【]]T】

名称 『ワールド』 『THE WORLD』 『世界』

主キーワード 完成・達成・成就・総和・全体性・循環・変容・至福・高貴・真・善・美

詩句 【起源回帰】
【長き旅が終わる時、目の前に広がる懐かしき故郷。見慣れたはずの街並みが、新しいモノの如く目に映る。立ち戻りし旅人の、完成された世界がある。】


 ナンバー『]]T』を割り当てられる【世界】のカードは、起源たる【神の炎】へと回帰した【全き人】が、完成された世界の中で、喜び踊る情景。【全】を【一】へと統合し、二律背反とあらゆる矛盾を和解させ、欠けたモノの何一つ無い、神の似姿としての【真なる人間】の表現。完成の証として、月桂樹で形作られた輪の中で踊る。その輪は、完結した世界の表現でもあり、また、到達に至ったモノが、新たな旅に備える場所としての卵・子宮の表現でもある。

 【世界】のカードの中央には、両手に白いバトンを持ち、軽妙にダンスを踊る裸の人物が描かれている。
 その裸体を見ると、一見して女性のようにも見えるが、伝統的には【両性具有】の人間と考えられる事が多い。【両性具有】は、西洋の精神的伝統の中でも、【完全】の象徴として捉えられる事が多く、錬金術等の業界等でも用いられる。男女や陰陽を代表とする二元論を超え、その両者を矛盾無く併せ持つ存在として、【統合】と【完成】の表現と見做される。
 二元論を超えた存在として、別の表現をされるモノも存在する。例えば、一神教における【天使】等は、【無性別(セクサレス)】と考えられて来た。
 しかし、【無性別】と【両性具有】の間には、象徴的に重要な差が存在している。
 【無性別】には、【男女】の二元論以前に、【性】と言う概念が存在しない。その為、子孫を残すと言う【生殖能力】は無く、創造的な力を有しないと見做される。
 【両性具有】の場合、男女の両性を有している為、そこには【生殖能力】が存在し、創造的な力を有していると見做される。
 男女の二元論を超えた存在としての【天使】と【神】の差は、そこに創造的な力を有するか否かであり、また、【神】が、【天使】と言う忠実な僕が居るにも関わらず、自身の似姿として【人間】を創造したのも、【創造力の創造】と言う意図があったからと考えられる。

キーワード 到達・完成・完全・完結・繁栄・創造性・矛盾を解決する

 カード中央の人物は、その両手に白いバトンを持っている。このバトンは、【T 魔術師】のカードにも描かれている。
 バトンに限らず、あらゆる【棒】に属するモノは、すべて【意志】の象徴と見做される。そして、その【棒】の形態や扱われ方によって、【意志】の形態や扱われ方の表現がなされる。例えば、【杖】と言う形で表現された場合、【前進する事】に対する【意志】と見做され、【錫】と言う形で表現された場合、【支配する事】に対する【意志】と見做される。
 【T 魔術師】や【]]T 世界】で描かれている【バトン】は、【意志の操作・コントロール】の表現である。
 創造的活動を行う際には、明確な意志とそのコントロールが必要であり、それによって、創造の諸段階が制御され、進展して行く事になる。

 それでは、【魔術師】と【世界】の差は何だろうか。
 【魔術師】のカードでは、一本のバトンが描かれる。魔術師は、学んだ通りの所作を行い、慎重にバトンを操り、創造的活動を行う。しかしそれは、創造的活動の元祖である【神】の模倣に過ぎず、既存の道をなぞっているに過ぎない。その作業は、非日常の特別な作業であり、実践する上で、かなりの労力を伴っていると考えられる。
 【世界】のカードの場合、バトンは二本描かれ、中央の人物の軽妙なダンスと共に、自由自在に振り回されている。そのダンスは、歓喜とその衝動が体を突き動かすのであって、新しく、独創的なモノだ。また、バトンを操るのに労する事は無く、日常的な振る舞いの一つとして扱われている。
 例えば、【魔術師】の行う作業が【創造的活動】であると考えた時、【魔術師】は意識して【儀式】を行うが、【神】は意識せずとも、その日常的な振る舞いが、自然と儀式としての機能を持つのである。

 さて。
 【世界】のカードは、欠けたモノ全てを統合して、【神の似姿】に回帰した瞬間を表現しては居るが、現実的に考えて【神=人】とするのは飛躍し過ぎだろう。
 実占上では、現実的な制限が掛かって来る。
 中央の人物は、月桂樹によって構成された【輪】の中に居る。この【輪】は、完結した世界観を意味するモノであり、その世界観の中に限って、その人物は【万能】と成り得る。
 鑑定上、仕事に焦点を絞るのであれば、その仕事や職種・職場に限定して【世界】の影響が出て来ると考えるのが妥当だ。逆に、その枠から外れた部分については、通常と何ら変わらないのである。

