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名称  『サン』  『THE SUN』  『太陽』

主キーワード 充実・活力・喜び・達成・成功・共和・調和・友情・求心力・再生力

詩句 【日拝】
【汝は心臓。生命の源。光を以って、大地を照らす。七つの星が、汝を囲み、万年を通し、巡り続ける。汝は中枢。生命の主。熱を以って、大地を育む。黎明と黄昏を汝が誘い、生と死とをまっとうさせる。】

 ナンバー『]\』を割り当てられる【太陽】のカードは、【生命の中枢】【太陽系の心臓】。死の深みに没した後、輝かしく復活する【イエス・キリスト】の象徴。全てを照らし、全てを温め、全てを育み、全てを生かす力。また、隠されたモノを白日の下に晒す光。
 【太陽】は、あらゆる【生命力】と、それに纏わる【調和】。そして、与えられた【真実】を力強く暗示する。

 【太陽】のカードを見てみると、その中央には、力強い真正面の顔が描かれた、輝かしい太陽が描かれている。視線を落とすと、白い馬に跨った幼い男の子が、オレンジ色の旗を掲げて持っている。その背後には、石の塀が見られ、その向こうから、幾つもの向日葵が顔を覗かせている。

 まずは、中央の太陽から注目して見よう。
 真円の外側には、二種類の線が描かれ、円の中には、真正面の顔が描かれている。
 二種類の線は、太陽が持つ【熱】と【光】の象徴。
 直線は【光】を。波線は【熱】を暗示している。

 この二種類の線は大きく、フレームから、はみ出すように描かれている。
 直前の【月】のカードと比較すると、その特徴が良く解かるだろう。
 【月】のカードには、【光】を意味する直線は描かれているが、【熱】を意味する波線が描かれていない。また、【月】のカードの光は小さく、フレーム内に納まっているが、【太陽】のカードは、【月】よりも強い光線の暗示として、フレームから、はみ出す程大きく描かれている。
 【太陽】が、生命力の象徴とされるのは、この【光】と【熱】の力に拠る所が大きい。
 太陽の光は、夜と昼とを別ち、一日のサイクルを作り出し、生物の【活動】と【不活動】を周期付ける。また、太陽の熱は、一年を通した季節のサイクルを作り出し、生物の【栄枯盛衰】を周期付ける。
 太陽のこの役割は、月が担う事は出来ない。
 月の光だけでは、昼と夜を別つ事は出来ないし、熱を持たない為、季節を巡らせる事も出来ない。
 勿論、月も生物に大きな影響を与えているし、我々の住まう地球も、生物に必須な環境と言えるだろう。
 しかし、そう言った影響力の中でも、太陽は最も大きな力を持ち、正に、【生命の中枢】と言うべき役割を担っている。

 では、真正面に描かれた顔は何を意味するのだろうか。
 これも、【月】のカードと比較する事が出来る。
 【月】のカードには、横顔が描かれている。
 月は、地上に向けて常に片方の面しか見せず、その裏側を見せる事は無い。
 月の裏側は、表面の美しい姿とは大きく異なり、クレータばかりの醜い姿である事が知られている。この事から、月は【裏表がある事】や【隠し事】の暗示として使われる事がある。
 それに対して【太陽】は、太陽自身の自転や、地球の公転の関係から、その全ての面を地上に見せる性質がある。また、燃え盛った太陽は、その炎によって表面が滑らかに見え、地上からは殆ど変わりの無い姿と捉えられる。
 つまり、【太陽】のカードに描かれた真正面の顔は、裏表の無い事の暗示であり、隠された事の無い【真実の姿】の象徴なのである。

