【]Y】

名称 『タワー』 『THE TOWER』 『塔』

主キーワード 破綻・崩壊・解体・衝撃・清算
         急変・天啓・閃き・再建・リフォーム

『主はシナルの地に下りて、人の作る塔を見た。人は、その塔を天の頂きに届かせようとしていた。主は言った。【あの如きでは天には届かない。彼等の不完全を正す為、塔を崩すのが良いだろう】そして塔は崩れた。人々は、己の不完全を知り、より完全を求めて世界に散った。人々は言った【主に崩された故に、立て直す事が許された】』


 ナンバー『]Y』を割り当てられる【塔】のカードは、人が人生の過程で構築して来た【不完全な個我の倒壊】。傲慢なプライドを打ち砕く、より優れたモノからの刺激。存在を束縛する、不要な制限から解き放つエネルギー。暗闇を破壊する稲妻。不完全なモノを、完全に導く為の祝福の光。神の似姿に降りる、激しい神的エネルギーの象徴と言える。

 【塔】のカードには、星一つ無い夜闇の中で、激しい雷に打たれて倒壊する塔が描かれている。
 伝統的に、このカードは災厄を意味する【凶兆】のカードと読まれがちで、事実、このカードの出現は、現実的なトラブルや不運を意味する場合が多い。
 しかし、もう少し深く探って行くと、単なる不運や災厄では無く、より新しく向上した段階へと至る為の、イニシエーション(通過儀礼)の意味合いを読み取る事が出来る。

 背景の星一つ無い夜闇は、ナンバー【]X】の【悪魔】で見られる【物質の夜】と考える事が出来る。
 【悪魔】のカードで、物質の必要性と、その拘束的な危険性を知る事が出来た。
 物質の必要性とは、現実世界での目的と意志を達成する為に使用可能な【道具】としての側面である。純粋な魂は、物質に降りる事によって、知識や経験を積み、更なる向上を得る事が出来、その為に必要な道具として物質が認められる。
 しかし時に物質は、魂を拘束し、本来の目的や意志を失わせ、その向上を妨げる場合がある。それは、様々な停滞や固着を生み、変化を拒み、淀みを作り上げ、魂を暗い殻の中に閉じ込めてしまう。
 【塔】は、その物質の拘束、魂を束縛する暗い殻の破壊を意味するカードだ。

 【塔】のカードに描かれる稲妻は、それ自体、神から直接的に発せられる純粋で強力なエネルギーであり、その稲妻が災厄や不運を意味する訳では無い。
 不完全な組織物が、その強力なエネルギーと向き合った時、そのエネルギーに耐え切れずに脆い部分から崩れ去る。その崩れ去る部分にだけ注目するのであれば、そこに災厄と不運と言う言葉を充てる事が出来るだろう。
 稲妻で象徴される神の強力なエネルギーは、凝り固まった視野・精神・環境を破壊し、それを構成していた材料を、単純な素材の状態へと戻す。その破壊を被った【主体】は、還元された素材を再び吟味し、取捨選択し、初めから構成し直さなければならない。そうやって再構成されたモノは、以前の不完全さを克服し、より完全に近いモノとして組織される。
 【悪魔】のカードで象徴された【物質】は、その必要性と貴重さを、【塔】の【イニシエーション(通過儀礼)】を経てより高め、同じく【悪魔】で象徴された【物質による魂の束縛】から脱却する事が可能となる。

 実際に、【塔】のカードをよく観察して見ると、その様子が窺えるだろう。
 描かれている塔には、三つの窓があるものの、そもそもの出入り口が見当たらない。
 塔の住人であった二人は、自分達で作り上げた建造物に閉じ込められてしまったのだ。
 その不完全な建造物は、黄色い稲妻によって撃たれ、崩壊し、閉じ込められていた二人は、落下と言う災難ではあるものの、塔から脱出する事が出来た。
 彼らが、もう一度【塔】を築こうとするのであれば、今度こそ出入り口を作る事を忘れ無いだろう。神の稲妻は、それだけ鮮明な記憶として残る事になる。

  さて、【黄色】と言う色は、象徴的に【祝福】を意味する。
  【塔】のカードで描かれている稲妻は、その【祝福】を意味する黄色で塗られている。
  これは決して【悪い兆し】では無い。【悪い兆し】では無いが、必ずしも【良い結果】を与えるとは限らない。
  この【祝福としての稲妻】は、その強力なエネルギーを受け支える準備が整っている者にのみ、新しいより高い段階へ至る梯子を与える。
 暗闇の中で閃く稲妻の鮮烈な光は、全ての隠されたモノを、ほんの一瞬の中で露わにする。ほんの一瞬ではあるが、準備の出来た探求者にとっては充分であり、その経験を強い確信・信仰として、まだ続く暗闇の中を進む為の杖として、光に向かって進んで行く事が出来る。

