フッキングを考える




二風谷の遺跡で発見された釣り針釣りをやっていて、悔しいのがバラシです。特に魚体が見えて、もうちょっと と言う所で外れてしまうのは、たまりません。また、ゴッツンと来た後、しばらくやり取りをしていて、フッと軽くなる・・・いずれも私たち釣り人の負けです。しっかりフッキングして、バラシをいかに少なくするか・・・これはウェットフライフィッシングをやっていると自然と考えてしまうことです。

釣りのフックと言うものは銃器と同様、発明された瞬間に完成されたものです。ご覧の画像は北海道の遺跡で発見されたものです。この他にも動物の骨で作られたフックをご覧になったことがあると思います。

掃除機とフックフックとはどういうものかを知るために実験をしてみましょう。バカバカしい実験ですが、フックが如何によく出来ているかを確認するのも悪くありません。
まず、掃除機の先を取ってスイッチを入れます。これは魚が吸い込んでいる状態を再現しています。画像のようにフックを口に入れてみて、口に対して横に引っ張ってみましょう。どういう方向に引っ張っても、自動的にフックポイントが口に刺さるようになっています。もちろん下に引っ張れば絶対に掛かります。ところが口に対して上に引っ張ってみれば、簡単に抜けてきます。ここから先を読む際、これをまず頭に入れておいて下さい。「当たり前」のことですが、これがフッキングを考える上で重要なポイントになってきます。


先にかろうじてかかった私の考える理想のフッキングポイントは口の角から唇にかけてです。サケマス類は30cmから40cm程度の大きさなら口の骨もそれほど硬くなく、何とか貫通させることも可能です。左の画像はその例で大マグレです。ところがもっと成長すると骨が硬くなり、口先にフックを貫通させることは、後ろにひっくり返るほどの大アワセやスパゲッティのようなティペットを以ってしても、不可能に近くなります。
フックポイント先っぽ)がチョコッと掛かった状態では、ちょっと頭を振られたり、えら洗いをされると外れますし、もっと強い力がかかると、フックを伸ばされたり、折られたりします。フックと言うのはその形状から考えても解りますが、ベンド(曲がり)の部分で掛かってはじめて本来の強さを発揮するようになっています。

いい所に掛かった口の角なら貫通しやすくもちろんバレにくい所です。ご覧のように唇状の所も、安心してファイト出来る所です。ここならそっくり返るほどの大アワセも必要ありませんし、一度掛かるとはずすのが難しいくらいガッチリと掛かってくれます。ファイト中もベンド部分が力を受け止めてくれるのでフックが伸びたり、折れたりということもありません。

私はシューティングヘッドがロッドのトップガイドに入り、魚の姿が見えた時、どこにフックセットされているかをまず確認します。たいていの魚はヘッドがトップガイドに入った頃から根性を入れて暴れ始めます。この部分にフックセットされていると、その後安心してファイトできる所です。

さて、ここからが本論・・・如何にしてこの場所にフックをセットするか、です。

まず、掃除機の実験を思い出してみてください。魚はフライを食べる時、噛み付くわけではありません。口を大きく開き、水と一緒に吸い込んで捉えます。その時、魚の口の中でフックはまだどこにも刺さっていません。ここで真ん前からフックを引き抜くように力を加えたらどうなるでしょうか? 下手をすればすっぽ抜け、上手くいっても口の上下いずれかの先っぽにかする程度です。しかし、横からまたは後ろから引っ張ればどうなるでしょうか? 見事に口の角か横にガッチリ貫通するはずです。

アップのフッキングアップストリームのウェットフライフィッシングでは、この後ろから引く、というのが簡単に実践出来ます。また、サイドでは横から引くことになります。
魚は異常を感じると反射的に上流に逃れようとします。しかし、ラインは水の流れに乗り、下流に流れます。この相乗効果で、ますますいい場所にガッチリと掛かります。
つまりアップ〜サイドでウェットフライフィッシングをやっている分には、フッキングは特に問題になることはありません。掛かってくる魚はたいていいい所にフックセットされているはずです。


ダウンのフッキング1そこで問題のダウンでの釣りです。ウェットフライフィッシングをやってみて、アタリはあるけど乗せられないので面白くない、と言う方が多いと思います。また、乗ってもファイト中にバレてしまい、ランディング出来ないことが頻発します。