キーワード 自然な創造活動・(限定された)世界観の中での万能・自己の領域

 今度は、少し視点をズラし、月桂樹の外側にも注目して見よう。
 四つの生き物の顔が描かれている。
 これは【] 運命の輪】のカードにも描かれた、【ケルビム】と呼ばれる天使達である。
 造物主の周囲で神を賛美する歌を歌い続けるとも、また、世界の周囲を回転する事で、宇宙の渦を形成しているとも言われる天使である。
 それぞれが、四大の一つを担当し、互いに働き合う事によって、世界が運営されて行く。
 【運命の輪】に描かれた【ケルビム】達は、その全身が描かれ、手には書物を持って居た。
 しかし【世界】のカードでは、顔だけが描かれている。
 伝統的に、高位の天使は顔だけの存在として描かれる事が多い。
 【運命の輪】で描かれた天使達よりも、より高い領域で働いている天使と見做す事が出来るだろう。また、運命の記録者としての役割があった為、手に書物を持っていたが、【世界】のカードに至っては、その必要も無くなる。
※【運命の輪】では、その運命の中で、人がどのように生きたかを記録する為に、ケルビム達は書物を所持している。その書物は、【]T 正義】に手渡され、その記録に従って審判が下される。【世界】は、その審判を通過した後である為、記録は既に存在しない。
 【世界】のカードにおける【ケルビム】の役割は、達成者への賛美と、世界の運営にあると考えられる。

【愚者の旅】

 タロット大アルカナ22枚を、【0 愚者】から始まる【旅】と例えた時、【]]T 世界】は、その到達点と見做される。
 旅の始まりにおいては、無限の可能性を持ちながら、【無知】で、現実的な力を持ち合わせ無かった【愚者】も、内在する女性性・男性性・母性・父性等に触れ、一歩一歩成長を繰り返して行く。
 少しずつ成長し、現実的な力を手にする反面、背負うモノは大きくなり、可能性も限定され、魂の純粋さも失われて行く。
 【] 運命の輪】を潜ると、旅前半の清算が待っている。【正義】に裁かれ、【吊るし人】で刑に処され、【死神】に出会い、象徴的な【死】を迎える。
 旅の後半は、肉体を捨て、魂の領域を行く事になる。
 【節制】において準備を整えたのも束の間、【悪魔】によって、再び肉体へと誘惑される。
 【塔】の雷によって鎖から解放されるが、それでも魂の夜明けは来ない。わずかに見える【星】の光だけを頼りに、暗い砂漠を進む事になる。
 【月】の門前で、大きな不安に悩まされる事にもなる。過去の幻が目の前に現れ、懐かしさと共に、来た道を引き返したくもなるだろう。
 ただ一歩。
 その門を潜る事が出来るかが問題だ。
 門を潜ると、枯渇した生命を満たす眩い光と出会う。今までとは違う【太陽】に歓迎され、かつての幼い姿を取り戻す。魂も純化される。大天使のトランペットを合図に、最後の【審判】が始まる。これまでの旅の過程全ての評価を得る。
 そして、ようやく、旅の目的地に到達する。その目的地が【世界】である。

 さてしかし、この【到達】は【原点回帰】でしか無い。
 月桂樹のよって形成された、完結した【世界】は、同時に、孵化する前の卵でもある。
 完結した【世界】は円によって表現され、卵もまた円によって表現される。それは完成であると同時に0(ゼロ)。潜在的な生命の暗示としての0(ゼロ)。
 そこは、新たなる【0 愚者】の【始まりの時】でもあるのだ。

 【運命】のサイクルが一つ閉じられる。
 閉じられた瞬間、その【サイクル】は、一つの円を形成する。
 始点と終点は同じ。それが【円】の特徴だ。
 閉じた【サイクル】は、そのまま新しい【サイクル】の卵となる。

 【人は、何処から来て、何処へ行くのか】と言う命題がある。
 タロットは、この難しい問いに対して、このように答えるだろう。
 【これから行く場所から来て、元居た場所へ行くのだ】と。