 【塔】のカードが出現した時、そのカードは当事者に対して【準備良いか?】と問い掛けている。しかしながら、【NO】と答えようが【YES】と答えようが、殆ど関係無く待った無しで雷は落ちて来る。
 雷が落ちるのは一瞬だが、その影響の長さはまちまちだ。
 一瞬のうちにペシャンコになる場合もあれば、ゆっくりと外装から剥がれ落ちるように、長引く場合もある。
 このカードと取り組むのは、正に自然災害と取り組むのに似ている。
 例えば日本に馴染み深い【地震】を持ち出すとして。
 【地震】は突然やって来る。予告などしてくれないから、常に備えをしておかなければならない。
 【地震】は、時と場所を選ばない。だから、誰もが備えをして置かなければならない。
 【地震】が起これば、脆い家屋から倒壊する。耐震性のある、しっかりした家に住むか、若しくは、【地震】が起きた時に安全に速やかに非難する手立てを考えなければならない。
 【地震】によって破壊された後、いつまでも嘆いていた所で、新しい家屋が生まれて来てはくれない。その事実を受け入れ、同じ災難に遭わないように考慮しつつ、自分から家を建て直さなければならない。
 【塔】のカードと取り組むのは、正に【地震】と取り組むのと同じと言える。
 鑑定上で【塔】のカードが出る前から、可能な限りの準備をして置くのが良いだろう。
 また、【塔】のカードが襲って来た時、柔軟に自分を変化させる心構えも必要となる。

人間関係 取り繕った不完全な関係は、【塔】のカードによって破壊され、掻き回される。集団はバラバラにされ【個人】に戻り、そこから再び構築し直される。その時、古い一部の人間が去り、新しい人間が加わる事がある。

恋愛関係 パートナーとしての条件が充分に満たされていない部分に焦点が当てられ、そこに【稲妻】が襲う。その焦点は、お互いの信頼関係であったり、不誠実な想いであったり、遅々として解決されない環境問題であったり様々だ。結果、二人は【個人】に戻され、そこから再度関係を構築し直す事になる。その時、二人の距離が以前よりも近くなり、より一体感が増せば成功と言える。失敗した時は、もはやパートナーとしては成立せず、お互い【個人】として別々の道を歩き出す。
 パートナーが居ない場合、一目惚れを意味する事もある。

仕事 自分の立場や能力、スタンスに焦点が当てられ、そこに稲妻が襲う。例えば、大きな失敗により、周囲からの信頼を失う場合がある。また、自分が正しいと思った事が、根底から覆される場合もある。また、自分の能力では乗り越えられない壁が立ちはだかり、自尊心が崩される場合もある。新しい考えやシステムに、自分の古い考えが突き崩される事もある。いずれの場合も、それを再構築するチャンスが与えられる。信頼が失われたら、より誠実に仕事に励み、新しい信頼を勝ち取る事が出来る。その時は、過去の汚名を乗り越えた事も含めて、周囲からより大きく見直される。自分の信念が覆されたら、そこに柔軟な意志を加える事により、信念を取り戻す。その時、その信念はより成熟したモノとして再生する。能力の限界から自尊心が崩されたら、より高い能力を獲得し、新しい自尊心を得る事が出来る。より高い能力を得るには、修練し直す必要があり、その過程で謙虚さも思い出す。新しい考えに、自分の古い考えを突き崩されたら、新しい考えを受け容れつつ、且つ古き良き知恵も受け継ぎ、より成熟した考えを生み出す事が出来る。【温故知新】
(※職を失ったり、地位を失う事もあるが、準備が出来ていれば、新しい場所と時間で、自分に相応しい職と地位を獲得する事が出来る)

健康 不摂生が祟り、大事にしていなかった場所から疾病が発生する。体調の不良を感じた時、速やかに対処(病院に行く等)すれば、治療する事が出来る。但し、体調の不良を感じても、速やかに対処しなければ、それは再構築の放棄と見做され、手遅れとなる場合もある。※必ずしも、生命に関わるとは限らない。
 事故などで、身体的外傷を負う場合がある。その場合、【塔】の影響は健康に焦点が当たっている訳では無く、他に対する【塔】の影響が、結果として【事故】と言う現象を引き起こしたと解釈する場合が多い。主に、精神的な部分へ【塔】の影響がある時。
 心理面に対して焦点が充てられると、価値観の崩壊や、自尊心の破壊、トラウマの発生などが考えられる。心理面の再構築は、かなりの辛さを伴う場合がある。達成すると、全人格的な成長が見られる。稲妻の衝撃に耐えられない場合、自虐的な行為として、破壊の結果が表面化する。
 注目すべき身体的部位は、腿(もも)。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、凝り固まった視野や精神の破壊と、より柔軟な視野と精神の再生。拘束からの精神の開放。精神の暗闇を照らす、一瞬の閃き。不完全な自分を解体し、新しい自分を作り上げる時期を意味している。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、現在の立場・地位・スタンス・人間関係・健康などに関して、未熟な部分の崩壊と、その後の再生。準備の必要性を示唆する。
 正位置の場合、強烈な変化と、それに伴う破壊に焦点が当たり、逆位置の場合は、破壊された素材を、再度構成し直す時期に焦点が当たる。