左の図をご覧下さい。この状態でアワセたら、魚の口から真ん前にフライを引っ張り出しているのが解ると思います。掃除機の実験を思い出してみましょう。これではまともに乗る訳がありません。乗っても綱渡りのようなフックセットで無事ランディングまで持っていけるのは、よほど日頃の行いが良い人でしょう。


ダウンフッキング2では、ダウンの釣りではどうアワセればいいのでしょうか?---アワセないことです。目の前に私がいたら、殴ったり蹴ったりしたくなる答えですね。アワセない、と言っても即アワセをしない、と言うことです。上の画像で魚は、まだフライを水と一緒に口の中に入れただけです。これがアタリとなって伝わってきます。この状態では「オリャ」とアワセないのです。

ちょっと我慢して待って左の画像のように、ラインとリーダーを魚の下流に送り込みます。ロッドティップを下げてラインを送り込むのも、適当なラインスラックが出来て効果的です。その頃、魚はフライを異物と判断し、吐き出そうとするでしょう。しかし、時すでに遅くフックは口の角か横にセットされます。後は「よっこらしょ」っと軽くロッドを立てれば、フッキングは完了です。この時、アップストリームのウェットフライフィッシングと同じことが起こっているのがお解りになるでしょうか? つまり、ラインが下流に流れる重さを利用してアワセるのです。

アップストリームでは魚がフライを捉えた最初のアタリが手に伝わってこないし、見えもしません。だから、リーダーに異常が現れるまで、私たちには魚がフライを捉えたことが解りません。これが自動的に遅アワセを実現させてくれるので、アップからサイドは乗りがよく、フッキングもよい訳です。ところがダウンでバラシが多いのは、最初のアタリがモロに手に伝わって来てしまうので、反射的にアワセてしまうためです。最初のアタリをアワセず、グッと我慢してズッシリとかグングンというアタリが出るまで待てば、フッキングは格段に向上するはずです。

十勝川でのダブルハンドしかし、これは言うは易し、でアタリがあれば反射的にアワセてしまうのが、釣り人の性です。そこで頭の中でシミュレートしておくことをお薦めします。「アタリがあれば、ロッドティップを送り込む」と呪文のように頭の中で繰り返し、ダウンでアタリがあってもアワセない癖をつけなければなりません。練習あるのみ・・・です。しかし、かく言う私も思わぬところでアタリがあると、まだ体が勝手に動いてしまいます。

流しきってフライが釣り人の真下に来た時をテールエンドと言います。ここでは釣り人、ライン、魚が一直線になるので、アタリがあってもなかなか乗りません。テールエンドにフライが来るまでの間に食わせることがベストです。ターンをかける、フライをストップさせる等の操作で魚を誘い、食わせるべきです。テールエンドまでフライが行ってしまったら、そのキャストは終わったと判断すべきです。その後のアタリはマグレで乗るかもしれない、とでも思っておきましょう。一応、送り込んで一拍おいてアワセると、ちょっとは確率が上がります。



湖での釣りここまで読んで「なるほど」と思われたでしょうか? しかし、これはあくまで理論上の話です。アップで釣った魚なのに、フックが何故か口の先に掛かっていたり、テールエンドでヒットしたのに口の角にガッチリ・・・と頭を抱えたくなることが起こります。

また、釣り人、ライン、魚が一直線で乗りにくいのなら、湖などの止水の釣りでは魚を釣ることは不可能になります。しかし、実際湖でリトリーブしていると、ちゃんと口の角か横に掛かります。活性の高い魚は積極的にフライを追い、反転しながら捉えます。これが水中でフライを追う時に起こってくれればOKなのです。フライを魅力的に見せ、魚にやる気を起こさせ、猛然とフライにアタックさせるとしっかりしたフックセットが出来ます。


頭の中で、今魚がフライを追っている・・・ここでターンをかけて魚を誘う・・・ゴンと来たら、送り込んでおいてアワセを取る・・・自分のいる場所、魚のアタックした場所を考えるとここにフックセットされている・・・とすべてシミレートしてヒットすれば、その結果が
20cmであっても、それは
釣れた魚ではなく釣った魚です。堂々と胸を張って写真を撮り、リリースしましょう。



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