キーワード 生命力・生命活動の中枢(心臓部)・サイクル・裏表が無い・真実

 では次に、白い馬に乗った幼い男の子について考えて見よう。
 良く見ると、男の子の頭には、鳳凰の羽があしらわれた飾り物が施されている。
 実は、大アルカナ22枚の中で、【太陽】のカード以外に二つ、同じ鳳凰の羽を頭に飾ったカードが存在する。
 一枚は【0番 愚者】のカード。もう一枚は【13番 死神】のカード。
 同じ象徴を、同じ方法で所持する場合、それは【同一人物性】を暗示する。
 つまり、【愚者】と【死神】と【太陽の幼子】は、同じ人物と考える事が出来るのである。
 【始原】から旅立った【純粋なる魂】としての【愚者】は、幾つものステージを経て、【死神】の場に到達する。この時、その生命力は最も低い状態に置かれ、その為、死神の頭に飾られた鳳凰の羽は、酷くうな垂れている。
 【死神】のカードの遠景に、二つの塔と、その間から昇る(若しくは沈む)太陽が描かれているのが解かるだろう。この二つの塔は、【月】に描かれている塔である。そして、その塔の間に描かれている太陽は、正に【太陽】のカードに描かれているモノである。
 【死神】は、再び幾つかのステージを経て、【月】に描かれた【死と再生の門】を潜り、【太陽】のカードに至る。
 この時、【死の世界】【黄泉府】から転じ、【生命の世界】に生まれ変わる。
 再生した【愚者】は、再び【最も純粋な魂】の表現として、幼子の姿を取り、生命力の復活を象徴し、頭上の羽がピンと立つのである。
 【太陽】のカードに描かれた【幼子】は、【再生復活した魂】【死の世界を経て純化された魂】の象徴なのだ。
 彼は、【生命の勝利】を記念し、オレンジ色の波打つ旗を掲げる。
 彼の跨った白い馬は、【死神】の時から継続されたモノで、【神性】を意味すると同時に、【純粋な行動原理】をも意味している。

キーワード 復活・再生・純化・充実・勝利・純粋な行動原理・魂が若さを取り戻す

 さて、白馬に跨った男の子の背後には、石の塀が描かれている。
 実際には、その面だけでは無く、彼の四方を取り囲むように、塀は張り巡らされている。
 つまり彼は、石の塀によって作られた箱庭に囲まれているのである。
 これは、未だ幼い魂を守る為の、霊的な囲いと考える事が出来る。
 これまで、幾つものステージを経て成長して来た魂ではあるが、【月】の門を通過した先は、純粋に霊的な世界であり、その中においては、まだまだ未熟な魂でもある。
 この世界に慣れ、充分に成長するまでは、この塀に守られ、様々な訓練を繰り返す。
 塀の向こうから顔を見せる向日葵は、小さな太陽の象徴でもある。それは、彼の成長を見守る人々の顔でもあり、必要な時には助けの手を差し伸べる協力者の暗示でもある。
 彼は、この囲いの中に居る限り、守られ、助けられ、安全に成長して行く事が可能なのだ。
 彼が充分に成長し、【純粋な行動原理】である白馬を御する事が出来るようになったら、壁に向かって走り、終には塀を飛び越え、広い世界に旅立つ事が出来るようになる。

キーワード 箱庭・保護・協力者・成長・安全・訓練

 さて【太陽】について、もう少し別の視点から考えて見よう。

 例えば、心理学的なアプローチで言えば、【太陽】は【自己(セルフ)】に対応し、【月】は【自我(エゴ)】に対応する。
 人間の、広大な心の領域の中で、その中核を成すのが【自己】であり、外部と接する為のツール(道具)として作られたのが【自我】であるとされる。
 【自我】は、他者と関わる為に、具体的な個性を持つキャラクターとして現われ、その人の、外側のイメージを作り上げる。
 大体の場合、人間は【自我】を自分自身であると思い、【自己】の存在を認識しない傾向にあるが、実際には【自我】に実態は無く、ある種の【設定】によって作られた【紛い物の自分】であるとされる。
 実態が無い以上、【自我】は揺らぎのある不安定な存在であり、外側の影響を強く受け易い傾向にもある。その為、喜怒哀楽の揺らぎがあり、心的な病を得るのも、この【自我】の部分である。
 逆に【自己】は、その存在が確固としており、揺らぎは無いとされている。これが【本当の自分】であり、【自我】の創造者でもある。