人間関係 自分が意識出来る範囲に限り、安定した人間関係を形成する事が出来る。人付き合いの上で生じる【矛盾】や【対立】を改善する事が出来、同時に全体性が出て来る為、何か物事に取り組む時、周囲の協力を得易くなる。特別意識する事無しに、周囲の人間と歩調を合わせたり、意見を合わせる事も容易になる。但し、自分の意識する範囲内で、全体的な結束や、思想が纏まる反面、その範囲外との格差が強くなる傾向にある。所謂【派閥】が出来やすい。【世界】のカードは、【完結した世界観】を暗示しており、その内部において統合・統制されてはいるが、周囲から見ると偏っている場合も少なくない。その為、周囲に対する偏見や先入観が生まれ易い時でもある。運勢的にも勢いに乗っている時期である為、無意識のうちに調子付き、周囲に敵を作って居る可能性もある。この部分の問題は、直ぐには影響して来ない為、気付きづらい傾向にあるが、後々の為に、注意する必要がある。

恋愛関係 【世界】のカードは、到達・達成・完成を意味する為、主に【恋愛の成就】と読んでも問題は無い。また【完結した世界観】と言う意味がある為、【結婚】と言う意味にも取られる。但し、周囲のカードや、それまでの過程を吟味する必要がある。本人が明確な意志を持ち、方向性を定めて現実的な行動を行って来たのであれば、その道のゴールとして、恋愛は成就し得る。しかし、片思いの恋愛で、全く動かずに想っているだけであれば、その恋愛は、その姿のままで完結する。一度完結してしまったモノに、続きは存在しない。また、交際している相手が居る場合。お互いに向き合い、意志して未来の事を考えてるのであれば、結論として【結婚】に行き着くと判断する。但し、未来の事を考えず、お互いに向き合ってもいないのであれば、現時点の関係性で【完結】すると判断する。今後、それ以上の関係にも、それ以下の関係にもなり辛い。【世界】のカードは、あくまでも【意志(行動を起こさせる、強い思い)】を基準とした【創造活動】である為、明確な【意志】が無い場合に、達成は有り得ないと判断する。

仕事 無職の場合、明確な方向性を持って就職活動をしているのであれば、自分の望みにかなり近い職を見つけ、働き始まる事が出来る暗示として捉える。適職等を問われた場合は、主に、過去に経験のある職種を勧める。但し、前職場において、ある程度の成果を成し遂げ、新しい道を進もうとしている場合には、全く新しい職種でも問題無いと判断する。(※この場合、【愚者】に近い解釈となる。)職場内において、人間関係の安定・統合の兆し。何らかのプロジェクトに携わっているのであれば、その成功の暗示。働き始めたばかりであれば、職場が安定している事の暗示、若しくは、力を注げば、その職種を極める事が出来る暗示。【完結した世界観】と言う意味がある為、専門性に偏る傾向がある。但し、外側に向かう意志がある場合には、グローバルと言う意味合いも出て来る。経営者の場合、基本的に安定した全体性を構築出来ると判断するが、【法王】や【悪魔】と言った【固着】のカードが隣接すると、時代遅れ・マンネリ化と言った意味合いに転じる。専門分野での事業拡大には良いが、専門外の分野に手を出すと失敗し易い。

健康 【世界】には、【完全なる精神と肉体】と言う意味合いがある為、基本的には健康の証として判断する。体内の機構が、全体性を持って動いていると判断する為、現時点では、一番安定した体調と見做す。例えば、何らかの疾病・持病を持っていたりしても、現時点で維持出来る最良の状態と考える。何らかの病気を持っている場合、自分の生活圏内で、良い病院・医師を見つける事が可能。また、既に特定の病院・医師に掛っているのであれば、そのまま継続する事で改善すると考えられる。【世界】は、【運命の到達地点】と言う意味合いもある為、人生の終わり(死)を意味する事もある。特に重傷の場合や、かなり高齢の場合には、周囲に【死】を暗示するカードが無いかに注意する事。【世界】のカードが関わる時点で、尊厳ある死(大往生)と判断する事が出来る。【法王】【恋人達】【正義】【節制】【太陽】等と隣接する場合、治癒の意味合いを強化される。

 精神性や将来などの希望に論点を置く場合は、精神性の調和や統合、意志の確立とコントロール、精神的充実、達成感等、自己内的機構の統合・安定を意味している。社会性など実質的な問題に論点を置く場合、創造的活動、目的の達成、世界観の確立、環境の安定化等を示唆する。
 正位置の場合、過去の努力に応じ、その目的の達成が得られ、自分を中心とする充足した世界を構築する事を示唆し、またそれに伴う、自身の内的成長に焦点が当たる。逆位置の場合は、明確な【達成】が得られず、その曖昧とした状態を【結論】と認識され、不安定な世界観のまま固着してしまう恐れがあり、それに伴う不安定な自己内的機構に焦点が当たる。