熊谷温泉


朝靄の糠平湖他の人はどうか知りませんが、私に とって糠平湖(ぬかびらこ)は釣れません。 一発大物を狙って行きますが、大抵「今日んとこは、こんくらいにしといたる」と捨台詞を吐きながら、ロッドをたたみます。何故、 ここまで釣れない湖に通うのか? やはりバカなのでしょうか? それもありますが、実は湖畔に温泉があるのです。 更衣室なし、洗い場なし、水道なし、あるのはでっかい自然の風景だけ・・・。
熊谷温泉湯船もともと、この温泉は’57年に糠平ダムができた時、水没した熊谷温泉という宿の泉源なのです。秋の満水時には水没して入れず、知る人ぞ知る秘湯なのです。ご覧の通り怪しげな木の湯船と、もっと怪しげな五右衛門風呂の釜が一つずつあるだけ。湯の温度が50度以上あるので、そのままでは入れません。湖水の水量が多い時は、水際が近いためバケツで水を運ぶのもそれほど大変ではありませんが、渇水期は入浴できる温度まで下げるのが一苦労です。 しかし、冬のワカサギ釣りなどで冷え切った体にこの温泉はまさしく極楽でした
熊谷温泉五右衛門風呂「でした」と過去形で書いたのは昔のことになってしまったからです。国立公園内に違法構築物として存在し続けてきた熊谷温泉ですが、'98年ついにお上によって撤去されてしまいました。何故今になって突然、という疑問の答えは、景観上問題あり、との事でした。景観上の問題なら不必要なダムや、 工事のために工事をした護岸工事の方がよほどひどいと思うのですが・・・。熊谷温泉の他に、然別湖(しかりべつこ)の近くにあった同様の温泉も、お上の餌食となり、あえなく撤去。われわれ下々の者には尊いお上のご意向は計り知れません。
廃虚この一連の新聞記事を読んでから、私は熊谷温泉に行く気がしませんでした。あの風呂がなくなってしまったのか、と思うと情けないやら、腹が立つやら、やりきれない思いでした。意を決して訪れた熊谷温泉跡には写真の通り石ころがあるのみで、往時を知る私には言葉もありませんでした。

石をよけて掘ってみるとかすかな硫黄の香りとともに、温泉が少し溜まりました。ああ、湯船は無くなってしまったけど、温泉は死んでいないのだな・・・。手を湯に浸しながら、私の中で、この小さな湯溜りに湧く温泉のように、ある決意が湧き上がってきました。


――追記――
最後のある決意とは、穴を掘って温泉を復活させてやろうというものでした。しかし、4枚目の画像の状態はそれほど長く続きませんでした。熊谷温泉のファンは私だけではなく、その後湯船などは設置されませんでしたが、地面を掘って回りに石を組んだ温泉が出来上がりました。   2002年5月


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