 さて、【自己】と【自我】の関係は、正に【太陽】と【月】の関係に似ていると言えるだろう。
 【月】は、【太陽】の光を反射する事によって、その姿を現す事が出来る。
 【月】は、自分で光る事が出来ない為、常に【太陽】の影響と、見る側の角度によって、その姿を変えざるを得ない。【太陽】の光の影響によって、満月となり、強い存在感を示す時もあれば、三日月のように、存在感を弱める時もある。場合によっては、地球によって完全に光が遮断され、新月のように、存在感を完全に消してしまう場合もある。

 タロットカードにおいて、【月】は不安や恐れの象徴であり、同時に紛い物の象徴でもある。そして、それに対して【太陽】は、安心と充実の象徴であり、同時に【真実】の象徴でもある。
 【月】と【太陽】のカードを学ぶ時、その取り組みの中で、自分自身の心を理解する糸口にもなるだろう。
 夜闇の中で、【月】の虚ろな光に執心し、それを追い求めると、その真向かいに存在する【太陽】から遠ざかる結果になる。夜明けは遠退くばかりだ。
 同じように、【自我】に執心し、追い求めると、本当の自分である【自己】から遠ざかり、自分自身を見失ってしまうかも知れ無い。
 逆に、【月】の光に注目する事によって、察しの良い人は、その光源である【太陽】の存在に勘付くかも知れない。
 同じように、【自我】に注目する事によって、察しの良い人は、それに大きな影響を与えている【自己】の存在に気付くかも知れない。
 そして、【月の門】を通過して、太陽の領域に達する事が出来るように、【自我】の隙間から通り抜け、【自己】を発見する事が出来るかも知れない。

 【自己】は、自分の心的領域の中核である【心理の心臓】とも言うべき存在である。
 それには、ある種の求心力があり、それに引かれて、心の諸要素が惑星のように配置され、それぞれが機能して行く。
 この中心が、全ての要素間に調和をもたらし、一つの世界観を作り上げる。
 例えば、太陽がその引力によって、太陽系を作り出し、その調和を保つのと同じと考える事が出来るだろう。

 太陽系を考える時、太陽の存在を中心に置かずには、それを理解する事は出来ない。
 決して、【月】を中心にしても、太陽系は理解出来ない。
 同じように、【自我】を中心にしても、自分の心は理解出来ないし、コントロールして行く事も出来ない。【自己】を中心に置く事によって、初めて理解が始まって行くのだ。

 【太陽】の生命力は、同じく【自己】の生命力の暗示でもある。
 【太陽】が太陽系を活かし、地球の生命活動の基盤であるように、【自己】が心を活かし、【私】の心的活動の基盤なのである。

 【太陽】は、生命力と真実とを伴う、あらゆる【中心】の象徴であると覚えて置こう。

 (※ 【自己】は、西洋魔術等の分野で【聖守護天使(ハイヤーセルフ)】と同一視される事がある。カバラーに置いても、太陽の位置である【ティファレト】において、【聖守護天使】との対話がなされるとされている。詳しくはBタイプ解説の折り)

 復活再生の象徴
 【太陽】は、古代から【復活・再生】の象徴としても考えられて来た。
 西の地平線に没するのは、象徴的に【死】と結び付けられ、翌朝、東の地平線から昇るのは、象徴的に【復活・再生】と結び付けられていた。
 エジプトにおける【ミイラ】の習慣も、復活再生を象徴する【太陽神の信仰】と結び付いたモノだと推測する事が出来る。

 また、その影響は【キリスト教】にも見られる。
 救い主【イエス・キリスト】は、人の子として聖母マリアから生まれ、ゴルゴタの丘で処刑されて死亡する。
 そして、数日後に復活し、使徒達に姿を現した後、肉体を持ったまま、天へと帰って行く。
 【太陽】は、キリスト教の中でも、イエス・キリストの象徴とされる。
 それは、復活と再生。そして、癒しの象徴でもある。
 太陽の大天使ラファエルは、医療・癒しの天使としても有名である。

