子孫のために

倒木の上に育つ稚樹私は釣りに行って釣れないと、すぐにフィールドウオッチングを始め、森の中でいろんなものを見て楽しみます。鳥、動物、植物、または動物や鳥が残した痕跡等、時間を忘れて森をうろつきまわります。上を見て、下を見て、時には立ち止まって鳥の声に耳を澄ませ、木の肌触りを楽しんだりと、目的らしい目的もなく、ふらふらとします。

そんな時に北海道の森の中では、よくこんな風景を見かけます。エゾマツ等の倒れた木の上に稚樹が並んで育っています。ところがまわりをよく調べてみても、地面から生えている稚樹はほとんど見当たりません。クマ笹が一面に生えており、あとは大きな木ばかりです。 なんとも妙な木の生えかたです。

鬱蒼とした森の中森にはたくさんの木があり、一様に種子を付け、動物や鳥や風で回りに撒き散らされるはずです。なのに何故、森に均一に落ちたはずの種子が地面からは全くと言っていいほど生育していないのでしょう。

実は地面には、冬に雪の下で猛威をふるう暗色雪腐病菌という、種子にとって致命的な病気をもたらす菌がいます。地面に落ちた種子は、冬の間にほとんどがこの菌にやられてしまいます。

また、この菌にやられずに冬を越して発芽しても、クマ笹の下では十分な日光が得られずに、枯死するものがほとんどです。

枯れて倒れたマツ森の木々も生き物である以上、病気に罹ったり、老化したりして、やがて倒れます。風に吹かれて倒れる木もあるでしょう。北海道の場合、雪の重さで倒れる木も少なくありません。

親木が倒れたため空いた空間からは十分な日光が降り注ぎます。また倒木の上にはえた苔に水分をもらう事も出来ます。地面にいる暗色雪腐病菌から逃れ、十分な日光を浴び、稚樹は一列になって育つことが出来ます。

これを倒木更新といいます。トドマツの種子は菌に耐性がありますが、エゾマツ、アカエゾマツは菌にやられやすい樹種です。人による伐採が定期的に入り、結果的に倒木の数が減ると、彼らの更新の場は大いに制限されてしまいます。倒木ですら森の中では大切な存在なのです。
それでは暗色雪腐病菌は種子を殺す悪者でしょうか?

実は、これらの菌類を食物としている生物も多数おり、菌類も大切な森を構成する仲間です。森の中では我々の目にはっきり見えないところで、絶妙なバランスの上に成り立った営みが繰り広げられています。

木は老いて、または病や風雪で倒れ、森の小さな仲間達に栄養を与えます。そして彼等は次代の子孫のための苗床となり、森は生命を受け継いでいきます。

協力:札幌 矢島崇氏、菊地俊一氏

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