼を友人とするなら、力強い協力者となるだろう。困った時には力を貸してくれるし、精神的な支えともなってくれる。このような友人を得たのであれば、それは実に喜ばしいことだ。様々な面で力と知恵を与えてくれるが、実は彼自身にも彼をサポートしてくれる友人が必要なのである。一見そうは見えなくとも、彼も人間的な弱さを抱えている。それを助けてあげる事は、とても大切である。彼は寛容なので、大体のことは許してくれるが、限度を過ぎると凄まじい力で叩き潰してくる。調子に乗ってはいけない。彼のエネルギーは色々な面で活躍できるので、イベントなどには積極的に誘ってあげよう。
もし恋人にするなら、とてもロマンティック・情熱的な付き合いになるだろう。彼（彼女）は、その内側に激しい愛情を持っている。【愛】は理解であり、恋人の全てを包み込み、喜びを共にする事を望む。【情】とは性的な欲望なども含み、獅子で代表されるような激く燃え上がる感情である。通常の付き合いに関しても色々とロマンティックな演出をしてくれるし、性交渉などの部分では、思ったよりも激しい側面を見せる。通常生活では穏やかなので、独占欲などを見せる事は無い。独占して欲しいと思う恋人には、満足できないかも知れない。
仕事関係で見るなら、堅実で弛み無く、着実に成果をもたらす上司、又は部下。上司としても部下としてもかなり優秀だと言えるが、信念があるため、その部分ではかなり頑固な側面も見せる。事務でも営業でも、オールマイティーな力を持っているが、兎に角彼自身のエネルギーが存分に発揮できる仕事で無いと、欲求不満になり、ストレスを溜めてしまう。彼は、ここぞと言うときに頼りになる人物だ。
スポーツマンや芸術家など、自分の内的なエネルギーを外に表現できる仕事が最も向いている。格闘や競争をする仕事でも大きな成果を得るが、彼の性質は決して外敵の破壊にあるのでは無いので、その面は取り違えてはいけない。
健康。肉体面ではかなり健康だと言える。体格も意外と確りしており、喧嘩も強そうである。【戦車】の性質では行動的過ぎて過労を起す方向に走りがちだが、【剛毅】の場合は抑えすぎて、内的なエネルギーが発散できず、ストレスを溜める心配の方が強い。エネルギーが内に篭ると、鬱病になることもある。定期的にスポーツをする等しないと、心身共に健康を損なう怖れあり。病気としては、心臓と生殖器に障害が起こる場合がある。女性の場合は不妊、男性の場合は不毛。
【剛毅】のカードは、力ある者の極まった状態を意味している。しかし人間や現状は、殆どがその発展途上にあるはずなので、【剛毅】のカードが良く出た場合でも、抑圧やコントロール不能なエネルギーの可能性があることを忘れてはいけない。
このカードが出た場合、取り組んでいる問題を克服する力が備わっていることや、根気を持って取り組むことによって、成果を得る事が出来ることを示唆している。キーワード【理解】を忘れずに。
精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、目的の前に立ちはだかる困難の克服、内的欲望の懐柔、自己理解による自己の拡大を示唆する。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、忍耐を持った行動・問題の理解による展望・力強い進展・独立など、社会的な成長を示唆する。
正位置の場合、力の理解とコントロール・寛容と愛の美徳を意味し、逆位置の場合は、欲望の抑圧や暴走、力不足・無理解・無気力などの悪徳を強める。