 日本の神話にも、太陽の【死と再生の物語】が存在する。
 日本の主神であり、皇室の祖先でもある【天照大御神】は、天の岩戸と呼ばれる場所に隠れ、象徴的な死を迎える。太陽を失い困った神々は、一計を案じ、天の岩戸の前でお祭り騒ぎをし、太陽神が岩戸から外を覗くのを待ち、出て来た所を捕獲(?)する。
 これも復活・再生の暗示である。

 【太陽】は【生命】そのものであるが、その背後に【死と再生】の暗示を含む。
 タロットカードにおいて、【愚者】と【死神】と【太陽】の三つに同じ人物が関わるのも、その【死と再生の物語】を強く象徴する為だと考える事が出来るだろう。

 【太陽】は、とても強烈なカードと評する事が出来る。
 その全てを説明するには、とてもじゃ無いが纏まりが付かず、かなりの困難が伴う作業と言えるだろう。
 細かい部分の解説はBタイプ解説に譲り、ここまでとしよう。

キーワード 自己(セルフ)・聖守護天使・中心・本当の自分・復活・再生・癒し・医療

人間関係 太陽独特の【魅力】や【求心力】が働く。鑑定の際は、この【太陽】の影響力が、主体に働くか、それとも客体に働くかを判断する必要がある。つまり、クライアント本人が、太陽の影響力を発する場合、自分の魅力を最大限に発揮出来る時と判断し、求心力によって、友人が集まって来る。コミュニケーションが活発化し、充実した交流が出来るようになるだろう。また、クライアント自身では無く、クライアントに関わる人物が、太陽の影響力を発する場合もある。その時は、その人に関わる事によって、太陽の恩恵を与る事が出来る為、積極的に交流する事を進めると良い。

恋愛関係 片想いであっても、両思いであっても、相手とのコミュニケーションが活発化し、充実感を得る暗示と判断する。その活発化したコミュニケーションの中で、お互いの仲が深まり、恋愛として一歩先に発展し得る可能性がある。しかし、発展そのものの保障は無いので、あくまでも【発展し易い時期】と判断するのだ妥当だろう。想う相手が居ない場合は、友人とのコミュニケーションが活発化し、その中で、新たな出会いが促進されると判断する。異性・同性を問わず、積極的に交流すると、求心力に導かれて、出会いがある可能性がある。いずれにせよ、積極的に行動するのが良いとアドバイスする。

仕事 職場内のチームワークが促進され、スムーズに仕事が運ぶようになる。職場内の人間関係が悪い場合は、それが改善される兆しとも判断する事が出来る。自分、若しくは身近な誰かが太陽の影響力を発揮する為、その求心力に導かれて、一つの方向性に纏まる事が出来る。この時期は、色々と手助けがある為、例え失敗しても、周囲からフォローされ、大事には至らない。その為、多少の無理は許される傾向にある。
無職の場合、他者に対して積極的に協力を求めたり、情報を収集する事で、自分に有利な環境を呼び込む事が出来る。自分の魅力を最大限表現出来る時期でもあるので、面接等でも好印象を与え易い。過度な高望みさえしなければ、良い職に就ける可能性が高いだろう。

健康 太陽は、生命力・癒し・再生の暗示である為、健康については、かなり良い暗示と判断する事が出来る。体調が悪い場合は、生活サイクルの見直しは必要となるものの、略無条件で回復すると判断しても良いだろう。特定の病気を持つ場合は、完治、若しくは病状の改善と判断する。精神的なコンディションも回復し、充実感と生命力を得る事が出来るだろう。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、太陽の光に照らされハッキリした道筋と、それを歩む上での充実感。純化された精神。若い生命力に満ちた意志等を示唆する。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、魅力と求心力を発揮しての成功。協力者の存在と、社会的な保護。コミュニケーションの拡大。調和の回復と実現を示唆する。
 正位置の場合、【太陽】を中心に置き、その恩恵を与りながら物事に取り組んでいける事を示唆し、逆位置の場合は、【太陽】が中心から外れ、光と安定感を失った状態で物事に取り組み、難渋する事を示唆する。