今年も早朝フィッシングが始まった。前日の晩から釣り場に行き、車中泊。明るくなると釣りを始めて、他の人が来たらさっさと帰るパターンである。
ここは標高が高いので、まだ谷間には雪が残っている。しかし、そのすぐ隣ではエゾヤマザクラが満開・・・冬と春が混在する妙な風景が見られる。
私はここに来る時はいつも「ヒグマの領域に入らせてもらっている」と言う自覚を忘れない・・・必ずカウンターアソルト(ヒグマ撃退用スプレー)を携行し、バッグのすぐ近くに安全ピンをはずした状態で置いておくことにしている。
#10の15ftにタイプ2のヘッドで、4時過ぎから始めるが、アタリのアの字もない・・・・。まだ気候が冬に近いため、日が昇らないと魚の活性が上がらないようだ。
そのうち「雨のち虹」のかずゆきさんが来る。二人並んで振り回すが、両方ともお恵みが来ない。ライズが射程距離内にあるので、ラインをチェンジしたり、色んなフライを試したが、反応がない。どうも水面直下のものを吸い込んでいるようなライズである。
かずゆきさんは最近ここでヒグマの目撃情報があったので、足跡を探しにちょっと上流へ・・・その間、私は小さな灰色のストーンフライが見られたので、#12のシルバーサルタンを試してみることにした。
かずゆきさんが戻ってきた時、ちょうどヒット。小さなシルバーサルタンを捉えたファイターは43cmだった。斑点が小さく、ヒレが妙に大きく、顔もアメマスのように丸くない。イワナにも見えるし、アメマスにも見える魚であった。
魚をリリースして、かずゆきさんの見つけたヒグマの足跡を見に行く。疎林の中の砂地にあった足跡は、肉球が握りこぶし程度でそれほど大きくなく、まだ大人ではないようだ。
やがて、かずゆきさんは仕事の時間になったので、後ろ髪を引かれつつ帰っていった。私はこの小さいフライが本当に今日のキモになるのかを確認すべく、釣りを再開。二人でやっている時より、背後に気をつけるようにした。
かずゆきさんが帰ってから15分ほどした時、ふと振り向くと30mほど向こうで、足跡の主と思われるヒグマが、川沿いに何かをあさりながら下ってくるのが見えた。瞬間、心臓がドンとなった。キャストしたラインもそのままにし、ロッドを足元において、即カウンターアソルトを持つ。
今日の風は、私が風上になる方向に吹いている。しかも私はタバコを吸っており、向こうはとっくに気づいているはずである。深呼吸をして落ち着き、動きをよく観察した。チラチラとこちらを見ながら、疎林沿いに下ってくるので、私がいることは認識しているようである。
向こうは私を襲う気はないようだし、ここでバタバタして刺激するのはよくない、と思ったので「コラ、あっち行け」と穏やかに声をかけると、Uターンしてくれた。ほっとしていると今度は疎林の向こう側に沿って下ってくる。
よく見ていると、むこうは食べることに夢中のようで、私の存在など眼中にないようである。ヒグマの様子を見ながら、ゆっくりと車の方に退散する。
車にたどり着き考えてみると、想像していたより落ち着いていられたように思う。もし、出会ったらパニクってしまうのではないか、と思っていた。
一番近づいた時でも25mほどはあったからだろうか・・・・?
カウンターアソルトも完璧ではないが、やはり持っている安心か・・・・?
遠くから見たことはあってもこの距離で遭遇したのは初めてであった。車に着いた時、妙に喉が渇いていたのは、かなり緊張したためだろう。
非常に貴重な経験が出来たと思う。
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山のダム湖 |
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花鳥魚月 |
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