ソフトハックルフライをご存知でしょうか?大昔からあるパターンにもかかわらず案外知られておらず、使っている人は少ないでしょう。私は通常のウェットフライに反応しないスレた魚によく使います。「ありゃ、掛かってしまった」ということがけっこう起こります。
私がソフトハックルフライに興味を持ったのは、’95年にシルベスタ ネイムという人の著書を手にした時でした。それまでパターンブックに申し訳程度に載っていたソフトハックルフライが突然、別の意味を持つようになってきました。「これは使える」と思い、いくつかのパターンを巻いてみました。結果は驚くべきものでした。
ここでは、ソフトハックルフライの巻き方、代表的なフライを少々、私の釣り方を紹介します。
まずスレッドですが、これはソフトハックルフライを巻く時、非常に重要なボディのマテリアルになるので、必ず純粋なシルクのスレッドを使います。右の写真の小さいボビンはゴッサマーというフライ専用のスレッドですが、田舎ゆえなかなか手に入りません。そこで私は恥を忍んで手芸店に行き、まわりの女性や店員の冷たい視線に耐え、オリヅル印のミシン絹糸を買って使っています。
ゴッサマーに比べるとちょっと太いのですが、色も豊富で十分使えます。長さは何と100mもあり、いつ買ったのかを忘れる程の間、使えるでしょう。手芸店にはマイラーチューブ、ウール等他にも使えるものがけっこうあります。花屋さんにはピーコックやアムハーストテイルがあります。
それでは巻いてみましょう。例としてオレンジ&パトリッジのソラックスファー付きを巻いてみます。
写真のフックはパトリッジのL4A #14です。ドライ用のフックでも、ウェット用のフックでも特に問題はないと思います。こだわる方はパトリッジのCODE A を使いましょう。
まず、ファウンデーションと同時にボディを作ってしまいます。私はこのフックサイズの時は、三度シャンクの上にシルクスレッドを巻くことによって、ボディを作ります。最後にヘッドに戻る時、リブの様に巻くのは気持ちの問題です。ぼってり巻きたければ往復回数を増やし、サラッと巻きたければ一度でもOKです。
次にブラウンハーズマスクを使ってソラックスを作ります。私はソラックスの大きさをこの程度にすることが多いのですが、特にこだわる必要はないと思います。
シルバーパトリッジフェザーのフックサイズにあったものを選び、左の画像の様に結びます。フェザーの根元の方から巻く人もいるでしょうが、私はストークの太い方でヘッド付近をしっかり押さえたいので、フェザーの先の方から巻きます。
ぐるりとファーの前の部分にパトリッジを巻きます。この時、ハックルが立ち上がるように巻くと水中での動きが良くなり、魚を誘惑します。ぺタッとならないように巻くのがコツです。
ストークをカットして、ヘッドを作れば出来上がりです。ヘッドはスレッドにワックスをしっかり効かせて巻き、ハックルが起き上がるようにします。ヘッドセメントは使っても使わなくてもOKでしょう。ハーフヒッチを数回すれば充分です。
という風に非常に簡単で、ウェットフライは・・・という方でも巻くことが出来ます。慣れてくれば、一個巻くのに2、3分もあれば出来るようになります。
通常のウェットフライのボックスが寂しくなっている時や、明日の釣行のための大量生産を迫られたら、ソフトハックルフライを試してみましょう。
なお、この巻き方はシルベスタネイム氏のオリジナルの巻き方とは少し違っています。
|
ボディ:パープルシルクスレッド |
|
ボディ:オレンジシルクスレッド |
|
ボディ:ピーコックハール シルベスタネイムのオリジナル |
|
ボディ:イエローシルクスレッド |
|
ボディ:ピーコックハール |
いずれもハックルの量を加減することによって、あっさりしたフライとボッテリしたフライに調整出来ます。ボディカラーを変えることによって、ハッチしている昆虫に合わせることも可能です。ピーコックボディはテレストリアルとしても使えるでしょう。水面下数センチを流れるフライの破壊力を是非、お試し下さい。 |
上のフライはたくさんあるパターンのごく一部です。この他にも私の使っているフライはありますが、巻き方はいずれも簡単なものばかりです。ちょっと特殊なマテリアルもありますが、代用品でも充分でしょう。その時にハッチしている水棲昆虫に似せた自分のパターンを作ることもさほど難しくはないでしょう。興味をお持ちの方は右の写真の本を読んでみて下さい。
シルベスタネイム氏の書いた本ですが、パターンや釣り方も載っています。英語はちょっと・・・という方もパターンブックとして使えます。たまには辞書と首っ引きで、脳みそを沸騰させるのもいいかもしれません。
右の本は「The Soft-Hackled Flies」 著者Sylvester Nemes。 ISBN 0-8117-1670-8です。左の本は「The
Soft-Hackled Fly Addict」 ISBN 0-8117-1671-6です。
彼の姿は私の「理想の爺」です。
99年8月記
シルベスタネイム氏は2011年2月3日、モンタナの自宅で亡くなりました。私はこれを知り、2011年はソフトハックルフライをもう一度見直して使ってみようと思いました。
彼の著書はまだネットの発達していなかった90年代中頃、頭打ちになって困っていた私のフライフィッシングをずいぶん助けてくれました。地球半周離れた国に住む片田舎の一フライフィッシャーに過ぎない私ですが、その教科書の筆者である彼の死を悼もうと思った次第です。ティペットにソフトハックルフライを結ぶ度に、この写真の彼の顔を思い出しました。
しかし、しつこく徹底的に使ってみると意外な性能が見出され、さらに深みにはまってしまったようです。要するに解ったつもりで使っていて、全く解っていなかっただけです。このフライ、多分一生使っていくことになるでしょう。
11年11月記
私はソフトハックルを使う際、ドライフライのように使うことがあります。アップに投げる時、あまり強くターンオーバーさせず、ふわりと着水させると、ハックルを多めに巻いたソフトハックルフライは、ドライのように浮いてくれます。上のシルズミッジはドライとしても使えるように巻いてあります。何ならフロータントを塗ってもOKです。こうして自分のサイドまで流れて来る間ドライとして使い、ドラグをかけて沈め、サイドからダウンにかけてウェットとしての本来の使い方をします。フロータントを塗ったフライを無理矢理沈めると、気泡をまとったダイビングカディスにも見えます。ハックルを開閉させるため、軽くグリップを左手で叩くのも一手です。
水面上にある時はサーフェスフィルムという膜を通して魚に見えるので、サイズや雰囲気があっていると、このいい加減なフライでも勝負が出来ます。ドライフライは沈んでしまうと魚にとって警戒の対象になりますが、ソフトハックルは沈んでからが本来の姿です。
「俺はドライ一本だ」という方からすると、トンでもない釣り方でしょうが、私のようにナマクラな奴にとっては渓流を釣り上る時、とてもラクチンな釣り方です。好き嫌いはあるでしょうが、こんな釣り方を頭の隅に入れておくのも悪くはないと思います。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
花鳥魚月 |
ご意見、ご感想は flyman●octv.ne.jp 巡回ロボットによるメールアドレスサーチ防止のため「@」を「●」に置き換えています。 お手数ですが、コピー&ペーストをしてアドレス中の「●」を「@」に打ち直して送信して下さい。 |