【]W】

名称 『テンぺランス』 『TEMPERANCE』 『節制』

主キーワード バランス(平衡)・ハーモニー(調和)・シンクロ(同調)・コントロール(操作)・クオリティ(質)・メンテナンス(調整)・テクニック(技術)・アート(技能)・節制・再生・救い・協調

最も美しい芸術は、相反するモノ達が融和する姿である。お互いは、お互いを侵略する事無く、ゆっくりと浸透し合う。それは精密な技の成す所。狂いの無い、厳密な手腕。一つの原理も壊す事無く、自然の中に起こる変容。最も美しい芸術。それは生命に見出す』

 ナンバー『]W』を割り当てられる【節制】のカードは、全ての原理を統合する科学。自然界の原理に通じ、それらの諸要素をバランス良く扱い、そして操作する神聖魔術。宇宙の創始以来、バラバラに引き裂かれてしまった断片を、全て統合し、第一元素へと還元する錬金術のカードでもある。
 このカードにおいては、足りない部分や過剰な部分が無く、全てがバランス良く機能している。

示唆 統合・原理・バランス・還元・科学・錬金術

 カードに描かれているのは、二つの聖杯を手にした、金髪の大天使である。彼の表情は、安定した冷静さを見せ、その視線は二つの聖杯の間を行き交う水に注目している。その水は、【生命の水】である。【生命の水】は、錬金術の奥義で作られる【哲学者の石(賢者の石)】によって作られるとされている。彼は、厳密な手順と、芸術的な巧さ、細心の注意を維持しながら、慎重に生命の水を精製しているのである。

示唆 冷静・落ち着き・厳密さ・巧さ・注意・慎重・芸術・生命・精製

 この大天使は、存在の諸要素【四大】を統合した姿でもある。彼の胸に注目しよう。四角の中に三角が描かれた象徴がある。上向きの三角は【火】の象徴。四角は【地】の象徴。
 彼が背負う大きな羽根は【風】の象徴。手に持つ聖杯と、その水は【水】の象徴。ナンバー【T】の【魔術師】と比較するのであれば、節制の天使は【達人】である。魔術師は、四大の操作者とは言え、彼から見れば、まだぎこちなさの残る【徒弟】に過ぎない。何故なら、魔術師は四大を操作するが、節制の天使は【四大】の体現者だからである。この四大を正しく理解し、正当な手順をもって巧みに扱う事が出来るのであれば、どのような願いも達成する事が出来るのである。そしてそれは、自然の中において無理が無く、まさしく達成されるべくして達成されるのだ。節制の天使の頭部には、丸の真中に点のある象徴が描かれている。これは伝統的に【太陽】の象徴でもある。太陽は心理学的には【真の自己】を意味するものでもあり、精神的にもかなり高い所に居るのが分かるだろう。彼の頭部背後には後光が差している。彼の頭部全体は、四大の頂点として存在するエーテルの象徴でもあるのだ。彼は、精神の完全体としてそこに存在している。
 注目 胸に描かれた四角と三角の象徴の上に、ヘブライアルファベットで【ヨド】【へー】【ヴァウ】【へー】と書かれている。(左から順に読む) これは、ヘブライにおける神の名前であり、テトラグラマトン(聖四文字)と呼ばれる。【口にすべきで無い名前】と言われており、本来どのように発音するかは知られていないが、ヤハウェとかイェホバーとか呼ぶ事もある。この四文字は、それぞれ四大にも対応している。(詳しくは別の機会に)

示唆 四大の体現・四大の操作・正しい手順と巧みな操作により達成する・自然な流れ
   真の自己の獲得・完全体

 さらに、カードに注目して見よう。
 節制の天使の足元には、生命の泉がある。無尽蔵に溢れ出しながらも、しかし、やはりバランスのとれた量だけが存在している。その水辺には、緑が生い茂り、綺麗な花を咲かせている。これは生命の水を吸い上げて咲いた、生命そのものの姿とも言えるだろう。例えば、この花の根が、生命の泉の真中にあったらどうだろうか。その場合は、根が腐ってしまう。如何に生命の水とは言え、過剰に与えられてもいけないのである。
さて、あらゆる生命は、この泉の中から誕生する。泉から生まれた生命は、泉から伸びる道に沿って長い道程を行く事になる。カードでも、左上へと向かい道が見える。その先には山が見え、さらにその先には、昇る太陽が見える。生命の泉から生まれた生命は、この道程を行き、更なる高みへと進むのである。生命の泉から生まれる事は、即ち誕生を意味するが、しかし、母親からの誕生とは少し違う。【]V】で一度【死】を体験した魂は、ここで節制の大天使と出会い、生まれ変わるのである。新しい人生のスタート。意識の変容の場所とも言えよう。

示唆 生命力を与えるものでも、過剰摂取は禁物
   誕生・再生・意識の変容・第二の旅・充実

 さて、節制の大天使は、【]V】で出会う【死】の大天使によって殺され、罪や穢れ諸共打ち砕かれた魂を救う使者でもある。節制の大天使は、その大空を舞う事の出来る翼を持ちながら、生命の泉から移動しようとしてはいない。四大を同化し、完全な姿であるにも関わらず、更なる先へと進もうとしてない。何故なら、彼は【死の天使】によって打ちのめされた魂を救い、その魂を更なる先へと進める為に、その場に居続ける事を望んだからである。
 仏教の用語で言えば、【菩薩行】若しくは【自未得渡 先渡他】と行ったところであろう。つまり節制の大天使は、仏教の菩薩のように、自分が救われる前に、他人を先に救う願いを持った存在なのである。それは、単なるボランティア精神とも異なる。彼には願いに対する、積極的な情熱があるのだ。それは、表面的には見えないが、しかし、内側でほとばしる情熱である。彼の羽根が赤いのに注目しよう。赤は情熱を意味する色である。彼の体は、白い服で包まれ、実に素朴であるが、その背後に宿る情熱は、想像に絶したものなのだ。

示唆 救いを得る・救いを与える・菩薩心・他人優先・献身・ボランティア精神・癒し
   隠された情熱・素朴・シンプル イズ ベスト

 何かを救うにも、様々な手段がある。救う対象にとって、その方法は様々であり、誰かに通用したものが、他の人には通用しないことも稀では無い。しかし、節制の天使は、何者であって救うのである。
 その為の方法論は、まず柔軟さであろう。また、広い視野を持って、問題を分析する賢明さでもある。また、どのような手段でも実行出来る、多才さも必要となる。彼は、何においてもオールマイティでなければならない。何事を前にしても、その対象と向き合い、思弁し、適切な方法を考えだし、そして、正当な手順を踏み、厳密な手腕を発揮する。
 抱える問題を遥かに上回る視野と、そして柔軟性が要求されているのである。

示唆 多様な手段・柔軟さ・広い視野・聡明さ・多才・万能・哲学・心理学

 節制の大天使が現れた時、貴方は救いの兆しを手にする。その兆しを、現実に捉える為には、その救いに気が付く事が大切なのだ。貴方を救うのは、誰か他人かも知れないし、何かの出来事かも知れない。本の一節かも知れないし、思いもよらず、自分自身かも知れない。一見、先行きが見えず、最早手詰まりと思えても、何かしらの活路は見出せるものである。柔軟な思考を持ち、そして自分が携える諸要素(四大)を確認し、それらを巧みに駆使して、救いを得ようとしなければならない。それには、情熱も必要なのである。このカードは、決して【諦め】を教えたりはしない。どのような問題を前にしても、丁寧に扱い、そのあるべきポジションを与えれば、バランスが回復し、新しい道は見つかるはずである。

 さて、人物カードとして見る場合、具体的にどんな性質をもって現れるだろう。
 彼(若しくは彼女)は、温和で素朴な存在でありながら、何か滲み出るような魅力を持っている。知的と言う感じでは無いものの、しかし、的を外さない聡明さも兼ね備えているようだ。人の気持ちに敏感で、その場に合う雰囲気と言葉を作り出す。ボランティア精神に富んでおり、誰かの為に何かをする事に、苦を感じない。むしろ、自分の喜びとして、人の喜びを願う。多少難点があるとしたら、他人を優先しすぎる為に、自分を疎かにしがちな点である。しかし、成長するにつれて、自分に関してもバランスを取る事が出来、何事にも無理の無い人生を送るようになる。

 もし彼を友人とするなら、貴方は幸運である。人生において、様々な救いを彼に見出す事が出来るだろう。彼の物腰の柔らかさに、心が休まり、自分自身も丸くなれる。彼の持つ特別な魅力に対して、自分が劣っているように感じる事があるかも知れない。しかし、自分の存在も、彼の助けとなっている事を忘れてはいけないし、また彼の助けになるよう心掛けるのも忘れてはいけない。生涯に通じて、大切にすべき友となるだろう。
 恋人にするには、多少難点が多いかもしれない。彼の魅力は愛するに値するが、彼自身には独占欲など無く、また誰にでも分け隔てなく接する為、貴方が恋人を独占したい・恋人に独占されたいと思うのであれば、その願いは叶わない。彼は素朴な恋愛をするので、派手なコミュニケーションも期待出来ないだろう。しかし、彼の中には情熱が秘められているので、彼と恋愛するのであれば、強い炎を燃やす事が出きる。
 仕事関係で見るなら、仕事を如才なくこなす、頼りになる上司・部下・同僚となる。全体のバランスを考えて言動するので、職場内に一人でも居れば、かなり職場環境が良くなる。彼のアイデアは、常に注目に値する。新しいアイデアでは無いが、これまでの方法を精錬したり、過不足を調整したりする事に欠けており、実に有用性がある。難点としては、柔軟過ぎて、既存のルールの枠からはみ出してしまう可能性がある事。彼は、人の話を良く理解するので、問題が発生したら、しっかりと話し合う事で解消出来るだろう。
 健康。バランスの良い生活を送るので、基本的に健全な心身を維持する。また、このカードは【癒し】を意味するので、心身の病や傷害を持ったとしても、治る方向へ向きやすい。ただ、バランスを崩せば、逆に他の人よりも抵抗力が無いと言える。病気になり、その治療を行なう際に、出来るだけ科学薬品を使用した治療は避けたい。体が持つ本来のバランスを崩した場合、問題の病気が治っても、別の病気になる可能性が高くなる。
 病気が起こる可能性が高いポイントは、主に足首である。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、意識の変容や、問題の解決法の発見。救いを得るなど、かなり明るい未来と言える。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、環境とのバランス。集団との協調。和解など。本人を取り囲む事柄とのバランスを回復させ、前進する事が示唆される。
 正位置の場合、バランスの回復から救いを得て、更なる高みに進むことを意味し、逆位置の場合は、バランスが崩壊し、様々な点で障害が発生することを意味する。